ラビーン不在で8勝3敗「決して下を向かなかった」
ブルズは現地12月20日のレイカーズ、翌21日のスパーズとのホーム2連戦をいずれも制した。早々に2023-24シーズンが意味のないものになろうとしていたブルズだが、思いがけない形でV字回復を果たしている。5勝14敗と大きく沈んでいたところから、直近の11試合で8勝を挙げて、13勝17敗まで成績を戻した。
直近の11試合は、ザック・ラビーンが足のケガで離脱してからの期間と重なる。ラビーンが戦線離脱してオフェンスが機能し始めるのは不思議だし皮肉だが、重要な選手が欠けたことでチーム全体で戦う意識が高まったことでブルズは結果を出し始めた。
長期的に見れば、ブルズが強いチームになるためにラビーンの能力は欠かせないものだろうが、短期的にチームがスランプから脱出するには、ラビーンよりもコービー・ホワイトが役に立っている。ペースを上げ、多くのチームメートにボールを持たせてリズムを作り、チームに試合の主導権を握らせる。その合間に自らも得点していく。
特定の選手によるアイソレーションで成り立っていたブルズのオフェンスは変わった。目的を持ってパスを出し、コート上の5人が正しいポジションを取り、カットやスクリーンで連動して相手ディフェンスを揺さぶり、ズレができればエクストラパスで広げてイージーシュートのチャンスを作り出す。デマー・デローザンは「相手ディフェンスにとって予測しづらいオフェンスになったと思う」とブルズの変化を語る。「正しいプレーを選択し、どの選手も得点できるという認識の下でプレーしている。誰がシュートを打つにしても、全員が自信を持っている」
ホワイトはハイライトに残るようなプレーは少なくても、そのオフェンスの中心となり、ブルズが勝つためのキーマンとして機能している。しかも、スパーズ戦ではホワイトがゲームハイの22得点を記録するなど、自分で攻める場面でも良いパフォーマンスを見せている。
「調子が良いのはチームのおかげさ」とホワイトは言う。「悪い時期もあったけど、僕らは決して下を向かなかった。このチームはみんなお互いを信じてきた。本当だよ。それぞれが前向きに頑張ろうとし、お互いを気遣いながら、勝利を目指してきた。それは調子の良し悪しに関係なく一貫しているんだ」
ホワイトの言う「前向きに頑張ろうとし、お互いを気遣う」には、ラビーンも含まれている。チームの調子が上向く中で、どの選手もラビーンが疎外感に苦しむことがないよう気遣っている。指揮官ビリー・ドノバンは、何度も何度もこう繰り返している。「ザックのような才能ある選手がいないことは間違いなくチームには痛手なんだ。彼のリハビリが上手くいき、早く戻ってきてくれることを願っている。ザックがいればもう一つの脅威となり、相手チームは全く違うタイプの対応をしなければいけなくなるんだからね」
コービー・ホワイトだけでなく、パトリック・ウィリアムズにアヨ・ドスンム、デイレン・テリーと今のブルズでは若い選手の活躍が目立つ。それに触発されたのか、スパーズ戦ではアンドレ・ドラモンドがビクター・ウェンバニャマを相手に素晴らしい活躍を見せた。ラビーンの復帰はまだしばらく先となるが、苦境を脱したブルズのさらなる力になれるかどうかに注目したい。