ディアロン・フォックス

「チームが僕を良いポジションへと導いてくれる」

キングスには長らく負け続けた歴史がある。その固定観念が強い人にとって、ディアロン・フォックスの最優秀クラッチプレーヤー受賞は、『オフェンスの勢いだけで勝ち上がってきた経験不足の若いチーム』という誤解を悪化させるかもしれない。

しかし、ほとんどの人はウォリアーズとのファーストラウンド最初の2試合のパフォーマンスを見て、キングスとフォックスの本当の実力を信じ始めていることだろう。

最優秀クラッチプレーヤー賞にはヒートのジミー・バトラー、ブルズのデマー・デローザンとフォックスの3人がノミネートされ、フォックスが100票のうち91票を集めた。

受賞が発表された『TNT』の特番にオンラインで出演したフォックスは、クラッチタイムでの勝負強さについてこう説明している。「僕はいつも失敗を恐れるなといろんな人に伝えている。すべてのシュートが決まるわけじゃないけど、チームメートやコーチが僕に良いチャンスを与えてくれる。だから僕は自信を持ってビッグショットを放つんだ」

受賞が発表されたのは現地4月18日。ここまでプレーオフのファーストラウンドでウォリアーズに2戦2勝を挙げており、チームもフォックスも絶好調だ。それでもヘッドコーチのマイク・ブラウンが「ここからの一歩一歩が大変なんだ」と繰り返すように、フォックスにも油断はない。

「やっぱりレギュラーシーズンとプレーオフではフィジカルの強さが全然違う。その中で自分らしいプレーをやり続けることが大事だと思う。ステフ(ステフン・カリー)のような選手とのシュート勝負になるのは避けたいけど、このリーグでポイントガードをやる限りはどの試合でもすごい才能を持った選手と対戦しなきゃいけない。でも、さっきも言ったようにチームが僕を良いポジションへと導いてくれるから、僕は誰と対戦しても自信を持って向き合えるんだ」

受賞の喜びを一番に伝えたい相手は誰かと問われて、フォックスは笑顔で「妻だね」と答えた。「普段からいつも一緒で、僕が受賞を聞いた時に一緒に聞いているから言う必要はないのかもしれないけど、でも彼女に伝えたい」

今のフォックスはチームと自分の実力に揺るぎない自信を持っている。NBAキャリア6年目にして初めてのプレーオフで未知数な部分が大きかったが、初戦でカリーとのエース対決を制する38得点、続く試合でも24得点を挙げてチームを連勝に導き、今回の最優秀クラッチプレーヤー受賞でその自信はさらに強くなるだろう。

経験不足は事実としても、他のどのチームよりも勢いがあるのもまた事実。今回のプレーオフで台風の目になりそうなキングス、そしてフォックスから目が離せない。