ジョック・ランデール

「彼がいつも悪いプレーをしているという話はフェイクだ」

サンズはナゲッツとのシリーズで連敗スタートを切り、司令塔のクリス・ポールが鼠径部のケガで戦線離脱する苦境に立たされていた。それでもホームに戻った第3戦では、ほとんどの時間でリードを保って121-114の完勝を収めている。デビン・ブッカーがフィールドゴール25本中20本成功の47得点と絶好調で、ケビン・デュラントはシュートタッチが悪かったが16本のフリースローを引き出して39得点、9リバウンド8アシストも記録と、2人のエースがチームを引っ張った。

ベンチユニットの奮起も大きかった。クリス・ポールに代わって先発したキャメロン・ペインはブッカーとデュラントの得点力を上手く引き出したし、TJ・ウォーレンもディフェンスで奮闘。そして2人のエースに続くキーマンとなったのがジョック・ランデールだ。

ランデールはオーストラリア出身の27歳。NBAのドラフト指名を得られず、ヨーロッパやオーストラリアでプレーしながらチャンスを待ち、昨シーズンにスパーズでNBAデビューを果たす。2年目の今年はホークス経由でサンズにトレードされ、ディアンドレ・エイトンに続く2番手のセンターとしてプレーしている。

高さと強さのエイトンに対し、ランデールの持ち味は激しさと運動量。クリッパーズとのファーストラウンドではほとんど出番がなかったが、ナゲッツとのシリーズでは『対ニコラ・ヨキッチ』で存在感を見せている。エイトンの高さとパワーはヨキッチのスキルにいなされてしまうが、ランデールの激しさと執拗さはヨキッチにストレスを与えられる。

ランデールは22分のプレーで6得点9リバウンドを記録。そのアグレッシブなプレーが称賛される一方で、ファウルトラブルもあり26分のプレーに留まったエイトンには失望の眼差しが向けられた。サイズとパワーがある反面で動きは遅く、周囲に生かされて初めて活躍できる選手であり、「クリス・ポール抜きでは何もできない」と思われている。これはエイトンに限らずビッグセンターの常で、ヨキッチとジョエル・エンビードが例外なのだが、エイトンはファンやメディアから常に疑われ、ランデールが称賛されるような機会があればエイトンへの批判も必ずセットで語られる。

ランデールはこれに我慢ならなかった。エイトンの出来が悪かったのを君が救った、というニュアンスの質問をした記者に対し、「DA(エイトンの愛称)が誹謗中傷に晒されるのをただ黙って受け止めるわけにはいかない。彼がいつも悪いプレーをしているという話はフェイクだ」と語り始めた。

「はっきり言って僕はその類の話を聞くのにうんざりしている。彼はレギュラーシーズンで何度も30得点とか20リバウンドを記録してきた、チームにとって大事な戦力だ。このビジネスに批判は付き物だし、それが君たちの仕事かもしれないけど、じゃあ僕が思っていることを語るのも自由だよね。DAは僕らにとって素晴らしい存在だ。バスケ選手であれば誰でも上手くいかない日はある。しかもマッチアップする相手は2度のMVPを取った選手だよ」

ランデールの最も大きな不満は、エイトンが自分勝手で怠惰な選手だと見なされていることだ。「DAはベンチでもロッカールームでもポジティブな要素がたくさんあるのに、それは無視されてネガティブなことばかり強調されているように感じるよ。批判が彼の奮起をうながすこともあるかもしれないけど、放っといてくれと思う」

そしてランデールは、エイトンと3番手のセンターであるビスマック・ビヨンボが、ヨキッチのプレーの傾向を事細かに教えてくれるおかげで良いプレーができたと語った。

「そうやって良いプレーができた時、DAはベンチから立ち上がって拍手をして僕を盛り上げてくれる。君たちが言うようなワガママな選手だったら、そんなことはしないはずだ。それは今回だけじゃなくシーズンを通して起きていることだ。ちゃんと見てほしい」

ランデールは自分の活躍について多くを話そうとはしなかったが、それでも第3戦に臨むメンタルは「無理なことをやろうとせず、平常心でベストを尽くす」だったそうだ。勝負の懸かったクラッチタイムにプレーすることも「NBAではその機会が少ないけど、オリンピックみたいなビッグゲームの経験もある。だから何の問題もなかったよ」と語っている。

ランデールを始めベンチユニットの活躍は、サンズに新たな勢いを与える。そして今回のエイトン擁護はチームの結束をさらに強めるはずだ。