取材・写真=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎

京都相手の屈辱的敗戦を『意識を高めるきっかけ』に変えて

前節の横浜ビー・コルセアーズとの第2戦、田臥勇太は今シーズン2番目に多い17得点を挙げてチームを84-69の大勝に導いた。得点だけでなく5アシストでターンオーバーなしと、安定感も群を抜いた。

だが、いつものことではあるが試合後の田臥はスタッツに関して素っ気ない。「個人の成績は二の次で、まずはしっかりチームが勝つことが第一優先なので。2連勝できて次の試合にも繋がる試合だったと思います」と振り返った。

その前の京都戦では屈辱的な大逆転負けを喫している。栃木ブレックスの誰もがそのことが頭にあった。「先週の悔しい負けを受けてどうチームが変わっていこうとするか、これから長いシーズン優勝目指していく上では大事なことなので」と田臥は言う。その意味では、前半で47-25と大差をつけてそのまま勝ち切ったこの試合も、後半だけを見れば37-44と相手のほうが上だったことが引っかかったようだ。

「同じシチュエーションなんです。20点近くリードした中で、結果的に後半は負けてしまっている。そこでリードをさらに広げていく、そんなに簡単ではないですけど、そんなメンタリティで挑めるかどうか。これからまた自分たちのチャレンジになっていきます」

これだけ突き詰めて考えるのも、彼がポイントガードとしてチームを動かす立場にあるからだ。「前回の敗戦を受けてどうすべきか、その一つとして、自分がコントロールしすぎてテンポを遅めてしまったりという反省がありました。アタックするメンタリティのバランスをしっかりと取らなきゃいけない、そう意識していました」

田臥は続ける。「1試合だけで変わるような簡単なことだったら、みんなやっています。ただ、それをやろうとするか、その意識を持つことが大事だと思います。この1週間は悔しい気持ちを持ちながら、悪かったところを見つめ直して練習に取り組めたので、これをいかに続けていくかですね。今回は勝てましたけど、これで満足することなんてできない。この意識を忘れずにやることが自分たちのチャレンジ、優勝できるかできないかを決める部分だと思っています」

自分だけではなくチームとしてその意識を持ち続けられるか。田臥はチームリーダーとしての立場でこう言う。「意識して言い続けます。自分がコミュニケーションを取って、みんなで共通理解をどれだけ持てるかだと思うので、それはしつこくやっていきます」

「プレーヤーとしてさらにモチベーションが持てた一年」

それでも、一つひとつの勝利にこだわって試合を進めていく中で、栃木がチームとして向上しているという手応えは感じている。「試合を重ねるほどにいろんなことができるようになっていくと感じながらやっています。新しく入った(竹内)公輔だったりジェフ(ギブス)だったり、落合(知也)はケガをしてますけど、勝つ試合も負ける試合もありますが、このメンバーでやりがいをすごく感じながらやれています」

少し気が早いが、五輪への挑戦やBリーグ開幕など大きな変化のあった2016年を田臥に総括してもらった。「Bリーグが開幕して、プレーヤーとしてさらにモチベーションが持てた年です。またどんどんバスケが好きになった2016年でした」

年内最後のゲームは今日と明日、愛知県体育館での名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦。「年内しっかり戦って、その勢いを持ってオールジャパンに挑みたい」と田臥は言う。「リーグでもトーナメントでも、しっかりチームとして成長できるように戦っていきたい」

まずは名古屋での2試合をしっかり戦って、2016年を良い形で締めること。田臥は高いモチベーションを持って、年内ラストマッチ2試合に挑む。