コリンズがジャズにトレードされ、ヤングとのコンビは5年間で幕
二コラ・ヨキッチとジャマール・マレーの予測不能なコンビプレーは、時間をかけて熟成され、ナゲッツを優勝へと導きました。それとは対照的に、イマジネーション溢れるコンビプレーでかつては大いに期待されたトレイ・ヤングとジョン・コリンズは、時間の経過とともにコンビプレーを発揮する機会を減らし、コリンズのトレードという形で終わりを迎えました。
サイズと運動能力という致命的にも思える欠点を霞ませるほど、ヤングはイマジネーションに秀でており、自らのアクションでディフェンスを動かして時間とギャップを作ってはシュートチャンスを生み出します。しかし、ヤング個人で見るとフィニッシュの精度が低い欠点があり、個人技だけでオフェンスを構築するのは厳しいものがあります。
そんなヤングの特徴に対して、コリンズは高い運動能力と万能なスキルを持ち合わせ、フィニッシュ精度の高さに特徴があり、ヤングの弱点がコリンズの長所となる理想のコンビでした。何よりもコリンズはオフボールでギャップを作ることに優れ、フィジカルなポジション争いの中で自分が飛び込みたいスペースをキープし、ハンドラーからのパスを呼び込み、ビッグマン離れしたスピードとジャンプ力でディフェンダーを置き去りにしてフィニッシュしていきました。
2019-20シーズンには平均21.6得点、フィールドゴール成功率58%、3ポイントシュート成功率40%を記録したコリンズは、ヤングから多くのアシストをもらいましたが、同時にヤングにとってもコリンズは最も多くのパスを出してくれる相棒でした。ピック&ロールからの得点はハンドラーとしてヤングがリーグ2位、ロールマンとしてコリンズが1位。この時はリーグ最高のツーメンゲームを実現するコンビだったのです。
2020-21シーズンのプレーオフではジョエル・エンビードの上を通すヤングのパスからコリンズがダンクを叩き込み、若きコンビを中心にしたホークスはカンファレンスファイナルへと進みました。ところが、このプレーオフでの成功に自信をつけたことで、ホークスは迷走し始めます。個人技主体のオフェンスが増えるとともにビッグマンを2人並べる形が常態化し、基盤であったはずのヤングとコリンズのコンビプレーが減っていったのです。ヤングがエースとして輝きを見せる一方でコリンズは目立たなくなり、チームとしても勝てなくなっていったのです。
コリンズは基本的にパワーフォワードとしてプレーするようになり、自分が飛び込みたいスペースはセンターに使われ、スクリーナーとしてピック&ロールに絡むことも極端に減りました。ディフェンス主体の起用法の中で、当初は弱点とされていたディフェンス力を大きく改善させるなど成長は見せたものの、得点やリバウンドといった目に見えるスタッツが下がったことで『高額サラリーに見合わない』と評価を下げることにもなりました。
ここ数年、コリンズには常にトレードの噂が流れていました。オフボールで違いを作れるコリンズは、ハンドラーのヤングにとって最高の相棒ですが、昨年オフにチームが補強したのはヤングとプレーシェアするハンドラータイプのデジョンテ・マレーでした。相性の良いコンビプレーよりも起点を複数にすることを重視し、同時に周囲を固めるのもコリンズのような動き回るタイプより、コーナーから3ポイントシュートを決めるスポットシューターへとホークスのバスケが変化したことで、コリンズの居場所はなくなりました。
コリンズの新天地はジャズとなります。コリンズは流動的にポジションチェンジを行い、オフボールで動き回れる環境でこそ生きる選手ですが、ジャズには同じような特徴を持つラウリ・マルカネンがいます。異なる特徴を持ったヤングとのコンビから、似た特徴を持つマルカネンとのコンビで、どのような化学変化が起きるのか。コンビプレーでこそ輝く選手だけに、楽しみでもあり不安でもある新天地での再スタートとなります。