マーベリックス戦でキャリアハイの24得点、ジャ・モラント不在のチームを救う
グリズリーズはスティーブン・アダムズを右膝のケガで欠いており、さらに不祥事でエースのジャ・モラントがチームを離れている。それでも、モラントが不在となってから2連敗に続いて2連勝と、『誰かが抜ければ、別の誰かがステップアップする』の言葉を実践し、チームの勢いは落ちていない。
現地3月11日のマーベリックス戦では、ルーキーのデイビット・ロディーが決定的な働きをした。キャリアハイの24得点を記録し、しかも6点ビハインドで迎えた第4クォーターにそのうち17得点を固め、鮮やかな逆転勝利を演出している。
ロディーは昨年のNBAドラフトでセブンティシクサーズの1巡目23位指名を受け、すぐにグリズリーズにトレードされた。ディロン・ブルックスやジャレン・ジャクソンJr.の控えという立場でシーズン前半には多くのチャンスを与えられたが、今年に入ったあたりから若手に経験を積ませるよりチームの完成度を上げることが優先されて少しずつ出番が減っており、それはブランドン・クラークがアキレス腱のケガで戦線離脱しても変わらなかった。
20分近くあった平均プレータイムが次第に落ち、このところは数分しかチャンスがないことも。2日前のウォリアーズ戦も彼の出場は6分だけ。それでも6得点3リバウンドと限られた機会を生かそうと努力していた。
前半で7得点を挙げていたロディーは、第3クォーター残り1分で投入された。「チームに足りていないのはエナジーだった。」と彼は言う。「第4クォーター開始前に(テイラー)ジェンキンスコーチがハドルに入って来て、『第3クォーターは終わりだ。激しく行こう』と言ったんだ。新しいクォーターでグリズリーズらしいエナジーを自分が発揮するんだ、と思ったよ」
身長こそ193cmと高さはガード並みでも体重115kgと筋肉の塊のような『ガテン系』のロディーがエナジーを発揮すると迫力がある。高校までバスケに加えてアメフトでクォーターバックをやっていた、という経歴も納得の身体つきだ。
モラントがいれば彼にボールを集めたかもしれないが、今のグリズリーズはボールをシェアし、ロディーもチャンスが来れば臆することなくキャッチ&シュートを狙っていった。第4クォーターに入ってデズモンド・ベインとルーク・ケナードからのアシストをきっちり得点に繋いでリズムに乗ると、3ポイントシュートを2本連続でヒットさせる。そしてティム・ハーダウェイJr.の一瞬のファンブルを見逃さずにスティールからワンマン速攻を決めた。
自らのハッスルがチームに勢いをもたらし、112-108の逆転勝利に繋がったが、ロディーはそれを「まずはディフェンスで相手を止めたことが大きい。そこからトランジションに持ち込めたんだ。同点に追い付くまでにはオフェンスリバウンドも大きかったね。でも、本当にディフェンスに磨きが掛かって、良い流れを作れたと思う」と、あくまでディフェンスが第一だったと語る。
指揮官ジェンキンスは「彼はチームに火を付けた」とロディーの活躍を称える。結局、ロディーは第3クォーター残り1分に投入されて、試合終了までコートに立ち続けた。キャリアハイの24得点の活躍は、単なる1勝に留まらず、モラント不在で暗くなりがちなチームの雰囲気を好転させるものだった。
「僕はこれまでの人生でずっと過小評価されてきた。だからこそ、今こうして最高の舞台でチャンスに恵まれていることに感謝したい」とロディーは言う。「コーチングスタッフやゼイビアー(ティルマンSr.)のようなベテランが助けてくれている。サンティ(アルダマ)、ディロン(ブルックス)、デズ(デズモンド・ベイン)もね。若手はみんな彼らの経験から学んで成長し、チャンスが来ると信じて準備しているんだ」
そしてロディーは「試合が終わってから慌ただしくて、まだスマホをチェックしていないんだ。きっとメッセージがすごく届いているよね」とルーキーらしい一面も垣間見せ、そそくさと会見場を後にした。