ハーフコートディフェンスからブレイクを繰り出す開志国際の中心が主将の中島遙希(3年)だ。途中出場が多い中、コートを縦横無尽に駆けて、リバウンドにからむ。インターハイは準決勝で日本航空に76-88で屈し、「甘さがあった」とウインターカップ連覇へ目の色を変えた。そして、司令塔の澤田竜馬(3年)や平良宗龍(2年)ら優勝メンバーが数多く残る中、富樫英樹コーチがキーマンと期待するのがフリッシュ・ニコラス聖(3年)。昨年5月に負った大怪我から復帰した198センチのフォワードが、チーム層をさらに厚くする。
夏の敗戦から「まだ日本一になれるチームではない」と悟る
ーー自己紹介をお願いします。
中島 茨城県の土浦第二中学校出身です。前回ウインターカップで優勝しました。
ニコラス 長野県の川中島中学校出身です。「日・韓・中ジュニア交流競技会」のU18日本代表に選出されました。好きな食べ物はハンバーグで、寿司や刺身など生ものが苦手です。
ーーお互いについて教えていただけますか。
ニコラス コートの中だけでなく、常にチームを盛り上げてくれます。直してほしいところは試合中にふざけすぎてしまうところですね。ベンチでも、試合のコートでもふざけている。
中島 ニコラスは試合中、ゴール下を強くやってくれるのが良いところです。ただちょっと怪我をしやすい。気づいたらまた怪我しているので、怪我だけはもうしないようにしてほしいですね。
ニコラス すいません(笑)。
ーーニコラス選手を始め、怪我をしていたプレーヤーがやっと戻ってきたそうですね。
中島 今年のチームは怪我人が出ている中でスタートしました。インターハイ前は練習の強度もなかなか上がらなくて、悩みましたね。本番は一応全員そろったんですけど全員が万全ではなく、ウインターカップを前にしてちょっとずつ戻ってきました。バスケットボールに怪我は付きものです。「いるメンバーで頑張ろう」「見ている怪我人もしっかり声を出して、出られる人たちはしっかりプレーしよう」という自覚を持って取り組みました。
ーーインターハイは準決勝で日本航空に敗れました。
中島 とても悔しかったです。それまで負けなしで、インターハイも優勝できるだろうという考えになっていた。インターハイの初戦から試合の入りの甘さやミスを断ち切れず、負けてしまいました。
ーー敗戦とどう向き合いましたか。
中島 「自分たちはまだまだ日本一になれるチームではない」と確認して、敗因だったベンチメンバーの強化や小さなミスをしないということを、チームミーティングで喋りました。トップリーグでは強化もできて、ミスも減ってきている。インターハイから徹底できたと思います。
ーー今年のチームカラーは。
ニコラス 去年に比べて少しサイズが落ちるんですけど、その分、走れる。速攻でたくさん点数が取れるチームです。キャラクター的には面白いメンバーが集まっています。中島くんは身長がそこまで大きくないけど、自分より大きい相手からリバウンドが取れるし、ディフェンスでも活躍できます。後輩の宗龍も大事な場面でスリーをバンバン決めてくれて、盛り上げてくれる。
ライバルは福岡第一「日本一になるには必ず倒さないといけない相手」
ーーニコラス選手はいつから復帰しましたか。
ニコラス ウインターカップ予選決勝で、また軽く膝を痛めちゃって。ちゃんと復帰したのは、12月4日ですね。怪我する前が100%だとしたらまだ全然で、40%くらい。初戦に80%に持っていって、決勝で130%まで持っていこうと思います。
ーー富樫コーチが「優勝のキーマンはニコラス」と言っていました。自覚はありますか。
ニコラス 自分がいないとかなりサイズダウンしてしまう。リバウンドやディフェンスで活躍して、オフェンスリバウンドを取れれば仲間も攻めやすくなる。リバウンドを頑張らなきゃいけないっていう自覚と責任があります。
ーートップリーグで選手強化を図って、いろんなメンバーの組み合わせでプレーができた。チーム力の底上げにつながったのではないでしょうか。
中島 インターハイは1回戦から準決勝まで競った展開で、出られる選手がスタートを合わせて6人と、ベンチメンバーからは1人しか出られなかった。今ではベンチから5〜6人出られるようになりました。
ーー組み合わせを見ての印象は。
中島 初戦から気を引き締めたいです。入りを甘くしちゃったら、インターハイみたいに接戦になってしまう。組み合わせが決まった後も「1試合目の入りからしっかりやっていこう」と話し合いました。準々決勝は藤枝明誠さんが勝ち上がってくると思います。藤枝明誠さんはトップリーグ6試合を留学生なしで戦って、日本人選手がかなり強化されたし、留学生が復帰した最終戦を会場で見て、夏とは比べ物にならないくらいに強くなっていると思いました。しっかり勝っていこうと話しました。
ーー個人的なライバルはいますか。
ニコラス 個人的なライバルは中島くんです。お互いにリバウンドが強いので、ライバル視しています。俺のほうがちょっと多く取ってやるという気持ちで。
中島 ニコラスにはリバウンドは勝てません(笑)。
ニコラス 敵チームだったら、福岡第一のアピア・パトリック眞選手。お互いハーフというのもありますし、ちょっとプレースタイルが似ている。去年のU18候補の時に1回やりました。怪我から復帰して大会に間に合うらしいので。同じ怪我明けですけど、負けていられない。
中島 自分のライバルは開志だったらやっぱ平良です。敵チームだとしたらあっちは多分思っていないんですけど、福岡第一の崎濱秀斗選手が一番対戦して楽しいです。
ーーチームとしてはいかがですか。
中島 福岡第一さんです。去年はインターハイ決勝、ウインターカップ決勝、どちらも対戦しました。日本一を取るためには、福岡第一さんを必ず倒さなきゃいけないという思いがあります。
ニコラス 僕も同じですね。福岡第一がライバルです。
ーー富樫コーチと井手口コーチが同級生なのも関係ありますか。
ニコラス それはちょっと関係しているかもしれない。
ニコラス・中島 赤いきつねと緑のたぬき、みたいな(笑)。
「開志の一番の魅力は、楽しくバスケットボールをすること」
ーー富樫コーチとの3年間はいかがでしたか。
中島 1年の早い段階からAチームに入れてもらって、富樫先生にはかなり怒られました。怒られている時は「なんでまた怒られるんだよ」と心の中では思っていてましたが、2年、3年になると、その時に怒ってもらえたから今の自分があると実感します。1年の時にしっかり叱ってくれたので、助かりました。
ニコラス 1年時から今までずっと怒られています。怒られるイコール期待されていると思っています。怪我ばかりで試合に出られていない僕のことをずっと期待してくれていて、感謝しています。
ーー富樫コーチは試合中はニコニコ温かく、楽しそうにやっているように見えます。
中島 試合では怒るというより、褒めて自分たちがやりやすいようにやってくれます。でも、それだけでは勝てないのを富樫先生は分かっている。練習時は、ミス1個1個に対して指摘があります。セットプレーでも「もっとここをこうしたらいいんじゃないか」という感じで助言してくれます。
ーー感謝したい人は。
中島 やっぱり父と母ですね。寮生なので、お金がかなりかかるんですけど「お金の面は心配いらない、バスケだけ頑張りなさい」と言われて、3年間バスケットボールに打ち込めている。陰ながら支えてくれるので、一番感謝したいです。
ニコラス 僕も両親に一番感謝していますね。怪我が多く、うまくプレーできていない時も常に支えてくれました。怪我で試合に出られてなくても何も文句言わず、ずっと応援してくれて今に至るので感謝しかない。試合に出ることが親孝行だと思っています。
ーー連覇が懸かるウインターカップへメッセージをお願いします。
中島 目標の全国優勝に向かって、一戦一戦しっかり戦います。開志の一番の魅力は、楽しくバスケットボールをすることだと思うので、体現しながら今まで支えてくださった関係者、保護者、監督さんたちに恩返しができるような試合をしていきたい。個人的には最後のウインターカップになるので、悔いの残らないように。1年時は初戦で福岡大学附属大濠さんにボロ負けしてしまった。その思いも忘れずに、持ち味であるディフェンスや泥臭いプレーを体現して連覇したい。
ニコラス 最初で最後のウインターカップなので、全力を出し切って、優勝まで走り抜けたいと思います。
中島 短い…。