落合知也

3×3日本代表が初めてワールドカップ(当時は世界選手権)に参加したのは、2014年の第2回大会。落合知也は、この大会から日本代表に選ばれ、3×3に軸足を置いて世界と戦ってきた。今回、ウィーン(オーストリア)で行われたワールドカップで、日本代表は初めてグループリーグを突破。ブラジルに敗れてベスト12に終わったものの、一つの大きな成果を挙げた。ワールドカップを終えても、帰国したらすぐ次の大会に向かうという落合に、日本代表のここまでの戦いぶりと、3×3に懸ける思いをあらためて語ってもらった。

「世界のトップ12に入ったことは誇りに思っていいかなと」

──10年目のワールドカップで初めてのグループリーグ突破。落合選手のツィートにもありましたが、3×3を長く引っ張ってきて、感じ入るものがあったと思います。今回の結果をどう受け止めていますか?

プレーインには行ったのですが、ブラジルとの接戦を落とす形で負けてしまったので、終わった直後は悔しい気持ちが先行していましたけど、落ち着いて考えると今回はすごく充実したワールドカップでした。自分がここまでやってきた年月を思い返して、世界のトップ12に入ったことは誇りに思っていいかなと。もちろん満足はしていないですけど、最低限の仕事はできたかな、という思いです。

──連敗スタートの初日から気持ちを入れ直し、2日目に連勝したことでグループリーグを突破できました。

連敗して崖っぷちになって、僕も含めて全員メンタルはキツかったですけど、このチームは集まって2日練習して本番を迎えたぐらいだったので、試合を重ねれば成長してパフォーマンスも良くなるという感覚はありました。

──東京オリンピックの時にも感じたのですが、落合選手は3×3の経験の浅い選手にそれぞれの持ち味を出させて、足りないところを自分がカバーする意識でプレーしているように感じます。

そうですね。経験的にも年齢的にも自分の役割はメンバーの良さを引き出すことだと思っています。正直、僕がたくさん得点すれば勝てるかと言ったらそうじゃないですし、それよりもスコアラーのTK(トーマス・ケネディ)や保岡(龍斗)が効率良く、気持ち良く点を取るにはどうすればいいかを考えてセットプレーをコールするのが自分の仕事です。身体の強い佐土原(遼)と僕が2人で身体を張っていますが、佐土原も能力が高くてルーキーではあっても点は取れるので、自信を持って攻めるようにはいつも伝えています。

僕も自分のスタッツが伸びればうれしいですけど、でもチームが強ければそれでいいです。これまで自分が経験した本当に強いチームには、自分のスタッツなんか関係なくチームの勝利を最優先で考えられる選手がいて、そういう選手になりたいと思ってやってきました。ましてや日本代表ですから、限られた準備期間の中で結果を出す必要があるので。

落合知也

「3×3はまだまだ低い立場にあるという危機感があります」

──そういう意味では、ケネディ選手はハンガリー戦とモンゴル戦では大活躍でしたが、初日はやりづらそうでした。彼が本調子を発揮できるように、何かサポートしてあげたことはありましたか?

ずっと「打ち続けてくれ」とは言っていました。彼はあのサイズとフィジカルがあってシュートも上手いので、ディフェンスのポゼッションではビッグマンに僕が付いて彼になるべく負担をかけないようにするから、点を取ることにフォーカスしてほしいと伝えていて、良いタイミングが来たら彼でイージーな1点を取りに行くとかをチームで工夫して作戦を立てていました。

最初は自分のタイミングで打っても入らずに流れが悪かったんですけど、いずれ絶対に来ると思っていたし、TKは僕と同い年で、プロのキャリアも長いので、アジャスト能力が本当に高かったですね。あれだけシュートアテンプトが多いのにエゴがない、チームプレーヤーなのはすごいことだと思います。

──落合選手は黎明期からプレーを続ける3×3のパイオニアですが、日本代表で10年やってきて、東京オリンピックも経験して、3×3の見られ方や価値の変化をどのように感じていますか?

東京オリンピックの反響はものすごく大きくて、今でもその話題になることは結構多いです。僕自身にとっても価値のあるもので財産になったと思うんですが、それ以降はバスケ全体が盛り上がっている中でも3×3はまだまだ低い立場にあるという危機感があります。そうなると良い選手が「3×3をやりたい」とは思わない環境になってしまうので、やり甲斐の面でもお金の面でも、自分がもっといろんなことを変えていって、3×3の価値を上げていきたい思いがあります。

今回はTK、保岡に佐土原とBリーガーが代表に参加してくれたんですけど、3×3はコーチもいないし、個々が自分で解決しないといけない競技です。外国籍選手に託すことが多いBリーグに比べると責任は重いんですけど、自分が勝負を決めるというやり甲斐がすごく大きくて、今大会でも保岡がクラッチを決めましたが、それは5人制ではなかなか味わえないです。海外の選手と戦うことで選手としての自分の価値を高めて、それをまたBリーグに還元することもできます。そういうプレーヤーをもっともっと増やしていきたいですね。

落合知也

「この1年間しっかりと頑張って、絶対にパリに行きたいです」

──5年前に取材した時にも、落合選手は3×3を盛り上げたい、価値を高めたいと話していました。あの頃はまだBリーグの選手が3×3に来る例は少なかったし、3×3を取り巻く状況は確実に変わりつつあると思います。

そうですね。僕自身も今は『ALPHAS 3×3 BASKETBALL』の代表取締役にもなって、そういう観点で業界を見ての危機感もあります。それと同時にバスケットボールの盛り上がりの一端を担いたい、自分たちもそこをどんどん盛り上げていきたいという思いです。

難しいかもしれないですけど、5年前に話していたことのいくつかは実現できました。少しずつですけど変わっているし、今回のワールドカップのように成果も間違いなく出ていると思います。ただ、先ほども言ったように、やっぱりスポーツには勝たないと認めてもらえないところがどうしてもあります。だからこそ次の目標であるパリオリンピックの出場はすごく大事になります。

その価値は、自分自身が東京オリンピックに出たことで実感できました。自分のキャリアにとっても一番大きな大会でしたし、オリンピックでしか味わえないことはたくさんあると思います。だから今はオリンピック出場が最大の目標です。

じゃあそれに向けて何をするかと言えば、プロサーキットと呼ばれる海外トーナメントに参加して、自分のレベルアップとともにランキングを上げること。今回も帰国したらすぐマレーシアで『Challengers』という大会に保岡と一緒に出ます。僕と保岡だけじゃ限界があるので、もっと多くの代表に絡むメンバーがプロサーキットに出場できるような支援をやっていかなければいけない。やっぱり自分がフォーカスしているのは世界の舞台で戦うことで、それがパリに繋がります。この1年間しっかりと頑張って、絶対にパリに行きたいです。

──それでは、最後に応援してくれるファンの皆さんへメッセージをお願いします。

いつも応援ありがとうございます。今回、日本代表としては最高成績を残せて、少しずつでも前進している姿を見せることができました。ただ、代表でもプロサーキットもそうですけど、結果がすべてだと思っています。なので温かい目で見守ってもらうと同時に、結果が出なかった時は厳しい意見も出してください。今回も1日目に連敗して、批判のコメントも自分の目には入ってきましたが、それでメラメラ燃えたのもあります(笑)。

ファンの皆さんは本当に優しいんですけど、良い時は引き続き盛り上げてもらって、厳しい時は批判でも構わないので、3×3を気に掛けてもらえればと思います。もっともっとたくさんの人を巻き込んでいきたいので、是非一緒に3×3を盛り上げてください。