ウィザーズ

勝てないロスターでヘッドコーチの責任は問えず

ウィザーズは7勝36敗と低迷が続く中で、ウェス・アンセルドJr.の解任に踏み切った。2シーズン半に渡る彼の任期を通してチームは上昇気流に乗らなかったが、3年目の今シーズンになって勝率が大幅にダウン。『チームの顔』であるブラッドリー・ビールはケガでほとんど稼働していなかったにせよ、それでも彼とクリスタプス・ポルジンギスの主力2人を放出した戦力ダウンは大きい。再建の初期段階にあるウィザーズはすぐに勝てるチームではないが、それでも良い兆しが全く見られないとなれば、誰かが責任を取らなければならない。

ただ、責任の所在は曖昧なままだ。ウィザーズはクラブレジェンドの息子を解雇せず、『顧問』の肩書きでフロントに残す。アンセルドJr.は若手を育てられず、勝つ采配ができるわけでもなかったが、フロントのチーム作りがまず失敗続きで、現場の指揮官に責任を負わせるのは後ろめたいのだろう。

ジョーダン・プールはチームをプレーオフに導くエースとはいかないまでも、ファーストオプションとして得点にフォーカスすることでウォリアーズ在籍時よりもスタッツを伸ばすはずだったが、逆のことが起きている。カイル・クーズマもレイカーズ時代より輝いているとは言えない。デニ・アブディヤもコーリー・キスパートも平凡なままだ。

フロントは今回の人事に対し、「競争力のあるチームに戻るために、今シーズンは我慢の展開になると覚悟していた」と言う。しかし、プールとクーズマがエースで、タイアス・ジョーンズとダニエル・ギャフォード、アブディヤのラインナップで『競争力のあるチーム』になれると誰が信じるだろうか? アンセルドJr.が必要な手腕を欠いていたにせよ、誰が指揮官でも大差なかったはずだ。

そしてウィザーズは、本格的なヘッドコーチ探しをシーズン終了後に行うと発表し、ブライアン・キーフが暫定ヘッドコーチに据えたが、彼に何を期待し、どんなタスクを課すのだろう? キーフは過去2シーズンをネッツで過ごし、その前はサンダーで9シーズン、さらにさかのぼるとレイカーズとニックスでアシスタントコーチを務めている。キーフは残り38試合でチームに勝利のメンタリティを植え付け、伸び悩む選手たちを変えられるだろうか? その点において、ウィザーズのフロントに確たる考えはなく、ただ単にここからの数カ月を無駄にしようとしているように見える。

キーフは会見でこう語っている。「誰にとっても厳しい一日となった。みんなウェスとは長い付き合いだ。僕にとってはウィザーズのスタッフに迎え入れてくれた恩人でもある。良き友人が解任されたことに心を痛めている。それとともに大役が与えられ、身が引き締まる思いもある。とにかく大変な一日で、何から手をつけるべきか、いろんな思いが頭の中を駆け回っているよ」

キーフには『損な役回りを引き受けた』という印象を受ける。来シーズンには実績あるヘッドコーチが新たにやって来て、キーフはお役御免となる。ここからチームを急成長させて正式なヘッドコーチに信任される可能性もなくはないが、今のウィザーズにそれを期待するのは楽観的すぎる。

そもそも、ウィザーズのフロントがこのタイミングでヘッドコーチ交代を発表したのが不可解だ。試合当日の早朝にアンセルドJr.は更迭された。すでに今シーズンの目標は失われ、緊急性はないのに、なぜこのタイミングだったのか。トレードデッドラインはすぐ先だし、NBAオールスターのタイミングであれば準備もできる。この発表があった現地1月25日、ウィザーズはジャズに108-123と完敗を喫した。

皮肉にも、この日のウィザーズが対戦したジャズは、再建のお手本のような道を進んでいる。ウィル・ハーディの手腕を信じ、チームの将来のために主力を切り売りしながらもできる限りのロスターを整えて託している。「競争力のあるチームに戻るための我慢」の先に明るい未来があると思えるからこそ、ファンも信じて待つことができる。ウィザーズにはそれがない。

NBAでは全30チームに優勝を狙うチャンスが回ってくるよう、戦力均衡のための様々なルールが整備されている。しかし、フロントがチームの現状を理解してルールを上手く活用できないのであれば、低迷は永遠に続く。ウィザーズはどこかで変わらなければいけない。