今野紀花

文=丸山素行 写真=日本バスケットボール協会、野口岳彦

ファウルができない状況でのプレーを強いられ失速

ウインターカップ3日目、女子は3回戦が行われた。今野紀花を擁する聖和学園は岐阜女子と対戦。アメリカのルイビル大への進学を決めている今野を中心とする聖和学園が、女子高校バスケ界の『2強』である岐阜女子の牙城を崩すのではないかと注目された。

だが開始早々、今野に試練が訪れる。岐阜女子の留学生プレーヤーとの高さのミスマッチを埋めるべく、ヘルプディフェンスに行った際にファウルを取られるなど、今野は開始3分で3つのファウルをコールされた。「私はファウルしないほうだったので、急に3回取られて、やってしまったなって」と、これまで経験のない突然のファウルトラブルに見舞われ、ベンチに下がった。

それでも留学生の高さに圧倒され、劣勢に陥ったが「前半はよくボールも回って、シュートも当たっていてチームも良いリズムでバスケットができていました」と言うように、田中歌穂が3ポイントシュートを高確率で沈め、合澤唯もミドルシュートで続き、前半を40-41で互角で終えた。

後半も拮抗した展開が続いたが、今野が4つ目のファウルをコールされたところから、聖和学園は崩れていった。高さの不利が顕著に出てオフェンスリバウンドから失点し、攻撃のリズムがつかめずシュートはことごとくリングに弾かれた。

「ディフェンスではいつも出てるところで出れないし、多少あきらめなきゃいけないところもあった。そうやって少しずつの積み重ねで開いていった」と今野が言うように、ファウルを恐れるあまりディフェンスの強度が落ちて、インサイドでイージーシュートを許した。

「自分たちが苦しい時間帯にも相手はシュートを決めてきた」というように、今野が得点を返しても岐阜女子の池田沙紀のドライブを止められず、点差は詰まらなかった。29-46と後半に失速し、最終スコア69-87で聖和学園は敗れた。

聖和学園

「成長して、日本代表として活躍したい」

今野は苦しみながらも19得点6アシストを記録し、エースの貫録を見せた。シュート成功率は50%を超えているが、それでも普段の今野のパフォーマンスを見たことがある者なら、苦しんでいた印象を受けるはずだ。そして今野も不完全燃焼だったことを認める。

「チームのリズムもいつもと違ったし、切り替えができないまま流れていってしまった。自分の中でリズムが崩れ、それでプルアップの精度も落ちました。自分の仕掛けるタイミングも悪く、すべてが噛み合わなかった感じです」

「注目していただいた中で自分のプレーをやりきりたかったんですが、最後はこういう結果になってしまってすごく悔しいです」と、言葉では悔しさを表したが、終始落ち着いてメディア対応をこなし、取り乱すことなく感情をコントロールしていた姿が印象的だった。

ルイビル大への進学が決まっている今野は、練習と勉強のため一度渡米。9月の入学に合わせて再びアメリカへと旅立つという。「アメリカは努力しないと通用しない世界ですし、まだまだできないことがたくさんあります。でも成長して、日本代表として活躍したいという思いがあるので、必死に頑張っていきたい」

ウインターカップの最後の試合は、やや苦い思い出となった。だがこうした経験は必ず、この先の糧になるはずだ。アメリカで揉まれ、日の丸を背負う今野の姿が見れる日を待ちたい。