デジャンテ・マレー

マレーとグレッグ・ポポビッチ、信頼は揺らがず

ホークスは開幕から1か月は勝率5割前後を推移していたものの、12月に入ると勝てない時期が続き、ここまで14勝21敗の東カンファレンス12位に低迷している。プレーイン・トーナメント県内まではわずか1ゲーム差だが、上位を目指せるチームでないことが明らかになりつつある今、『チームの顔』であるトレイ・ヤングと3年目で主力を務めるジェイレン・ジョンソン以外はトレード交渉に応じるとの噂が浮上してきた。

デジャンテ・マレーは2022年オフにスパーズからホークスへと移籍し、今シーズン開幕前に4年1億2000万ドル(約180億円)の契約延長に合意した。この契約が有効となる来シーズンから、マレーの年俸はチーム内でトレイに次ぐ2番手へと浮上する。ホークスが再建へと舵を切るのであれば、最も市場価値の高い27歳のデジャンテに注目が集まるのは間違いない。そして、彼の獲得に動くのは古巣のスパーズではないか、との声が高まっている。

マレーは2016年のNBAドラフト1巡目29位でスパーズに指名され、デビューからの6シーズンを過ごした。思ったことをそのまま口にするマレーは、スパーズ退団後にルーキー時代に自分のポジションで先発を務めたトニー・パーカーを批判したり、「ずっと再建中」とチームを批判したりと辛辣な発言もしてきたが、スパーズとグレッグ・ポポビッチへの感謝を繰り返し発言してきてもいる。

「スパーズに指名されていなかったら、僕はどうなっていたことか。身体のケアや時間を守ることの大切さ、人との接し方。そのすべてを僕はスパーズで学び、プロフェッショナルにしてもらった。スパーズでポップ(ポポビッチ)と一緒にいたことで、人間として成長できた」とマレーは語っている。

スパーズでの6年間、マレーは概ね順調にキャリアを伸ばした。3年目の2018-19シーズンは右膝前十字靭帯断裂の重傷で全休したが、「ポイントガードの脳みそを鍛えてやる」とのポポビッチの意向によりコーチミーティングに参加させてもらうなど、特別な配慮もされてきた。

2年前の時点でスパーズの再建は先が見えず、大型契約を求めるタイミングのマレーを抱えてはいられなかったが、ビクター・ウェンバニャマの指名に成功した今は状況が異なる。スパーズは5勝30敗といまだ勝てるチームではないが、ドアマットを抜け出すポテンシャルは十分に備えており、勝ち方を知る選手が加わることで大きく飛躍できるはずだ。

スパーズは将来の指名権を大量に保有しており、どこかのタイミングでそれを手放して即戦力を補強できる。ただし、彼らのタイムラインに合うのは30歳をすぎたベテランではなく、27歳のマレーのようにこれから選手としての全盛期を迎える選手だ。

2年前、ホークスは1巡目指名権3つを差し出してマレーを獲得した。ただ、トレイとマレーを組ませる策が上手くいかなかった今、ホークスはマレーをトレードに出すとしても1巡目指名権3つは得られないだろう。スパーズはホークスから譲渡された指名権のうちいくつかを戻すことでマレーを獲得できそうだが、急ぐ必要はないために来月のトレードデッドラインを見送ることもできる。トレイ・ヤングを擁する以上、プレーオフを狙えないチームのままではいられないホークスの足元を見ての交渉をすると思われる。

トレイは勝てないことへのフラストレーションを徐々に隠せなくなっている。先日はマジック戦に敗れ、「ほんの少しの努力で勝ちに持っていけた試合をたくさん落としている。ここぞという場面でのプレーが上手くいかず、その繰り返しでひどいシーズンになりつつある。これだけ失敗ばかり続くとイライラするよ。長丁場のシーズンであることを忘れず、頑張り続けていくしかない」

シーズン序盤のスパーズはパワーフォワードが本職のジェレミー・ソーハンを先発ポイントガードで起用していたが、これはソーハンの『脳みそを鍛える』ための暫定的措置であり、トレ・ジョーンズ以上に信頼できるポイントガードが獲得できるなら、そのチャンスは逃したくないはずだ。スパーズの文化、ポップのバスケを知るマレーを呼び戻せるのであれば大歓迎だろう。