大崩れせずに接戦のまま終盤に持ち込めば、フォックスが決めてくれる
42勝を超えたキングスは2005-06シーズン以来のシーズン勝ち越しを決めました。当時は5シーズン連続で50勝以上を挙げた直後で、まさか17年も低迷が続くとは想像もできませんでした。2008-09シーズンに17勝65敗と大きく負け越して以降はドアマットチームでしたが、ドラフトロッタリーに外れ続けるなど運もなく、チーム作りの失敗を続けてきました。そのキングスが長きに渡る低迷から抜け出し、西カンファレンス2位と大躍進を遂げています。
開幕こそ4連敗で始まったものの内容は悪くなく、シーズンの早い段階で選手を見極め、戦い方が整備されると上昇気流に乗りました。当初はディフェンス力を重視する考え方でしたが、結局は例年通りオフェンスに振り切った戦い方に落ち着いており、リーグトップの120.9得点に対してリーグで3番目に多い118.2失点と、常に派手な打ち合いを展開しています。
オフェンスについては昨シーズンのトレードで加入したドマンタス・サボニスを中心に、新加入のケビン・ハーターやマリーク・モンク、そしてルーキーのキーガン・マレーがハンドオフやギブ&ゴーなどオフボールでの連動するプレーを使う選手が増え、アシスト数はリーグ3位の27.1と人とボールが動くオフェンスに変化しました。ここにディアロン・フォックスとハリソン・バーンズの個人アタックも混ざって得点パターンが多彩になりました。
一方でディフェンスにも明確な変化があり、トータルでの失点は増えながらも、速攻や3ポイントシュート、セカンドチャンスでの失点は減っています。これらは点差が開きやすい失点パターンであり、ディフェンス力そのものは低くてもリスクを抑えることを重視した戦略です。同様にスティールやブロックが減ったもののチャージドローが増えるなど、ボールを奪い取ることよりも粘り強く対応することで、大崩れしないことを目指したと言えます。
実際、シーズン前半のキングスは試合開始直後や後半開始直後など、一般的には取らないタイミングでタイムアウトを取ることが多く、その多くはゲームプランとは違うディフェンスが実行されたことで修正のためのタイムアウトでした。『チームとして何をすべきか』が定められた今シーズンのキングスには、これまでになかった規律がもたらされています。
そして大崩れせずに接戦のまま試合終盤に持ち込むことさえできれば、エースのフォックスが試合を決めてくれます。キングスは残り5分でプラスマイナス5点差以内のクラッチタイムで24勝15敗と大きく勝ち越していますが、通常はディフェンスの圧力が高まり点が取りにくくなる時間帯にオフェンス力をさらに向上させて打ち勝っています。
クラッチタイムの得点11.8のうち、5.2点と半分近くをフォックスが奪っており、それもフィールドゴール成功率57%と驚異的な高確率で決めています。加えて苦手だったはずのディフェンスでも相手エースにハードなプレッシャーを掛け、試合をひっくり返すスティールを何度も記録してきました。試合終盤のフォックスは攻守に手が付けられないプレーを見せており、リーグ最強のクラッチプレーヤーへと進化しています。
勝つほどに自信がみなぎるかのように、今のキングスはオフェンス勝負の大味な試合展開ながら焦ったり迷ったりすることなく『最後は自分たちが上回る』と確信したような戦いぶりを見せています。チームとして大きく成長しているシーズンですが、そこにはケガによる離脱が少なかった事情もあり、主力の中で最も多いフォックスでも7試合の欠場に留まっており、継続したチーム作りにより連携が深まってきました。
プレーオフ進出が決まるのも時間の問題だけに、これからは『プレーオフで勝てるかどうか』が目標となります。17年もプレーオフに出れていなかったチームが『その先』を考えることになるとはシーズン前には想像もつきませんでしたが、自信に満ちた戦いぶりで勝ちパターンが確立されているだけに、さらなる進化に期待したくなります。