ケヴィン・サットン

情熱的に指導し、バスケットIQも向上させる

バスケットボールをはじめ、テニスやゴルフなど幅広い競技のプロアスリートを輩出してきたアメリカのIMGアカデミー。11月の来日とクリニック開催に際して、同校の19個のバスケットボールチームを総括しケヴィン・サットン氏にインタビューを実施した。40年来にわたってアメリカの育成世代で活躍し、アンダーカテゴリーのアメリカ代表を指導した経験も持つ氏に、その経歴やコーチングフィロソフィーを聞いた。

——まずは自己紹介からお願いします。

2023年にIMGアカデミーのテクニカルディレクターに就任しました。コーチのキャリアは約40年で、うち15年間は大学バスケを指導しました。ジェームズ・マディソン大、 オールド・ドミニオン大、ジョージワシントン大、 ジョージタウン大、ピッツバーグ大、 ロードアイランド大、フロリダ・ガルフ・コースト大、 そしてカンザス州立大などですね。

U16U17U18のアメリカ代表のコーチも務めました。U18アメリカ代表と世界選抜が対戦する『ナイキ・フープサミット』のアメリカ代表のアシスタントコーチを任されたこともあります。ちなみに来日するのは今回が2度目。25年前、ヘッドコーチを務めていたセント・ジョーンズ高の日本ツアーで、日本の高校と練習試合やクリニックを行いました。このイベントの主催者が千葉ジェッツのジョン・パトリックヘッドコーチです。

——25年ぶりの日本はいかがですか?

25年前は東京と成田しか訪れられませんでしたが、今回はいろんな都市をまわって日本の魅力を理解できました。都市の清潔感や他人を尊敬する文化に魅了されましたし、バスケットボールでは子どもたちの情熱に感銘を受けました。

——IMGのテクニカルディレクターとして、どのようなミッションにあたっているのですか。

IMGには19個のバスケットボールチームがあるので、各チームのコーチ陣と密にコミュニケーションを欠かさず取り、指導しています。IMGの「在学中に基礎を固める」という信念に基づきつつ、各コーチのユニークな取り組みを見守るのが仕事です。時にはアドバイスを行い、信念に沿った生き方やコーチングのスタイルを確立する手伝いをします。また、選手たちを良い大学に繋げる役割も果たしています。

——子どもたちを指導する上で、大事にしていることを教えてください。

IMGには5つの信念があります。「選手に学業とスポーツ両方で最高の環境を提供する」「オープンなマインドセット」「情熱的な魂を持つ」「完全な統一」「奉仕の魂、人を助ける心を持つ」。私自身がこれらを実践し、選手たちに範を示せるように行動しています。選手たちがこれらを一つでも実践していれば褒めますし、他の選手に伝えるようにも促します。

前週の練習や試合で足りていない3点をその週に練習するため、毎週月曜、重要なポイントを3つプレゼンします。直近で出した課題は、オフェンスリバウンド、トランジションディフェンス、ディフェンス中のコミュニケーションでした。ビデオで2週間前、1週間前と比べて良くなっているかを確認し、足りない点については復習します。選手たちが限界を超えられるように情熱的に指導しますし、テクニカルディレクターでもあるのでバスケットIQを鍛え上げることも得意です。良い意味での二面性を持って指導しています。

——クリニックを拝見しましたが、エナジーにあふれる指導が印象的でした。

私の指導の哲学の基盤にあるのはポジティブさです。いいプレー、ハードワークを見つけたらハイタッチもフィストバンプ(いわゆるグータッチ)もします。エネルギーを発信していくのが指導者としての役割です。選手が立て続けに違うことをしたとこきは、責任者として正しい方向に持っていきます。あくまでポジティブなエネルギーをもたらすよう意識しています。

――千葉Jの試合を観戦されたそうですが、パトリック氏とは会われましたか?

残念ながらタイミングが合いませんでした。ただ、友人であるジョンを会場の壁紙で見つけたとき、中学時代から同じチームで過ごし、お互いにヘッドコーチになるのが夢だった私たちがそれを叶え合ったことを実感し、感動と誇りに思う気持ちでいっぱいになりました。ちなみに対戦相手(シーホース三河)のライアン・リッチマンヘッドコーチも知人なんですよ。【後編へ続く】