アーロン・ゴードン

第1クォーターに12得点「有利なマッチアップを見付けて、そこを攻める」

このプレーオフで第8シードからの快進撃を見せるヒートは、バックス、ニックス、セルティックスを相手にすべて敵地での初戦に勝ち、相手の出鼻をくじくとともに自分たちの士気を高めてきた。しかしジャマール・マレーはナゲッツにとって初進出となるNBAファイナルの初戦を終えて、「僕らが第1戦を落としたことがあるかい?」と不敵な笑みとともに語った。第1シードのナゲッツは、ホームの初戦を一度も落とすことなくここまで来ている。

開始3分にニコラ・ヨキッチのフリースロー2本成功で8-7と逆転して以降、ナゲッツはリードを守り続け、104-93の快勝を収めた。カギとなったのは試合序盤の攻防だった。ヨキッチとマレーのピック&ロールはバリエーションが多彩で、阿吽の呼吸からどちらがシュートを打って来るのか分からない。ヒートは試合前の時間すべてをこの対策に費やしたはずだが、全く止められない。フィニッシャー役となったのがアーロン・ゴードンだったからだ。

ヨキッチにダブルチームを仕掛け、動き回るマレーへの警戒も怠らないまでは良いとしても、『第3の男』まではカバーしきれない。ヨキッチがスクリーンを掛けに行くために上がってできたスペースに飛び込むゴードンにパスを合わせ、ゴードンはヘルプに来た選手がいてもサイズのミスマッチで押し切る。ヒートは良い守備から攻撃へ転じて波に乗っていくチームだが、得意のディフェンスが機能せずに後手に回った。

試合序盤のオフェンス面での活躍を「マジック時代のようだ」と言われた彼は「ナゲッツのバスケを分かっているかい? 僕らは有利なマッチアップを見付けて、そこを攻める。相手ディフェンスを見て、ここで勝負すべきたと感じたところを攻めただけなんだ」と語る。

マジック時代はエースだった彼は、ディフェンスにプライドを持つチームプレーヤーへと変貌しており、「マジック時代のようだ」との言葉には違和感があったのだろう。それでも「興奮したよ」と彼は言う。「相手のディフェンスを力で押し切るチャンスを周囲が作ってくれた。あとは自分にできるプレーをやるだけだった」

ゴードンはプレーオフに入り、ティンバーウルブズのアンソニー・エドワーズ、サンズのケビン・デュラント、レイカーズのレブロン・ジェームズと相手のエースとマッチアップしてきた。ディフェンスとリバウンドでナゲッツを支える、そのゴードンが第1クォーターだけでフィールドゴール8本中6本成功の12得点を挙げ、その後も『本職』のディフェンスのリバウンドでチームに貢献し続けた。

ナゲッツでエースを務めるのはヨキッチとマレーだが、ゴードンには何の問題もない。「僕は称賛されたくてここにいるわけじゃない。勝つためにいるんだ」と笑顔を見せる。「このチームの仲間と一緒にプレーできて本当に幸せなんだ。才能に溢れ、技術があり、バスケに情熱を持っている。僕がずっと求めていた環境だよ。自分が50得点だろうが無得点だろうが、チームの勝利に貢献できればそれでいいんだ」

ナゲッツにとっては初のNBAファイナル進出。大盛り上がりだったアリーナの雰囲気を思い出し、ゴードンは「今日の観客は最高だった」と称える。「国歌斉唱の時、僕は『NBAファイナルなんだ!』と思って最高の気分になったよ。ファンのみんなは僕らにエネルギーを与えてくれた。シーズンを通して素晴らしかったけど、今日はさらにレベルを上げたね」

「僕らは大舞台でもリズムを崩したりしないよ。ウチには1年を通して築き上げてきた基準があり、これほどの大舞台になるとその基準が生きてくる。いつも通りやればいいんだ」