山本麻衣

今までと違う役割「2番寄りのシュート力を生かしたプレーをどんどんしてほしいと言われました」

パリオリンピック最終予選(OQT)まで1カ月を切り、女子日本代表は強化合宿をスタートさせた。恩塚亨ヘッドコーチ体制になって以降、代表の常連となっている山本麻衣は9月末のアジア競技大会を脳震盪で欠場したが、Wリーグでトヨタ自動車アンテロープスのエースとして活躍し、順当に招集メンバーに名を連ねている。

ワールドカップ2022では5試合に出場するも、山本は平均2.0得点が示すように発足当初のチームにフィットできず不完全燃焼に終わった。しかし、昨年6月末に行われたアジアカップ2023では平均10.6得点、5.2アシストで大会ベスト5に選出される活躍を披露。名実ともに代表の中心選手の一員となった。

今回のOQTでも山本はオフェンスの舵取り役として大きな役割を担うことが予想される。だが、これまでとは求められる仕事が少し変わってくる模様だ。山本は語る。「今までは本当にポイントガードとしてプレーしてきました。それが今回は、ちょっと変わってきて、恩塚さんから合宿の初日に、2番寄りのシュート力を生かしたプレーをどんどんしてほしいと言われました。そこはいつもの合宿と違う部分です。ただ、最終的にはピックを使ったプレーが必要な場面も出てくると思います。そこは今までと変わらずにやっていきたいです」

シュートをより重視するとなれば、ここ一番でエーススコアラーとなるトヨタ自動車での役割に似ているのか、こちらの問いに「近いといえば近いです」と山本は答える。

山本麻衣

「もうやるしかないという状況は経験しているので、そこは自信を持ちたい」

2023年、日本代表はアジアカップ、アジア競技大会で、世界トップ3に入る中国と互角の戦いを繰り広げたが、ともに僅差で敗れた。OQTの対戦相手であるスペイン、カナダ、ハンガリーも中国と同じく高さ、フィジカルでは日本より上回っている。この状況を踏まえ、山本は「(中国には)リバウンドなどシンプルなところで最後にやられてしまいました。チームディフェンスも含めて、最終的にはファンダメンタルの部分が本当に大事だと思いました」と、いかに基本を徹底できるかが大事と考えている。

そして、OQTに向けては、どんな形でもパリオリンピックへの切符をつかむことにフォーカスしている。「3試合全部、勝ちに行く気でいますけど、何よりも出場権を目標にやっていきたいです。どの試合に関しても、1点でもいいので勝てばいいと思います」

前回のベルギーで行われたOQTでは、すでに自国枠でオリンピック出場が決まっており、日本代表は参加こそしたがトレーニングマッチの域を超えなかった。よって今回の代表メンバーの大半は、オリンピックの切符のかかった、天国と地獄に分かれる強烈なプレッシャーを経験したことがない。

そんな中、山本は馬瓜ステファニーと共に東京オリンピックで唯一、自国開催枠が与えられなかった女子3×3代表としてオリンピック予選で3位に入り、自力で出場権をつかんだ実績がある。勝てば五輪、負ければ終わりとなる3位決定戦のスペイン戦でオーバータイムの末に勝利をつかんだ経験は、山本を心身ともにより逞しくした。

「あのOQTの勝たなければいけない、負けたら終わりの3位決定戦は結構プレッシャーがありました。でも、あの本当の崖っぷちに立たされることで、やらなければいけないと割り切れたところはありました。追い込まれたことで腹をくくれて、良い経験になりました」

今回のOQTでも痺れる場面は訪れるはずだ。その時、「もうやるしかないという状況は結構経験しているので、そこは自信を持ちたいと思います」と語る、山本のクラッチシューターの力は必ず日本代表に必要となってくる。