ゲームハイの21得点に加え、リバウンドでもチームに貢献
『オールジャパン2017』男子準決勝でシーホース三河を破り決勝へ駒を進めた千葉ジェッツ。この試合で一番大きな存在感を放ったのは、コート上で一番小さい富樫勇樹だった。バスケットボールにおいて身長が低いことは不利ではあるが、富樫はそれを補って余りあるスピードと攻撃力を持ち合わせている。
三河戦ではゲームハイの21得点を挙げているが、それでも本人は「もっとできた」と満足していない。「今日は自分が得点を決めるという気持ちでした。特にビッグマンに外まで出てこない選手が多かったので、もうちょっとできた部分はあったと思っています」
得点もさることながら8リバウンド6アシストをマーク。富樫のプレースタイルからすればアシストは驚きに値しないが、高さに強みのある三河と対戦しての8リバウンドは少なからず意外だ。「なかなか簡単にはリバウンドを取れないということで、チップしてでも拾うと試合前に話していました。それで実際、自分も石井(講祐)さんも拾うことができました。やはり自分たちがオフェンスリバウンドを取られた時はすごく嫌な気持ちになります。セカンドチャンスポイントというのは相手にとっては結構くると思うので、そういう部分では良かったと思います」
ポイントガードとしての『本業』であるゲームメークについては「要所でチームやゲームの流れをしっかり作れた部分ではすごく良かった」と一定の評価を与えている。
自分たちのテンポでやれている時間帯については「すごく強いと思う」と自信を語る。栃木戦も三河戦も、第3クォーターがそれに当たる。「栃木戦もそうでしたが、第3クォーターでしっかり20点近く離せたところが、チームとしてオフェンスもディフェンスもうまくいった時間帯でした。そういう時間帯を増やしたいと思います」
千葉はリーグでも13連勝を記録し、今回の『オールジャパン2017』でも決勝進出と、Bリーグ開幕以来、尻上がりに調子を上げている。富樫は好調の要因を「チームケミストリー」と「個のディフェンス力」と分析した。
「レギュラーシーズンも含めて30試合以上やっている中で、個々の特徴や強みのすべてを理解するようになったので、今こうやって良いバスケットができていると思います。良いディフェンスができている理由は、カバーし合うこともそうなんですが、それ以上に自分がマークする選手にやられないことを一人ひとりが思っていることだと思います」
川崎と対戦する決勝は「最後に1点勝っていればいい」
決勝の相手は川崎ブレイブサンダース。年末のBリーグ最終戦では接戦を演じながらも2連敗を喫している。2つの敗戦に共通することは「出だしの悪さ」。その点は富樫が力強くチームを牽引することで改善しなければならない。
また、川崎の強さを認めた上で、内容よりも「勝ち」にこだわりたいと優勝への意欲を見せた。「内容どうこうよりも勝ちにこだわりたいです。千葉ジェッツとしては優勝経験がないので、そんなに綺麗に勝てると思っていないですし、最後に1点勝っていればいいという感じです」
それでも川崎はリーグ最高勝率を誇り、NBLではファイナルを勝ち抜く『タイトルの取り方を知る』チーム。「ウチはスピードだったり走れるところを武器としているのでディフェンスからリバウンドを取って早い展開というのをやっていけたらなと思います」と川崎撃破を目論む。
富樫の武器は三河戦で絶大な威力を発揮したピック&ロールの活用だ。「ファジーカスもそこまで出てくる選手ではないので、チームとして狙えます。そこで崩せるところだと思います」
自分のマークをスクリーナーにぶつけて、ファジーカスとのマッチアップを作れば、出て来るだけの足がないので富樫がフリーでミドルシュートを打つことができる。そこからのパスでさらなる攻撃を生み出す選択肢もある。アイザック・バッツと桜木ジェイアールを手玉に取った攻めは、川崎にとっても大きな武器となりそうだ。
今でこそエースガードとしてチームを牽引している富樫だが、過去2年間は不遇の時代を過ごしている。「試合に出れない悔しさがありました」という我慢の時期があったからこそ、現状の楽しさは格別だろう。「もちろん楽しいです。こういうチーム状況で自分を使ってくれる監督もいるので、その期待に応えたいです」
彼に期待を寄せるのはヘッドコーチだけでなく、ファンも同様だ。平日開催だった準々決勝と比べ、昨日の準決勝には多くの千葉ブースターがスタンドを埋めた。「本当にうれしいです。ベスト4ということでたくさんの方が来てくれました。明日は月曜ですが休みですよね。たくさんの方々に応援に来ていただきたいです」
千葉の攻撃、そしてブースターの期待を小さな身体に担う富樫。栃木、三河と強豪撃破で上昇気流に乗る『千葉ジェッツ号』をタイトルに導く誘導灯となれるか、冨樫の出来が勝利のカギを握る。
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