PJ・タッカー

ヒートは彼を高く評価するも、好条件を提示したシクサーズに移籍

PJ・タッカーはディフェンスの職人で、決して派手な選手ではない。ジェームズ・ハーデンをエースに擁するロケッツで彼はインサイドの守備を引き締め、「ハードワークをこなす選手を熱烈に支持してくれる彼らのためにプレーしている」とヒューストンのファンとの強い繋がりを持ち、ロケッツで現役を終えるつもりだった。

しかし、ハーデンをトレードして解体に向かったロケッツに彼の居場所はなくなり、2020-21シーズン途中にバックスに移籍した。ここで彼のエースキラーとしての能力がクローズアップされ、特にケビン・デュラントに対する執拗なディフェンスが評価されることに。結果として彼がバックスの『ラストピース』となり、NBA優勝を勝ち取った。

その年のオフにはヒートと契約を結ぶ。全員がハードワークするヒートのカルチャーに彼はすぐ馴染み、3&Dとして活躍してチームのカンファレンスファイナル進出に貢献。指揮官のエリック・スポールストラも「ロッカールーム全員の士気を高められる。ウチの土台のような選手」と称賛された。

それでも昨夏、タッカーは2年契約のプレーヤーオプションだった2年目を破棄してセブンティシクサーズに移籍した。『Miami Herald』の取材に応じたタッカーは「ヒートは契約延長交渉に時間をかけようとした」と語る。

「正直に言えばヒートに残りたかった。僕の家族は今もマイアミで暮らしている。ヒートで引退するつもりだったけど、上手くいかなかったんだ」

ヒートが提示した3年2650万ドル(約34億円)に対し、ロケッツ時代のGMだったダリル・モーリーが編成を取り仕切るシクサーズは3年3200万ドル(約42億円)をオファーした。すでに37歳の彼にとっては破格の条件で、断れるものではない。すでにハーデンは前シーズン途中に合流済み。ロケッツで逃したNBA優勝をつかみ取るプロジェクトにタッカーも加わることになった。

シクサーズでも彼は良いインパクトをもたらしている。チームの主役はあくまでジョエル・エンビード、ハーデン、タイリース・マクシーだが、ハードなディフェンスでチームを下支えしている。最近ではスモールラインナップのセンターに入り、酷使されがちなエンビードに適切な休憩を取らせる大事な役回りもこなす。

「これまでとは違う役割でも、それがチームに必要ならば何だってやるつもりだ。毎試合で役割が変わるとしても問題ない」と、タッカーは『職人』としての矜持を語っている。

シクサーズは現在39勝21敗で東カンファレンス3位と堅調な戦いぶりを見せている。一方のヒートは33勝29敗とやや苦戦が目立つ。その両者は現地3月1日にマイアミで対戦する。タッカーにとっては移籍後初めてのマイアミでの試合。在籍わずか1シーズンだったが、自分の価値を高めたマイアミでどのようなパフォーマンスを見せるのかが楽しみだ。