星杏璃

31得点の渡嘉敷「一度負けている相手で悔しい、やってやろうという気持ちがありました」

12月16日、皇后杯準決勝でENEOSサンフラワーズとシャンソン化粧品 シャンソンVマジックが対戦。大黒柱の渡嘉敷来夢が第3クォーター終了時点で31得点とゴール下を支配したENEOSが100-69で圧勝し、大会11連覇に王手をかけた。

第1クォーターはともに攻守の素早い切り替えからボールがよく動くオフェンスで互角のスタートとなる。ENEOSが渡嘉敷、長岡萌映子によるインサイドで得点を重ねると、シャンソン化粧品はこのクォーターで3ポイントシュート10本中6本成功と長距離砲が爆発し、ENEOSの28-24と点の取り合いとなる。

だが、第2クォーターに入るとシャンソン化粧品は3ポイントシュートに当たりが来なくなる。一方、ENEOSはガード陣の積極的なドライブから引き続きゴール下で確率良く得点を重ねることで、リードを10点に広げて試合を折り返す。

第3クォーター、ENEOSは守備の強度を強めてタフショットを打たせ続ける。そしてディフェンスリバウンドからのトランジションと、持ち味を存分に発揮してシャンソン化粧品を攻守で圧倒。後半スタートから13-0のランで一気に突き放すと、最終的に25-6のビッグクォーターを作り、77-48と第4クォーターを前に勝負を決めた。

ENEOSは水曜日に行われた準々決勝でインカレ女王の白鷗大に苦戦し、第4クォーター残り5分まで互角の展開と、84-74のスコア以上に苦しんだ。だが、女王はこの苦い経験をしっかりと糧にし、今日の会心のパフォーマンスへと繋げた。渡嘉敷は語る。「大学生と試合をしたことで、身が引き締まりました。単純にみんなの気持ちがより一層強くなったと思います。皇后杯の前、『なんか皇后杯って感じがしないよね』という声がチーム内でも多かったです。それが、(白鷗大戦で)ああいう我慢の展開が続いたことで、次はもっと出だしからやらなければダメだよね、という気持ちになれたところはあると思います」

ENEOSといえば、渡嘉敷を中心に生粋の負けず嫌いのチームだ。大会11連覇を目指す女王でありながら、シャンソン化粧品はWリーグでシーズン初黒星を喫した相手であることから「一度負けている相手で悔しい。やってやろうという気持ちがありました」と、モチベーションが高まっていたと明かす。

星杏璃

ENEOSの中心選手としての意識「自分が攻めることで仲間が空くと思っている」

渡嘉敷とともに快勝の原動力となったのが、17得点5アシスト4リバウンド2スティール2ブロックを記録した星杏璃だ。。第2クォーター中盤には3ポイントシュートを決めた直後、前からの激しいプレッシャーでスティールし、味方の速攻をアシストして均衡状態から主導権を奪う立役者になった。また、3ポイントシュートを5本中3本成功と高確率で沈めるなど、要所での活躍が目立った。

「自分たちのペースで第1クォーターの最初からプレーできたのが良かったと思います」と試合を総括する星は、自身のパフォーマンスについてこう振り返る。「3ポイントに関しては、相手がすごくケアしてくると言われていました。それでも仲間がドライブからキックアウトの良いパスをくれました。私は思い切って打つだけで、それが入ってくれたので、自分の波に乗れたと思います」

今シーズンの星は、リーグ戦直前に行われたアジア競技会の決勝をコンディション不良で欠場した影響もあってか、Wリーグ開幕当初は本来のプレーを見せられずにいた。だが、「リーグの最初はシュートタッチが良くなく、身体のキレも上がっていない感じでしたが、今はタッチやドライブのキレも良くなってきていると思います」と語るように、ここに来て彼女らしい鋭いドライブと、クイックリリースからの長距離砲を繰り出している。実際、準々決勝の白鷗大戦も3ポイントシュート6本中5本成功で19得点と、見事なパフォーマンスを続けている。

去年も主力メンバーの一人だった星だが、経験豊富な先輩たちについていく存在でもあった。しかし、今秋のアジアカップで日本代表としてFIBA国際大会デビューを飾り、アジア競技会と2大会連続で代表の一員としてプレータイムを確保するなど、名実ともに国内トップ選手の一員となったことで、ENEOSにおいても中心選手としての強い自覚を持ってコートに立っている。

「(先輩に)ついていく、という考えは全くないです」と、星は言い切る。「自分がプレーで引っ張っていかなければいけないとすごく感じています。自分からもっと得点に絡んでいく。自分が攻めることで仲間が空くと思っているので、思い切ってプレーするだけです」

11連覇をかけた明日の決勝の相手はデンソーアイリスだ。ベスト8のトヨタ紡織戦を72-43、準決勝の富士通戦を85-63と堅守が光る相手で、髙田真希がいることで渡嘉敷が今日のようにゴール下でアドバンテージを簡単に得ることは難しい。だからこそ、星が持ち味のドライブで守備を切り崩し、攻撃の起点となっていくことがENEOSの勝利にはより必要となってくる。