ケイレブ・マーティン

ゲイブ・ビンセント、マックス・ストゥルース、ケイレブ・マーティンが活躍

ヒートにはジミー・バトラーとバム・アデバヨという看板選手がいる。このプレーオフで12試合を戦っての平均プレータイムはバトラーが39.5分、アデバヨが35.2分と30分超え。では、彼らに続くのは誰だろうか?

このチームをよほど見てきたファンしか、正確には答えられないだろう。29.9分のゲイブ・ビンセント、29.8分のマックス・ストゥルース、27.7分のケイレブ・マーティンだ。その後にシックスマンとして再ブレイクしたカイル・ラウリーの25.7分、頼れるベテランのケビン・ラブの20.3分と続く。

バトラーとアデバヨが主役を演じるチームで、その脇を固めるビンセント、ストゥルース、マーティンはいずれも、NBAでの4シーズン目を迎えたドラフト外の選手だ。バトラーやアデバヨとはスター性こそ違えど、タフにそしてクレバーに戦うヒートのカルチャーを体現するという意味では彼らも同じ。42歳の『伝説のキャプテン』であるユドニス・ハズレム、そしてダンカン・ロビンソン、ヘイウッド・ハイスミス、オメール・ユルトセブンもドラフト外の選手だ。

どのチームにもドラフト外で加入しながら努力して評価を勝ち取り、地位を得た選手はいるものだが、ヒートほどその数が多いチームはいない。なおかつカンファレンスファイナルまで勝ち進んでいるのは驚くべきことだ。

『Sun Sentinel』の取材にストゥルースは「僕らはそのことへの怒りの感情を常に持っている。プレーで自分たちの居場所がここにあると示したい」と言い、ビンセントは「ドラフトで指名されたかどうかがバスケで上手いか下手かを分けるわけじゃない。このチームはそんな僕たちを辛抱強く信じてくれる」と語る。

タイラー・ヒーローのケガを受けて先発ポイントガードを務めるビンセントは言う。「ドラフト外の選手が求めるのはチャンスだ。ドラフトで指名を受ければ2年か3年の契約を結び、収入が保証されるけど、ドラフト外の選手に与えられるチャンスは10日とか1日とか。それでもチャンスが必要で、誰かが僕を信じてくれて初めて、自分の価値を証明することができる」

彼らはどんなチャンスも無駄にはしない。どの試合でも『GAME7』のような気持ちで臨み、勝利に貢献することで自分たちの価値を示そうと全力を尽くす。プレーオフになれば特に『プレーオフ・ジミー』の存在感が際立つが、彼らの健闘は無視できない。セルティックスとのカンファレンスファイナル第1戦、ビンセント、ストゥルース、マーティンの3人が15得点を記録。3人合わせてフィールドゴール27本中16本成功(59.3%)と高確率でシュートを決めた結果、ヒートは123-116で敵地での初戦に勝利できた。

シックスマンとして攻守に奮闘するマーティンは、昨シーズンのポストシーズンも役回りは同じだったが得点を4.5から11.2へと大きく伸ばしている。バトラーやアデバヨがダブルチームを受ければ、彼が空く。

「僕は警戒しなくても大丈夫ってことだ」とマーティンは言う。「でも、それが彼らのゲームプランであり、僕らのゲームプランだ。相手のディフェンスの動きを見て学び、何度も何度も練習する。僕が絶対にやってはいけないのは、チャンスで躊躇すること。思い切り良くプレーしていれば、結果は出るものさ」

セルティックスとの初戦では、第4クォーターの勝負どころでアデバヨからのキックアウトを受け、3ポイントシュートを打つと見せかけてドライブで切り込んで得点を挙げ、バトラーからキックアウトのパスを受けた時にはキャッチ&シュートを確実に沈めている。「躊躇せず打って決めることが、彼らを一番助けることになる」とマーティンは語る。

ヒートを率いるエリック・スポールストラは先日、多くのチームが簡単にヘッドコーチを入れ替える風潮に苦言を呈した。長期的視野を持たずに強化方針のリセットを繰り返すチームにおいて、ドラフト外の選手が正当な評価を得て、数年がかりで実力を伸ばすのは不可能に近い。

スポールストラは言う。「正しいか間違っているかは別として、それが我々の哲学なんだ。ウチにはUD(ハズレム)というお手本がいるから、難しい話じゃないよ。我々は、大きな夢を持って挑戦したいと願う選手にとっての居場所でありたい」

第8シードからカンファレンスファイナルまで勝ち上がってきたヒートの骨太な強さは、彼らドラフト外の選手によって支えられている。