「今節は自分の中ではチャンスととらえていました」
3月から続いた9連敗を4月15日のアルバルク東京戦でストップさせたファイティングイーグルス名古屋は、前節も名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に勝利して今節を迎えた。残り試合も少なくなってきている中で、1つでも勝利してシーズンを締めくくりたかったが、今節は群馬クレインサンダーズに連敗を喫した。
シーズン中盤以降の苦しいチーム状況と同様に、もがき苦しんだシーズンを送っていたのが今シーズンよりチームに加入した葛原大智だ。FE名古屋は今シーズンB1に昇格するにあたって、昨シーズンから大きく編成を変えなかった。その中でB1経験者として期待され、新しく加入した葛原だったが、前所属のレバンガ北海道で得ていた20分近い出場時間に比べると、FE名古屋では平均6分45秒と思うような出場時間を勝ち取れていなかった。
そんな葛原だが、4月30日に行われた群馬との第2戦で今シーズン最長の27分9秒の出場時間を得て、シーズンハイとなる7得点を挙げた。主力であるルーク・エヴァンスと野﨑零也が欠場となり穴を埋めるべく出場となったものの「今節は自分の中ではチャンスととらえていました。勝利できなかったですが、プレータイムは獲得できましたし、良い感触だったので残りの試合を良い形で終わるためのステップは踏めたのかなと思います」と手応えを語った。
実際、川辺泰三ヘッドコーチも「チームの日本人選手の中ではディフェンスが良く、インテンシティが高い選手」と評価するように、八村阿蓮やアキ・チェンバースといったフィジカルで勝る相手にも身体を張ったディフェンスで奮闘した。さらに川辺ヘッドコーチは「移籍してきてチームのディフェンスルールの違いに戸惑いがありました」と、葛原の置かれていた状況を理解している。
「ブラさずにオンリーワンになれるようにディフェンスをやっていきたい」
昨シーズンの先発選手が今シーズンも変わらず先発を務めるFE名古屋は、葛原が加入した時には既にチームスタイルが確立していた。「完成しているチームに飛び込むのは難しく、もがいたシーズンでした。ここで腐ってしまったら次のステップにも行けないので、その中で自分がどうしたらプレータイムを獲得できるか考えていました」と話すように、なかなかチームにアジャストできない自分との戦いが続いたシーズンだった。
そんな中でもこの試合を通じて「リバウンドやルーズボールを徹底して、それが今日の出場に繋がったと思います。どこのチームでもディフェンスができる選手は活躍できますし、コーチの信頼も勝ち取れます。それをブラさずに、オンリーワンになれるように今後もやっていきたいです」と、成果と今後をポジティブにとらえている。
さらに、新しい環境に飛び込み苦しんだからこそ自分の持ち味がはっきり見えたシーズンになったとも語った。「忍耐力がつきました。なんで出られないんだろうという葛藤もありましたが、自分の持ち味であるディフェンスをやり続けたのが今シーズンの収穫だと思います。シュートは波がありますが、ディフェンスは気持ちを前面に出していけば波がないので、アグレッシブにやることがプレータイムに繋がります」
プレーヤーとして試合に出てチームに貢献したいという気持ちがあるのは当然のことだ。しかし、プレータイムを得られなくても、環境を変えて違った視点を持つことで、見えなかった自分が見えることもある。葛原にとって思い描いたシーズンとは違うものになったかもしれないが、最終盤に差し掛かり出場機会を得たことで、新たな発見があったに違いない。今シーズンの残り2試合、そして今後の葛原の活躍に期待したい。