昨シーズン、横浜ビー・コルセアーズはチャンピオンシップ出場、天皇杯で4強入りとBリーグ創設以降では一番の好成績を残す大きな飛躍を遂げた。そして大黒柱の河村勇輝の残留もあり、今シーズンはさらなるステップアップへの大きな期待を集めて開幕を迎えた。河村はここまでリーグ1位の平均25.6得点と圧倒的なパフォーマンスを見せているが、一方でチームは6勝8敗と思うように勝ち星は伸びていない。青木勇人ヘッドコーチに序盤戦の振り返りと、これからの巻き返しへ鍵となるポイントを聞いた。

6勝8敗「まだまだこれから、というのが一番強い感覚です」 

──まず、11月は新型コロナウィルス感染症の陽性反応によって3試合を欠場されました。この間、試合中も含めチームとどのように関わっていましたか。

自分のチームの試合を遠くから画面越しで見ているのは、すごく不思議な感覚でした。実際に症状も出ていたのでこの期間は療養に当てていました。それに普段からコーチ陣とコミュニケーションを取って、ある程度は任せている部分もあるのでチームはしっかり回ると思っていました。また、開幕前にはこのような事態を想定して他のチームとの実戦形式の練習などでは、(ヘッドコーチ代行を務めた)山田(謙治)コーチに指揮を執ってもらっていました。そして試合ではコーチ陣がしっかりと戦ってくれていたので、普段から任せておいてよかったです。

──今は、さまざまな方法でベンチとコンタクトを取ることが可能です。試合中に発言したくならなかったですか。

そこは完全に割り切っていました。こういう事態も起こるでしょうし、チームとして1つステップアップできる機会だと完全に任せて、しっかりと治すことに集中していました。実際、症状が結構辛かったので、味覚はありましたけど試合への嗅覚が失われていました(笑)。本当にしっかりと戦っている姿を見て、スタッフみんなが普段からチームのことをよく見ていることを再確認できて良かったです。

──バイウィーク前までのチームのパフォーマンス、結果について率直な印象を教えてください。

負け越していますし、成績には納得していないです。ただ、まだまだこれから、というのが一番強い感覚です。今シーズンは、複数のメインの選手が入れ替わりましたし、他のチームの補強も強烈です。そして、どこも「横浜を打ち負かしてやろう」という気持ちで戦ってきます。その中で、まだまだチームを作り直している段階で、この数字もある程度は想定できたところです。ただ、負けを勝ちに変えることができた試合も少なからずあったと思います。

──河村選手はスコアラーとして大活躍中ですが、一方で相手チームも彼に20点、25点を取られることを想定したゲームプランを作る。そして他の選手を抑えにかかるなど、いろいろな対策を取ってきています。

河村選手にボールを持たせないようにする、逆に彼にある程度、取られることを割り切っているなど、いろいろとあります。ただ、どちらにしても今シーズンのメンバーを見た時、河村選手の得点が伸びることは想像できていました。彼の素晴らしい得点力は絶対に生かすべきで、スコアラーとしての河村選手を強調して戦っていた部分は大きいです。

「河村選手が傑出していることでセカンドユニットの手綱を託すのは本当に難しい役割」

──河村選手以外の部分、チームオフェンスについてはどんな評価をしていますか。

まず、アシスト数がチームとしてそんなに伸びていないのは気になるところです。今は河村選手が相手ディフェンスを引き付けたところで、キックアウトでパスを出すターゲットがあまり定まっていないところがあります。そして3ポイントシュートの確率が悪い時、1対1からのシュートが増えてしまっています。それはこちらがピック&ロールを仕掛けた時、相手がほぼスイッチディフェンスをしてきて、この状況からうまく展開できていない問題があります。また、河村選手のドライブ以外でのペイントタッチが安定していないです。

そしてセカンドユニットの安定感はうちの強みで、昨シーズンはここで違いを生み出し最終的に勝ちに繋いでいけた試合も多かったです。だからこそ、森井(健太)選手をうまく生かしていけるかが、巻き返しのための大きな鍵になると思っています。森井選手のコントロールによって、セカンドユニットが存在感を示している時は、自分たちのプラン通りに試合を有利に進められている時が多いです。森井選手はアシストに対して、ターンオーバーが少ないのが大きな持ち味ですが、ここまでアシストが少なくてターンオーバーが多い試合がいくつかあるなど、本来の力を中々発揮できていません。(今シーズン絶望の大ケガを負った)シューターの大庭(岳輝)選手の離脱も影響していますが、彼のアシスト力を生かすターゲットが安定すれば修正できると感じています。

──セカンドユニットの安定感でいうと、得点源だったウイングの森川正明選手が移籍した穴も大きいように感じられます。

全体的にウイング陣のステップアップはものすごく期待しています。松崎(裕樹)、西野(曜)、杉浦(佑成)がサイズのある3番ポジションとして争っているところですが、三者三様で少しずつ色が出てきているので、個性をもっと強烈に表現してもらいたいです。それがうまく表現できている時は、みんな自信を持ってプレーしていろいろな角度から相手にプレッシャーをかけられています。森川選手は素晴らしい選手ですが、うちのウイング陣も高いポテンシャルを持っています。

──セカンドユニットは横浜BCの大きな強みですが、河村選手がこれだけ圧倒的な活躍をすると、バランスを取るのは難しくないですか。

少しずつ見えてきているところはあると思います。ここまで14試合戦ってきて、いろいろな対策を練られてきて、いろいろなことを試してきました。去年もそうやって少しずつ改善していくことで最後の形になりました。夏の間の日本代表での活躍を経て、河村選手がより強烈な存在としてチームに戻ってきました。だからこそ、その対面で森井選手もさらに輝けると思っています。

もちろん、河村選手が傑出していることでセカンドユニットの手綱を託すのは本当に難しい役割だと思います。その事について、2人で1回話しましたが、森井選手は「ものすごくやりがいがあります」と言ってくれています。どんな組み合わせがいいのか整理を進め、徐々にですが手応えも得ています。

──ディフェンス面の評価を教えてください。横浜BCは堅いディフェンスを基盤とするチームですが、ここまで負けた試合では大量失点が目立ちます。

1つの大きな要因は、オフェンスがしっくりいっていないこと。オフェンスの終わり方が悪いので、ディフェンスをセットできずにトランジションや簡単な2ポイントでやられてしまうのが大量失点の原因です。良いシュートの形で終わればトランジション、ハーフコートともに強度の高いディフェンスができています。それを続けていくために、オフェンスの精度を高めていかないといけないです。

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