シュルーダー中心のチームプレーとフランツ・バグナーの個人技が噛み合う
8月25日から17日間で8試合を戦うタフなスケジュールのワールドカップを制したのはドイツ代表でした。セルビアとのファイナルはハイスコアとなった前半から一転し、緊張感のあるロースコアとなった第4クォーターに抜け出すと、終盤のセルビアの猛追を振り切って初めての優勝を勝ち取りました。
8チームが決勝トーナメントに進んだ時点で、すでに全勝がドイツとリトアニアの2チームに絞られた今大会において、ドイツも苦戦を強いられてきました。グループリーグのオーストラリア戦は3点差で何とか勝ち切り、決勝トーナメントからはラトビアに2点差、アメリカに2点差、決勝のセルビアこそ6点差での勝利。『圧倒的』ではなく『紙一重の戦い』を制しての全勝優勝でした。
各国の実力差が小さかった今大会で強く感じたのは、NBAのプレーオフのように『7試合のうち4試合に勝つこと』と『1試合ですべてが決まること』の戦い方の違いで、その試合の中で好不調の波を見極め、勝てるポイントで勝負していくことの重要性でした。事前のスカウティングは不可欠ではあるものの、初めての顔合わせの中で探り合いをしている時間はなく、1回の成功でも有効と思われた武器を積極的に使うことがアドバンテージを生み出しました。
ドイツは初戦からその傾向が強く、日本のセカンドユニットがインサイドに弱いと見るとモリッツ・バグナーが積極的にアタックし続け、14本中10本のフィールドゴールを決めて25得点9リバウンドの大活躍。それでも、この試合以降のモリッツに2桁のフィールドゴールアテンプトはありませんでした。2戦目のオーストラリア戦では、日本戦で無得点だったマオド・ローが3ポイントシュートを立て続けに決めて20点と、好調な選手が次々と得点を奪っていく形ができました。
決勝トーナメントになると、オフェンスで苦しんだラトビア戦ではヨハネス・ティーマンがポストアップからのパワープレーでフィールドゴール4本すべてを決めて10得点7リバウンド。準決勝ではアメリカのディフェンスがシューターのアンドレアス・オベストへの対応が悪いとみるやボールを集めて、3ポイントシュート4本だけでなくプレーメークにも積極的にかかわって24得点6アシストの大活躍でした。
アイザック・ボンガは相手が強くなるほどキラーディフェンダーとしての働きが光るようになり、特にファイナルでは長い腕を生かしてポイントガードにプレッシャーをかけると、セルビアの軽快なパッシングを封じ込める原動力となりました。それぞれの選手がすべての試合で活躍したとは言えなくても、各試合でピンポイントの武器が効いたところで、それを徹底することでリードを生み出してきたのです。
チームの中心としてオフェンスを組み立てたのはデニス・シュルーダーでしたが、苦しい時に個人技で打開するのがフランツ・バグナーだったのも、ドイツの強みとなりました。相手からするとドイツを止めるにはシュルーダーを中心としたチームオフェンスへの対応をする必要があり、その対応を強めるとフランツの個人技に対処できなくなり、ドイツの安定感が他のチームを上回ることになりました。
充実した戦力を誇っていたドイツは、相手にアジャストしすぎることはなく、自分たちの強さを押し出す戦い方をしました。シュルーダーとフランツを中心としたベースとなる戦術に、様々な武器を持つ選手をオプションとして組み合わせることで、対戦相手に応じた効果的な戦いができたのが印象的でした。異なる特徴を持つ選手を揃えていたことが、実力伯仲の今大会で勝者と敗者の差を生み出したのです。