西田優大

ワールドカップの平均プレータイムは2.4分「感謝と悔しさで複雑な気持ちです」

カーボベルデ代表を下し、日本男子バスケ界の歴史を変えた後のミックスゾーンは、興奮した選手たちとメディアとでお祭り騒ぎの様相を呈していた。ところが、その中で涙で目元を赤くしている選手がいた。西田優大だ。

「正直、辛いことのほうが代表の時は多くて。うまくいかないことがたくさんある中で、こうやってガードというチャンスを見い出してくれて、この機会に立ち会えている感謝の気持ちと、選んでくれたのに貢献できなかったなっていう悔しさで、今、ちょっと複雑な気持ちです」。涙の理由を問われた西田は、このように気持ちを吐露した。

西田は今大会、本来のポジションであるシューティングガードでなく、ポイントガードとして日本代表メンバー12名に加わった。167cmの富樫勇樹、172cmの河村勇輝という小さなPG陣に大型選手を1人加え、異なる強みを生かしたいというトム・ホーバスヘッドコーチの意向でコンバートにチャレンジし、7月8日のチャイニーズ・タイペイ戦で実戦デビュー。そつのないパフォーマンスを発揮し、テーブス海との競争に勝って最終メンバーに入ったが、胸中は前述のコメントのとおりだった。

「最初のほうは試合にもよく絡ませていただいて、チャイニーズ・タイペイ戦なんかは役割を果たせていたかなとは思うんですけど、それから少しずつプレータイムが減っていって。それでもチームに必要とされていると思って、なんとか役割を見い出して頑張ってきたんですけど、最初にうまくいったからこそ、うまくいかないときが目立ってしまうと言いますか。そういうことは、チームが勝っている時間帯にもすごく感じていました」

西田優大

「もちろんガードの部分でリベンジしたいって思いもあります」

今大会、西田はカーボベルデ戦を除く4試合に出場したものの、出場時間は平均2.4分に留まった。ただ、苦しい思いを胸に抱えながらも、同じくプレータイムが少なかった井上宗一郎とともにベンチからチームを盛り上げようとする意識はチームに大きな勇気を与えたはずだ。「メンバー競争の間とかは、みんな残りたいから個人個人で頑張るという感じだったんですけど、途中から『チームで頑張る』というようなことをトムさんが言ってくれて、僕や宗一郎はプレータイムこそはないですけど、ベンチで盛り上げて、いつでも準備して、このチームのために何かできるのかって、それを考えながらやるだけでした」

24歳の西田にとって、このワールドカップで味わった喜び、驚き、悔しさ、すべての感情がそのまま伸びしろとなる。今後の課題について問われた西田は「もちろんガードの部分でリベンジしたいって思いもありますし、本職は2番でもあるので、他の選手に負けないぐらいの3ポイントやドライブも身に付けたい」と話した。そして、「 本当にあと(パリ五輪までの)1年はさらに激しい競争になると思いますし、さらに頑張るだけ。この悔しさを糧に、今日はみんなとうれしさ、喜びを分かち合ってまた頑張りたいと思います」。西田はそう話してロッカールームに向かった。

転換期を迎えたシーホース三河は、28年間チームの指揮を執ってきた鈴木貴美一に代わり、ライアン・リッチマンがヘッドコーチに就任した。新たな環境で西田がどのように成長していくか、チームの成績とともに注目していきたい。