泥臭いプレーを続け、勝負どころを見極める
京都精華学園はウインターカップ決勝で岐阜女子を63-59で破り、優勝を果たした。チームは3年連続の決勝進出。1年生の時から主力として活躍してきた堀内桜花と八木悠香にとっては、1年生の時に決勝で敗れる悔しさを味わったが、それをバネにして翌年に初優勝を飾り、そして今回は連覇という最高の形で高校バスケを締めくくることになった。
『チームの顔』は司令塔にしてキャプテン、華のあるプレーのできる堀内であり、スタッツで目立つのは去年はイゾジェ・ウチェ、今年はディマロ・ジェシカの留学生プレーヤーだが、八木の働きは京都精華学園の強さを支える大きな要素だった。泥臭いプレーを40分間続ける中で、勝負どころを見極めて必要とあらば主役の働きもできる。
昨日行われた決勝でも、勝負どころでの八木の存在感は際立った。残り4分20秒、今大会最高のシューターである絈野夏海に3ポイントシュートを決められ2点差とされる。立ち上がりからチームを引っ張ってきた堀内とジェシカの勢いが落ち、岐阜女子の反撃に最も勢いが出たところで、八木はディフェンス、リバウンド、ルーズボールに向かう勢いを引き上げる。
ここからしばらくは得点が動かない我慢比べ。味方のシュートが決まらなくても慌てず焦らず。ジェシカの得点で60-56とした後、残り1分8秒で八木の見せ場が訪れる。堀内とのピック&ロールからゴール下を決めて62-56。それまでジェシカにボールを集めていた状況で、相手の計画の裏を突く一発。堀内と長らく連携を培ってきた八木が「自分に来ると思っていました」と振り返る、優勝を大きく引き寄せるビッグプレーだった。
「相手の留学生が結構ジェシカに寄っていて、自分が空いていたので呼んでもいたし、絶対自分に来ると思っていました。1年生からずっと一緒に試合に出させてもらっていて、相手に読まれることが年々多くなって2人のパスはあまりできなくなっていたんですけど、最後ああいう形で追われたのは良かったです」
岐阜女子はたまらずタイムアウトを取る。攣りかけていた足でベンチに戻る八木の背中を、堀内がそっと支える。そしてジェシカが笑顔とハイタッチで、八木の働きを称えた。
「なんでやろう? 勝手に身体が動きました(笑)」
そして残り24秒、勝利を決定づける得点も八木から生まれた。絈野の3ポイントシュートが外れてのリバウンドにいち早く反応した八木は、相手ディフェンス3人にすぐ取り囲まれても落ち着きを失わず、スティールを狙う相手の意図を読んでドライブで突破。ここでファウルを受けた。
このプレーは、八木が3年間の自らの成長として挙げた部分だ。「1年生の時はリバウンドを取ったら外にさばいていたんですけど、試合を重ねることでリバウンドを取ったら自分で攻めることができると気づいて、自分でファストブレイクに持っていくことができるようになりました」
もっとも、八木の一番の長所はコート全体の状況を把握し、相手の意図を読んで手玉に取る抜け目のないプレー判断ができることだ。それができるバスケIQの高さがどこからきているのか、それは八木にもはっきりとは分からない。「なんでやろう? 勝手に身体が動きました(笑)」とのこと。
堀内のプレーメークと得点力、ジェシカの高さと同じように、八木の勝負どころを察知して頑張ることのできる才能も京都精華学園には欠かせないものだった。