ステフィン・カリー

「シュートチャンスを見付けるために積極的にプレーできた」

『GAME7』はこの業界で最も刺激的な言葉だ。そしてキングスとウォリアーズの『GAME7』は、その言葉が持つ重みに見合ったエンタテインメントとなり、ウォリアーズが120-100で勝利した。

ドレイモンド・グリーンは「僕たちも『GAME7』をそれほど経験しているわけじゃない。レアな状況には、レアな選手がレアなことをする」と言った。ウォリアーズにとってレアな選手とはステフィン・カリーであり、レアなこととは50得点だった。

前半を終えて56-58。点差は2点だがリードしているキングスの方が良いバスケをしていた。ディアロン・フォックスとドマンタス・サボニスのピック&ロールとそこから展開するチームオフェンスがウォリアーズのディフェンスを振り回していた。前半のカリーはフィールドゴール15本中8本成功の20得点を挙げるも孤軍奮闘で、彼の勢いが止まればキングスが一気に試合をモノにしそうな気配だった。

それでもカリーの勢いは止まらなかったし、ウォリアーズは『王者』らしい勝負強さを見せた。我慢比べの局面でカリーに続いて違いを作り出したのはケボン・ルーニーで、第3クォーターだけで7つのオフェンスリバウンドを獲得し、チームがシュートタッチに苦しむ中でセカンドチャンスを作り続けた。ルーニーは試合を通じて21リバウンドを記録。ゲームチェンジャーの役割を果たした。

そんな中でキングスの集中力が途切れる。第3クォーターのラストプレー、クレイ・トンプソンの3ポイントシュートに不用意に飛び込んで4点プレーを与えてしまい、第4クォーターに入るとサボニスのハンドオフを経由しない個人の無理な攻めが続き、シュートを外せば外すほど焦っていく悪循環に陥った。第4クォーター開始から6分で4点しか奪えず、その間もカリーの超絶オフェンスショーは続き、残り6分を切ったところで107-85と決定的な点差がついた。

カリーは38本ものシュートを放ち、うち20本、3ポイントシュートは18本中7本を決めて50得点を記録。これは彼にとってプレーオフでのキャリアハイで、GAME7におけるNBAの最多得点となった。

「本当に楽しいシリーズだった」と、試合後の会見でカリーは話した。「初戦からGAME7まで厳しい戦いの連続で、試合ごとに様々なアジャストがあった。第6戦で勝った彼らはスモールラインナップを続けるだろうから、僕らはどのように自分たちのペースでプレーし、どう攻めるかを考えた。ピック&ロールを多用して良いスタートを切り、良いオフェンスから良いディフェンスへと繋げた。僕がこれほど多くのシュートを打てたのは相手ディフェンスの穴を見付けることができたから。シュートチャンスを見付けるために積極的にプレーできたのが良かった」

間違いなく彼がヒーローだったが、チームでの勝利であることを彼はこう強調している。「僕がボールが動き始めたらただバスケを楽しむだけ。お互いを信頼し、コート上の全員が素晴らしいエネルギーを出した。ベンチでのコミュニケーションや団結力も素晴らしく、すべてが繋がっていたんだ。そうした状況が整った時は、良い結果が出るものさ」

「僕らには華やかなオフェンスがあるけど、重要なのはディフェンスだ。シュートを決めるだけじゃなく、ディフェンスを2つ3つと連続で成功させることで勢いが持続する。ディフェンスが機能すれば試合を通じて観客のテンションを上げずに済む。敵地での試合では特に重要なんだ。今日の出来はシリーズで最高だったと思うし、素晴らしいタイミングでステップアップできた」

実際、目立つのはカリーの得点ラッシュであっても、チームとしての出来も素晴らしいものだった。例えばクレイ・トンプソンは3ポイントシュート10本中成功わずか2と試合を通じてシュートタッチに苦しんだが、35分の出場で得失点差はカリーの+25を上回る+30と、しっかりとチームに貢献していた。

歴史に残るパフォーマンスを見せたカリーだが、彼は品行方正なヒーローではない。試合が決した残り2分半にプレーが止まると、興奮した表情でボタンを押すパフォーマンスをしてキングスファンを煽った。これはキングスが躍進のシーズンを通して行ってきた『ライト・ザ・ビーム』(ヒーローインタビューの最後にボタンを押すと、ゴールデン1センターの天井から空へと紫色のレーザーが打ち出される)を揶揄したものだ。

「僕なりの楽しみ方なんだ」とカリーは笑顔で語った。「そこに深い意味はない。ただ、僕らが負ける姿を見たい人が多いのは分かっていて、それでも僕らは高いレベルでのプレーを続けて、まだまだ強さを証明するつもりだということさ」