「コーナーに立っていても意味はないと思ったからリムに走った」
第4クォーター残り3分、ジミー・バトラーのシュートを阻もうとしたアル・ホーフォードにファウルが宣告され、右コーナーの3ポイントラインを踏んでいたかどうか、ビデオ判定の結果はフリースロー3本。この日のシュートタッチが絶不調でも『プレーオフ・ジミー』はこの場面でフリースローを落とさない。3本すべてを決めて103-102とヒートがリード。シーズン終了までセルティックスに残された時間は3秒しかなかった。
絶体絶命。リスタートからマーカス・スマートの放ったミドルジャンパーがリムに当たって弾き出される。両チームの選手がそれを眺める中、デリック・ホワイトだけはゴール下に飛び込んでいた。落ちてくるボールを空中でキャッチし、残り0.1秒でシュートを放つ。これが決まって104-103とセルティックスが逆転勝ちを収めた。
ジェイソン・テイタムが会見場に現れたのは試合終了の瞬間からかなり時間が経った後だったが、彼は話し始める前にそのシーンを思い出し、つい数秒前に起きた出来事のように「ああ神様、まだ信じられない。クレイジーだ」と語った。スマートも同様で「デリックが稲妻のように飛び出して僕らを救ってくれた。信じられないプレーだった」と興奮を隠せなかった。
それでも当の本人であるホワイトは、いつもと変わらない表情で「ただただうれしかった。負ければ終わりの状況で、まだ家には帰りたくなかった。だからうれしかったんだ」と語った。
「マーカスのシュートを疑ったわけじゃないけど、コーナーに立っていても意味はないと思ったからリムに走った。そうしたら僕のところにボールが落ちてきたんだ」
彼は信じられないプレーでチームを救い、そのことに誰もが興奮していたが、彼自身はいつも通り謙虚で穏やかで、救世主ぶったりはしない。唯一いつもと違ったのは「すごい量のメッセージが来ている。スマホが爆発しそうだ」とジョークを言ったことぐらいだ。
0勝3敗となったチームがそこから3連勝して『GAME7』に持ち込んだのは3度だけ。絶体絶命の状況から3つ勝ったセルティックスは、ホームのTDガーデンで行われる『GAME7』に自信を持って臨む。テイタムは晴れやかな笑顔とともに言った。「ボストンに戻ることにこれだけ興奮したことはないよ!」