片峯聡太

「圧に押され、迷ってしまった」

福岡大学附属大濠は4年ぶりの福岡対決となったウインターカップ決勝で福岡第一に53-63で敗れ、4年前のリベンジを果たせなかった。11月の福岡県予選は79-61で快勝し、チームは2年ぶり4度目の日本一に向けて勢いづいていたが、ライバルに点差以上の完敗を喫し、片峯聡太コーチは「スタッフ、メンバーが受け身になってしまった。この悔しさを次に生かしたい」と振り返った。

試合終了まで28秒を残し、2年生ながら大黒柱へと成長した渡邊伶音をベンチに下げた。コートには主将の三輪大和ら3年生5人がいた。3月にエースの川島悠翔がオーストラリアのNBAグローバルアカデミーに転校。それでもチームを決勝まで導いた中心の5人だった。応援席には川島もいた。

片峯コーチは言う。「彼が転校して、この先どうなるんだろうという不安があった学年。彼がさらに頑張れるように、チームを作っていかなければならないという気持ちで徐々に成長してくれた。敬意を込めて最後に戦ってもらいました」

片峯コーチが「崎濱がいると、彼を守るために特別な準備も必要になる」と言うように、11月の対戦で不在だった崎濱秀斗が復帰し、激戦区を勝ち上がってきた福岡第一の圧力は予想以上だった。試合序盤は高さのある髙田将吾をマッチアップに当てた。ブレイクのアウトレットパスを遮り、渡邊、広瀬のインサイドも奮闘して第1クォーターの失点を16に抑えた。

だが、「我慢はできていたけど、思い切りの良さが欠けてしまった」と語るように、オフェンス面で後手を踏んだ。味方のキックアウトにはエキストラパスではなくシュートを打ち切るよう指示を出していた。しかし、オンボールでもオフボールでもプレッシャーを受け続けた結果、シュートの多くがショート気味になった。「崎濱選手の求心力や、福岡第一さんの3年生の役割を徹底するんだという圧に押されました。迷って、リングではなく人を探している時間になりました」

求心力という言葉に滲んだのは頂点に立った2021年大会の絶対的存在、岩下准平(筑波大)が発揮した強烈なリーダーシップだろう。今年のチームは渡邊、髙田の他、湧川裕斗、1年生のポイントガード榎木璃旺と先発5人のうち4人が下級生。彼らに対して「求心力を持った選手が出てこないとチャンピオンにはなれないと痛感しました。湧川や渡邊ら2年生が気付いてくれれば、行動を起こしてくれる」と期待を込めた。

名前を挙げた206cmの渡邊は大会を通じて、身体を張り留学生に対しても臆することなく戦った。誤算だったのはフリースローだろう。全体では11本中5本成功だったが、前半は7本中わずか1本のみの成功。終了間際ベンチに戻ってきた渡邊には「この差を目に焼き付けて来年やり返すぞ」と語りかけたという。

頂点に立つことはできなかったが、確かな足跡は残した。今年の3年生は日本一になった2021年に入学し、例年にない約20人もの選手が残った。片峯コーチはひたむきに取り組む生徒たちのグループを見つめ、「理解力や取り組む力は試合に出ているメンバーよりも高い。主力も彼らから学ぶところは多い」と話していた。学年が上がるにつれて主力とベンチ登録を外れた部員との温度差が大きくなった時期には学年全員でミーティングするように伝え、今大会に向けて一体感を高めていった。応援スタンドで声を張り上げた堀蒼真は「先生からバスケットで教わったことは社会でも通用する、と気付くことが数多くあった」と感謝する。

ウインターカップはこの5年で優勝1回、準優勝2回。2024年には地元福岡でインターハイも開かれ、優勝への期待も高まる。「今大会はやるべきことを遂行できた。それは自信を持ってほしい。来年は渡邊に代わるメンバーの育成を冬から春にかけて質を高めたい」。王座奪還への道筋を見据えていた。