JX-ENEOSサンフラワーズ

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

吉田亜沙美を中心に、勝負どころで真価を発揮

皇后杯決勝、JX-ENEOSサンフラワーズが86-65でトヨタ自動車アンテロープスを破って優勝を決めた。

立ち上がりは長岡萌映子の得点で先制したトヨタ自動車の流れ。準決勝のデンソーアイリス戦と同様に隙のないディフェンスでJX-ENEOSの走る展開を封じ、長岡、馬瓜エブリンを中心に得点を重ねる。それでも第1クォーター終盤、JX-ENEOSがベンチスタートに回っているキャプテンの吉田亜沙美を投入すると流れが変わった。残り2分を切って、それまで無得点だった宮澤夕貴が初めてオープンで打つチャンスを迎えると、安間志織のファウルを受けながら3ポイントシュートを沈め、フリースローも決める4点プレーで24-19とリードを作って第1クォーターを終える。

佐藤清美ヘッドコーチは「立ち上がりが重く、いつもは第2クォーターから投入する吉田を早く入れることで、オフェンスにしてもディフェンスにしても自分たちのペースにできた」と、吉田投入の効果を語る。

これで勢いに乗ったJX-ENEOSは第2クォーターに圧巻のパフォーマンスを見せる。吉田がゴール下に飛び込んでオフェンスリバウンドを奪うと、繋いだ宮澤がドライブから得点。宮澤のスティールから素早く展開して、オープンの3ポイントシュートを沈める。21-29と突き放されたトヨタ自動車がタイムアウトを取るも、直後に渡嘉敷来夢がゴール下をきっちり決めて10点差に。

トヨタ自動車はインサイドを切り崩せず、外からのシュートに当たりが来ない。ディフェンスで踏ん張りたい状況だが、ほとんどボールを止めることなくフィニッシュまで持ち込むJX-ENEOSの速い展開に振り回される。21-36とされて再びタイムアウトを取るも、このリスタートのボールをJX-ENEOSはオールコートで当たって奪い、得点へと繋げる。

それでもトヨタ自動車はゾーンディフェンスでJX-ENEOSの勢いをようやく止め、第2クォーター後半に長岡のフリースローで33-44まで点差を詰める。ここで長岡が宮澤の個人3つ目のファウルを誘い、相手のエースをベンチへと追いやった。前半ラスト1分、トヨタ自動車に流れが来たかに思われたが、勝負どころで真価を発揮したのは『女王』JX-ENEOSだった。

コントロールに徹していた吉田がドライブでインサイドに切り込み、ディフェンスを十分に引き付けてゴール下の渡嘉敷へとパス。吉田から渡嘉敷の最強ホットラインでトヨタ自動車の流れをあっさりと断ち切り、48-33で前半を折り返した。

渡嘉敷来夢

31得点の渡嘉敷来夢「全員で勝ち取った勝利」

後半、トヨタ自動車も長岡を中心に盛り返しを図るも、インサイドを切り崩すことができず、その外から放つシュートには当たりが来ない。JX-ENEOSも必ずしもシュートタッチは良くなかったが、得点源の渡嘉敷と宮澤が徹底的にマークされる状況で、センターの梅沢カディシャ樹奈にイージーシュートのチャンスを作ることで得点を伸ばしていく。

トヨタ自動車の司令塔、三好はこの時間帯を悔やむ。「ボールが回らず、自分たちで止めてしまって流れを悪くしてしまったし、外打ちだけの時間帯もありました。ガードを中心にペイントアタックして外にさばくとか、そういうプレーが必要でした」

点差が20に開き、トヨタ自動車としては3ポイントシュートで挽回したい状況となったが、打てども打てども当たりが来ない。第3クォーターに安間が、第4クォーターに三好が1本ずつを決めただけで、試合を通じてトヨタ自動車の3ポイントシュートは23本中2本しか決まらなかった。

トヨタ自動車はJX-ENEOSを相手に特にディフェンス面で、激しく当たりつつもファウルを避けて奮闘を続けたが、得点が伸びず。逆にJX-ENEOSは勝負どころでの強さ、要所でのしたたかさが光る内容で、大量リードを保ち続けた。最終スコア86-65の完勝、31得点15リバウンドと勝利に大きく貢献した渡嘉敷は「誰か一人ではなくチーム全員で勝ち取った勝利だと思います」と語り、MVPに輝いた宮澤も「パスを出してくれる選手、走ってくれる選手あってこそ」とチームでの勝利を強調した。

これでJX-ENEOSは大会6連覇。『女王』の時代はまだしばらく続きそうだ。