名古屋Dらしい『自然体エース』として飛躍する安藤周人「僕はチームでやりたい」

2019/02/11
Bリーグ&国内
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安藤周人

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

手柄を誇らず「チーム一丸で良い試合ができた」

中地区の2位を争う名古屋ダイヤモンドドルフィンズと京都ハンナリーズの直接対決は1勝1敗に終わった。ホームの名古屋Dは第1戦に完敗を喫したが、昨日の第2戦では92-83で勝利。セカンドユニットを含めた全員がチームバスケットを徹底し、終始リードを保つ快勝だった。

その中でも目立っていたのが20得点を挙げた安藤周人だ。第1クォーターから思い切りの良いシュートを次々と決めて10得点でチームに勢いを与えると、後半には京都が反撃の勢いに乗ろうとするたびに貴重な得点を挙げて、その勢いを止めた。

ここまで平均14.1得点は日本人では金丸晃輔、川村卓也、富樫勇樹に続く数字。フィールドゴール成功率48.1%は、その3人を大きく上回る。40試合すべてに先発出場し、うち32試合で2桁得点を挙げているのだから、名実ともに名古屋Dのエースと呼んでいい。

それでも、試合後の安藤はチームの勝利を強調し、自分の手柄を誇るところは全くない。「昨日に比べてボールを触っている時間が多かったので、自分のタイミングで打たせてもらいました」とチームのお膳立てに感謝し、自分が出なかった第2クォーターのパフォーマンス(27-14)を勝因に挙げて「チームメートが頑張って良い数字を残してくれました。チーム一丸で良い試合ができたと思います」と、チームでの勝利であることを強調した。

安藤周人

エースの自覚は「正直あまり考えていません」

安藤はBリーグ1年目に特別指定で名古屋Dに加入。プロ1年目の昨シーズンは思うようなプレーができず思い悩むこともあったが、今では堂々のパフォーマンスを見せている。梶山信吾ヘッドコーチは「もともとやれる力はあると思っていました。今は自覚を持って、自分がエースだと理解してやっています」と、安藤の変化を語る。

ただ、安藤には『俺が、俺が』というメンタルがない。『エースの自覚』について「ヘッドコーチから言われている部分ですが、正直あまり考えていません」とあっさり否定。これは安藤なりのエース論で、重責を担う覚悟はあっても自分を前面に押し出そうとはしないのだ。「チームとして僕はやりたい。僕は一人でやりたいわけじゃないので」と彼は続ける。

安藤は自分の意識の変化をこう語る。「昨シーズンに比べてボールに触れる回数が増え、大事な場面を任されたりしていて、任せるだけじゃなくて自分がやらないといけなくなりました。昨シーズンはシュートも入らないし『どうすりゃいいんだ』と思ったこともありますが、そこの気持ちの変化は出てきました」

とはいえ、自覚と自信を持つのはそう簡単ではない。安藤が変わるきっかけとなったのは、今シーズン開幕前にポイントガードの笹山貴哉がケガをしたことだ。「スタートが小林(遥太)さんに代わりました。小林さんは2番、3番を積極的に使おうとしてくれるので、ウイングマンがボールに絡むシーンが増えて『自分がやらないといけない』と思うようになりました。きっかけがあるかと聞かれたら、それは笹山さんのケガだと思います」

絶対的な司令塔である笹山のケガは名古屋Dにとって大きな痛手だったが、滋賀レイクスターズから移籍して来た小林を代役に据えてチームはスタートダッシュに成功。もっとも、笹山の存在感が薄れたわけではなく、タイプの異なる2人のポイントガードを使い分けられるようになったことで名古屋Dは安定感を増した。昨日の試合でも、笹山と安藤の先発コンビが全くプレーしなかった第2クォーターに、小林が組み立てる速いテンポ、全員でボールをシェアするバスケットで京都を圧倒。それが安藤の言う「チーム一丸で良い試合ができた」ということだ。

安藤周人

「めちゃくちゃしんどい」日本代表でアピールを

その安藤はワールドカップ予選Window6に向けた日本代表合宿に招集されている。先週の合宿が話題になると安藤は「めちゃくちゃしんどかったです」と心底キツそうな表情を見せる。「味わったことのないピリピリした雰囲気で、気持ちが落ち着く時間がなかったです。休憩もなく次々新しいことがあって、付いていくのが精一杯。どっと疲れました」

実際、京都との第1戦では身体が重く、第2戦でも出だしから10得点と絶好調だったが梶山ヘッドコーチは疲労を考慮して第2クォーターでは安藤をプレーさせなかった。ワールドカップに出場できるかどうか、日本バスケットボールの正念場。雰囲気がピリピリするのも当然で、急に呼ばれた安藤が飲み込まれるのも無理はない。それでも、代表で得られるものは大きい。

「ピック&ロールを主体としたバスケットで、僕も今シーズンはピック&ロールがうまくなりたいと思っているので、今まで見てきた角度と違う角度から学べました。それをチームでも生かしていきたいです。レベルの高い人たちとやれるのはうれしいし、自分のためにもなります」

この京都戦を終えると、また安藤はナショナルトレーニングセンターに向かい、代表合宿のピリピリした雰囲気に再び身を置くことになる。イランとカタール戦のメンバー12名への生き残りは熾烈を極めるが、安藤は「選ばれる選ばれないじゃなく、何か一つ自分の中に吸収したい、学びに行く気持ちです。何とかして残りたい気持ちはありますが、がめつく言うタイプじゃないので、何かアピールできれば」と、ここでも自然体だ。

プロの世界でのし上がるには、がめつくアピールすることも時には必要かもしれない。ただ、安藤は明確にそう言わないだけで、人一倍の向上心を持っているのは明らか。そうでなければ今の名古屋Dでのパフォーマンスは説明がつかない。代表での経験は新たな刺激となるはず。シーズン残り20試合、名古屋Dがさらに上を目指すには、安藤のさらなる成長が欠かせない。