キーガン・マレー

開幕からパワーフォワードの先発に定着、キングスを上位に導く

1巡目4位指名でキングスに加入したキーガン・マレーは、アップダウンは激しくとも順調なルーキーシーズンを送っている。開幕からキングスのパワーフォワードとして先発する彼は、NBAデビューからの5試合で17.4得点を挙げる上々のスタートを切ったが、12月には3ポイントシュート成功率が27.0%に落ち込んで、得点も8.0と急落。年明けに再び調子を上げて現在に至る。

アップダウンは激しいが、安定したパフォーマンスはベテランがやればいい。ルーキーの仕事はアグレッシブにプレーして、すべてを成長の糧とすることだ。マレーは苦しい時期もスタメンを守り、主力としてチームに貢献し続けている。その結果、2006年以降プレーオフに進出したことのないキングスが29勝22敗、西カンファレンスの3位につけているのだから、ルーキーの貢献としては十分だろう。

「特にシーズン序盤はリズムをつかむのに苦労したけど、ただひたすら走り続けようとした。チームには助けてもらったし、勇気付けてもらった。苦しかった12月に自分のやり方を見いだせたような気がする」とマレーは言う。

個人としてもマレーは2カ月連続で西カンファレンスの月間最優秀新人選手に選ばれ、NBAオールスターウィークエンドのライジングスターズにも選ばれた。ここまでのマレーのスタッツは12.1得点、4.5リバウンド、1.0アシストで、東の最優秀新人であるマジックのパオロ・バンケロの20.5得点、6.5リバウンド、3.6アシストに大きく見劣りする。だが、個人のスタッツではなくチームの勝利で言えばマレーが上回り、彼自身もそのことに誇りを持っている。

キングスにはプレーメーカーのディアロン・フォックスだけでなくセンターのドマンタス・サボニスもオンボールで持ち味を発揮するタイプで、マレーにはオフェンスを停滞させないオフボールでの動きとシュート力が求められる。スクリーンとハンドオフ、ミドルレンジでのプルアップもしくは3ポイントシュートを狙っての味方との連動、そしてバックドアのパスを呼び込むカットの動き。これらはスタッツには表れにくいが、キングスのバスケを機能させる上で大事な役割だ。

3ポイントシュート成功率は41.3%で、これは今シーズンのルーキーでは最も高い数字。マレーはオープンであれば迷わず3ポイントシュートを打ち、そうでなければボールを動かしてチームの次のアクションを引き出すポジションへと移動する。こうして相手ディフェンスのズレを作り出し、それを広げて、チームに良いチャンスを生み出していく。

ドラフトで上位指名される選手は前シーズンの下位チームに指名されるため、ルーキーは『勝たなければいけない』という重圧とは距離を置いて、自分のことに集中できる。しかし、キングスを率いるマイク・ブラウンは「今のウチは勝つことを目的にしている。だからルーキーであっても彼のミスを許容するわけにはいかない。今の地位を守るには高いレベルでのプレーを続けてもらう必要があり、それはキーガンにとってはプレッシャーだろう」と、あえて厳しい立場に彼を置くが、「だからこそ、ルーキーでこの活躍をしている意味は大きい」と評価も忘れない。

レギュラーシーズン82試合のスケジュールを初めて経験するルーキーにとっては、シーズン折り返し地点のここからが正念場。それでもマレーは「大学では試合数は少ないけど練習時間がすごく長かった。NBAは練習が少なくて試合が多い。僕はこっちの方が好きだよ。身体の調子も良いし、今はすべて順調なんだ」と余裕を見せている。

キングスを16シーズンぶりのプレーオフに導く大仕事を、マレーがやってのけるのか。好調のキングスを語る上では、サボニスとフォックスだけでなく、スタッツでは目立たないルーキーの貢献を忘れてはならない。