アメリカ代表

強烈な個性は持っているものの、個人技よりもチームを優先

ワールドカップでは若手を起用する傾向が強いアメリカですが、今大会は特に若い選手が多く、20歳のパオロ・バンケロ、22歳のアンソニー・エドワーズとウォーカー・ケスラー、23歳のジャレン・ジャクソンJr.とタイリース・ハリバートンなど、20代前半のニュースターが目白押しとなりました。スター選手が集まる分、チームとしての完成度が上がらないのは毎回のことですが、それだけにスピードと運動量を生かしたトランジション中心の戦い方を徹底しています。

前回大会ではセンターを3人招集しながらも、スモールラインナップを好むためプレータイムが与えられない選手がいるなど、ロスター構成と戦い方が噛み合わないチグハグな印象でしたが、今大会は純粋なセンターは機動力のあるケスラーのみ。バンケロやジャクソンJr.、ボビー・ポーティスといったウイングタイプのビッグマンがメインとなり、トランジションとスペーシングを重視する戦い方が明確になりました。

また、ガードを多く招集しているものの、ポイントガードはハリバートンとジェイレン・ブランソンの2人だけで、複数のポジションをこなせるマルチタイプを重視しており、誰もがシューターであり、誰もがパサーであり、誰もがリバウンダーとなるポジションレスの構成です。それぞれ強烈な個性は持っているものの、個人技での打開よりもテンポ良くボールを動かしながら、どこからでもドライブと3ポイントシュートを狙っていくことができます。

アメリカらしい1on1の能力で勝負していくのはエドワーズ、ブランドン・イングラム、バンケロ、そしてブランソンくらいで、チームオフェンスの中で判断力と選択肢の多さでプレーする選手を集めました。これは前回大会、そして東京オリンピックでチーム戦術が機能せず、個人技頼みになっていった苦い経験が、選手の招集基準を変えたのでしょう。

ディフェンス面でも全員がスイッチ可能でインサイドでもアウトサイドでも守ることができ、ビッグマンが3ポイントシュートのチェックに出ればガードがリバウンドのカバーに入るなど、現代バスケらしいチーム戦術を見せてくれそうです。

ただし、これを急造チームで完成させるのは簡単ではありません。マークの受け渡しミスやオーバーヘルプが起こりがちなことと、対戦相手に応じた柔軟さも求められるため、選手個人の能力が高くても上手くいくとは限りません。

グループリーグはギリシャと同組となり、ヤニス・アデトクンボへの対応が注目されましたが、アデトクンボが欠場になったことで一気に楽になった印象です。油断は禁物とはいえ、力の差がある相手が多く、余裕を持った戦いでチームの完成度を高められそうです。