張本天傑

文・写真=鈴木栄一

「ディフェンスの強度を落としたくなかった」

バスケットボール男子日本代表は、先週末にカタールとカザフスタンに連勝。今回の2試合は八村塁、渡邊雄太の2大エースを欠いていたが、それでもしっかりと勝ち切ったことはチームの底上げができていることを示しているだろう。

ニック・ファジーカスという絶対的なビッグマンがいるにせよ、八村と渡邊が揃って不在であることから、少なくともインサイド陣でもう1人ステップアップする選手が求められていた。その役割を担ったのが張本天傑だ。ワールドカップ予選の序盤4試合のうち3試合で、張本は10分以上のプレータイムを得てローテーションの一員となっていた。それがWindows3では最終メンバーの12名から外れ、Windows4では12名には残ったが出場機会がなかった。

代表での存在感が薄れつつあった張本だが、今回の2試合では4番ポジションの控えとして繋ぎ役をこなすことで日本の連勝に貢献した。カタール戦では20分出場、8得点6リバウンドを記録すると、カザフスタン戦でも14分の出場で5得点2リバウンド。数字の面では目立っていないかもしれないが、身体を張った守備でインサイドを支え、後半には貴重な3ポイントシュートを沈めるストレッチ4の本領を発揮した。

「まずはディフェンスで、相手の17番を抑えることが最優先でした。とてもシュートが上手い選手で、そこを意識して試合に入りました」と、カザフスタン戦を振り返る張本は、ファウルアウトについても激しい守備を貫いた結果と捉えている。

「ファウルが4つになってもディフェンスの強度を落としたくなかったので気にしていなかったです。自分がファウルアウトになっても代わりの選手はいるので、アグレッシブに行くだけでした」

張本天傑

「この経験を個人の成長にもっと繋げていきたい」

「チャンスさえ与えられれば結果を残せる自信はあったか?」というこちらの問いには「そういう感じですね」と答えた張本だが、これまでの地道な積み重ねは確固たる自信になっていた。

「これまで国際大会のメンバーにずっと入れさせてもらっていて、ある程度の経験は積んできたつもりでした。それを発揮でした2試合だったと思います。今回は雄太と塁がいないことで、インサイドがちょっと薄くなっていました。2人の分をカバーできるように日々の練習からしっかり努力してきたので、そこを見てもらって使ってもらえたのはうれしかったです」

自力でのワールドカップ出場が可能となるグループ3位浮上を果たした日本代表とともに、今回のWindow5は張本にとっても「求められたことを徹底してやれる力があることはアピールできたと思います。この経験を個人の成長にもっと繋げていきたい」と実り多いものとなった。

『天下分け目の決戦』となるWindow6は来年2月の開催。アメリカではシーズン中であるため、八村と渡邊の招集は現実的にはかなり難しいと見るべきだろう。日本代表が歴史を変えるためには、貴重なインサイド要員として張本の力が引き続き必要となってくるのは間違いない。そして、彼にはその期待に応えられる実力があることを証明した今回の2試合だった。