「泥臭いプレーをするスマート選手がどんどん好きになりました」
WOWOWでは6シーズンぶりに世界最高峰のバスケットボールリーグNBAを放送・配信中だ。17日(金)に生中継したネッツvsヒートでは、千葉ジェッツの中心選手であり、日本代表として今夏のワールドカップに出場した原修太がNBA初解説に挑戦。初解説を終えた原がインタビューに対応した。
――初めてのNBA解説でしたが、解説を終えての率直な感想をお願いします。
めちゃくちゃ緊張しましたし、自分が思ったことをちゃんと伝えられるか不安で、そればっかりが頭をよぎっていました。後半は慣れてきたので楽しみながら解説することができました。ファン目線で見ていてすごく良い試合だったので、本当は楽しんでいる自分を出したかったのですが、そこは抑えました。ぜひまたやりたいです。
――選手目線で解説をしたいとおっしゃっていましたが、そのあたりはどうでしたか。
できるだけ選手にしか分からない「気持ち」みたいな部分を伝えるように心掛けました。選手をやっていると「ここはシュートを打った方が良いのでは」と思うことも多々ありましたが、もしかしたらチームの戦術上でルールが決められているかもしれないということなども伝えられたと思います。
――NBAでの注目チームとその理由も教えてください。
セルティックスが好きです。きっかけは、(グリズリーズに)移籍してしまいましたがマーカス・スマート選手が好きで、そこから入って2大スターのジェイレン・ブラウンとジェイソン・テイタムのプレーもやっぱり華があって好きです。周りを固めているデリック・ホワイトやアル・ホーフォードのバランスがすごく良いですし、今シーズン新加入したドリュー・ホリデーとクリスタプス・ポルジンギスもすごく良い補強だと思いますし、今は好調で勝っていまよね。個人的に好きな選手もいますがチームとしても、見ていてしっかりと固まっているので注目しています。
――マーカス・スマート選手ですが、『守備職人』という部分や、(原選手と)同い年ということもあり、通じるものがあると思います。何か意識されている部分はありますか。
僕はプロになるまで、オフェンスばかり意識していたのですが、プロでプレー時間を得るためには、どうしてもディフェンスができなければ生き残れないので、そういったことをコーチと話すようになりました。そこからNBAで脇を固めるディフェンスが得意な選手たちに注目するようになりました。その中で、スマート選手は身長も自分と近いですし、体型も似ているので、それを参考にして僕も成長できた部分があります。泥臭いプレーをするスマート選手がどんどん好きになりました。
――東西両カンファレンス、どのチームが優勝候補だと思いますか。
東カンファレンスの場合はケガなどのアクシデントがなければセルティックスが勝ち上がると思います。西カンファレンスは、ナゲッツと言いたいところですが、昨シーズン優勝しましたし、ファン目線でいったら違うチームを見てみたい気持ちもありますが、やっぱりナゲッツではないでしょうか。
――NBAの選手の中でマッチアップしてみたい選手はいますか。
レブロン・ジェームズ選手(レイカーズ)とやってみたいです。抑えられるイメージは全くないですけど、特に全盛期の身体のレブロン・ジェームズとのマッチアップを経験してみたいです。どれだけ大きくて、どれだけ速くて、どれだけ強いのか、単純ですけどバスケに限らずアスリートとして最高峰なのでそれを体感してみたいです。
W杯を経て「我々Bリーガーも頑張っていかなくてはいけない」
――NBAで活躍する渡邊雄太選手、八村塁選手をどのようにご覧になられていますか。
渡邊選手に関しては、この夏に一緒にワールドカップで戦いましたけど、NBAファン目線として見ていると1、2年目の頃はどちらかと言うと、ディフェンスに重きを置いてプレーをしていました。ドリブルで組み立てる印象がありますが、昨シーズンはケビン・デュラント選手と一緒にプレーをするのを見ていて、無駄にボールを持ち過ぎないようになりました。もちろんデュラント選手がチームメートであれば、彼にボールが集まるのは当たり前なのですが、日本代表として一緒にプレーをした時にも、他のプレーヤーにボールを預けて自分がスペースを生み出してアタックすることで代表でも好成績を残していたので、デュラント選手とプレーすることで、そういった部分を伸ばしたのではないかなと感じています。ボールタッチが少ない中でも結果を残しているので素晴らしいと思っています。
八村選手に関しては、どうしてもっと試合に出られないのかなというのが正直な印象です。直前の試合でも20点得点以上取っていますし、得点率も良いのでもっとたくさん試合に出られれば、結果を残せるものと思っています。
――今夏W杯を経て、バスケットボール熱が上がってきたと感じるような事があれば教えてください。
普段バスケを見ていなかったような人から「試合見たよ」って言ってくれるのはすごく嬉しいです。あとは(自分だけに限らず)選手のSNSアカウントのフォロワー数がすごく伸びました。なので、新しく興味を持ってもらった方々にも楽しんでいただけるように、我々Bリーガーも頑張っていかなくてはいけないなと思うようになりました。
――W杯に出場してから、NBAの見方も変わったと中継でおっしゃられていましたが、詳しく教えてください。
昔から参考にはしていましたが、何か漠然と現実味がないというか、それが実際日本代表に選出されて戦ううちに、海外の選手とマッチアップしてみると、本当に世界というのは広いし、いろいろな選手がいるというのを実感しました。その経験をしたことで次の代表にも絶対に入りたいと強く思うようになりましたし、NBAの試合を見ていても、(この選手は)どこの国の代表の誰々だと意識して見るようになりました。
優勝したドイツのフランツ・バグナー(マジック)は対戦してみてすごい選手でしたが、そのバグナーよりもすごい選手がたくさんいると感じて、それはマッチアップしてみたからこそ、その強さの基準が分かるようになりました。
――タッチペン解説をされていましたが、いかがでしたか。
下手だと思いました(笑)。画面に丸ばっかり描いて途中どうしようかと混乱しました。頭の中で思っていることを皆さんに分かり易く伝える難しさを実感しました。コーチングをしたことがないので関わるいろいろなコーチの皆さんを尊敬しました。テレビ中継や、実際の試合でも、ホワイトボードで矢印を使って戦術を共有しますが、その作業はとても難しいものだったのだなと実感しました。
――原選手が解説するからWOWOWでNBAを見てみようと思った人も多くいたと思います。どのような見方をすれば楽しめると思いますか。
もしBリーグのファンであれば、自分のファンの選手のプレースタイルに似ている選手を探して、当てはめてNBAを見てもらうのも1つかもしれません。僕もそうですけども、やっぱり「推しメン」や「推しチーム」みたいなものを作っています。女性の方であればユニホームが可愛いでもいいと思いますので、何か推す部分がないと見るのが続かないと思い
ますので、持続させるコツは推しを作ることだと思います。
自分自身はヨーロッパのバスケットリーグも見るようになりましたが、選手も分からないと見飽きてしまうので、詳しい人にどこの国のチームや選手がおすすめというのを聞いて、それぞれの特徴などを知ってから楽しく見られるようになりました。