橋本竜馬

堅守が生み出した勝利「後半、良いディフェンスから良いオフェンスに繋げることができました」

10月14日、アルバルク東京はホームで宇都宮ブレックスと対戦。クラブ主管試合では歴代最多となる1万40人の観客の前で、ディフェンスの高い強度を保ち続け、特に後半は26失点と堅守を見せたA東京が、75-60で快勝し開幕3連勝を飾っている。

立ち上がりはともに相手の守備の圧力に苦しめられ、なかなかオープンシュートの機会を作れず、第1クォーターは宇都宮の12-10とロースコアで終える。第2クォーターに入ると、前半で15得点を挙げたDJ・ニュービルが高確率でシュートを決め続けることで宇都宮が突き放しにかかる。しかし、A東京もテーブス海がミドルシュートを的確に決めて応戦し、30-34と追い上げて前半を終えた。

後半もともに激しいディフェンスによる息詰まる熱戦となり、僅差の展開が続く。しかし、第4クォーターに入ると宇都宮は徐々にプレーの精度が落ち、ミスが増えていった。A東京はこの隙を逃さずに8-0のランを繰り出して、残り6分の場面でリードを一気に2️桁に広げると、第4クォーターを21-10と圧倒して逆転勝ちを収めた。

この試合、A東京はセバスチャン・サイズが21得点10リバウンドをマーク。さらに新戦力の元リトアニア代表のアルトゥーラス・グダイティスが16得点、ブラジル代表としてFIBAワールドカップ2023に出場したレオナルド・メインデルが13得点、テーブス海が10得点と続いた。

また、同じく新戦力の橋本竜馬は得点は2に留まるも、5アシストを挙げ、ベテランらしい安定したゲームメークを披露した。特に第3クォーター終盤の46-46の場面でコートに入った際には、直後に吉井裕鷹の3ポイントシュートをお膳立てし、さらにプルアップシュートを決め、グダイティスのバスケット・カウントを導くアシストも記録。わずか4点とはいえ、リードして第4クォーター突入と、均衡した状態から試合の流れをA東京に引き寄せる立役者となった。

「前半、なかなかオフェンスがうまくいかないところはありましたが、40分間を通して激しいディフェンスが遂行できたと思います。そして後半、良いディフェンスから良いオフェンスに繋げることができました」

このように勝因を語る橋本は、自身のプレーについて次のように振り返る。「宇都宮さんは強豪で、最初から簡単に行かないことはウチの選手のみんなが分かっていたことです。その中でも、少しのきっかけで良いランが作れると思っていました。特に後半についてはペースのコントロール、チームとしてどういうシュートを打っていくのかをすごく意識していました。同時に思い切りの良さを出す必要もあると感じていて、それがうまくハマってくれました」

橋本竜馬

「どこで優位に立てるのかをピンポイントで見つけ、遂行する力を養っていきたい」

昨シーズンのA東京は故障者が続出したポイントガードで苦しんだ。しかし、今シーズンはテーブス、橋本がそれぞれ持ち味を出すなど、安定感が大きく増している。また彼らに加えて福澤晃平と、頼りになる日本人の司令塔を補強できたことは、他のポジションにも大きなプラス効果をもたらしている。

デイニアス・アドマイティスヘッドコーチは、攻守で安定感抜群のプレーを見せている201cmのメインデルを獲得した背景をこう明かす。「伊藤(大司)GM、コーチ陣と一緒に、日本人のポイントガードが取れた場合、取れなかった場合の両方でロスターを考えていました。そしてポイントガード3名が日本人選手で埋まった段階で、ウイングの外国籍選手であるレオ(メインデル)選手の獲得に動きました」

上々のスタートを切っているA東京だが、橋本はチームの仕上がり、自身のフィット具合ともにまだまだ発展途上であると強調する。「チームとしての完成度は30%、40%くらいで、僕自身もそれくらいかと思っています。まだまだ自分たちのやりたいことができない時間帯があります。個人としても、どういう時にどういったバスケをすべきか、もっと勉強していかないといけないです。海と同じニュアンスでやる時間、変えないといけない時間があると思います」

さらに橋本は、次の部分に磨きをかけていきたいと続ける。「このチームはタレント力があるからこそ、相手の弱みにつけ込んでいくバスケをコーチは求めています。どこで優位に立てるのかをピンポイントで見つけ、すぐに遂行する力をもっと養っていきたいです」

橋本といえば、Bリーグでも有数の経験豊富な司令塔で、これまで多くの勝利をつかんできた。百戦錬磨のベテランとして、確固たるスタイルを確立しているが、それでも前述したように「もっと勉強しないといけないです」と語る。その理由を聞くと、橋本はこう答えてくれた。「完璧な試合は今まで経験したことがないですし、完璧な選手も今まで見たことはないです。だからこそ、みんなが追い求めていると思います。また、完璧に少しでも近づけていこうとするチームこそが、優勝に近づけます。常にハングリーで、勝った試合でも反省しながら次に進んでいくことが大切だと、アルバルク東京のような強豪に来ても感じています」

今シーズン、A東京は王座奪還を至上命題に掲げる。35歳と大ベテランの域に達しても成長に貪欲で、これまで数々のタイトルを獲得しながら勝利に飢えている橋本の存在は、これからもコート内外において大きな助けになるのは間違いない。