比江島慎

佐々ヘッドコーチが語る堅守の鍵「孤立させることが大事でした」

宇都宮ブレックスは1月29日、ホームで広島ドラゴンフライズと対戦。ルーズボールへの執着心、最後まで身体を張ったタフなプレーを続ける堅守からリズムをつかむと、要所でエースの比江島慎が得点を挙げる宇都宮の必勝パターンに持ち込み81-73で勝利した。

ともに高確率でシュートを決め互角のスタートとなる中、第2クォーターに入ると宇都宮は広島のゾーンディフェンスに対し、インサイドにパスを入れようとしてカットされるミスが続くなどちぐはぐなオフェンスとなった。それでも、オフェンスリバウンドを取られても粘り強くディフェンスを続けて失点を防ぎ、積極的なアタックを続けたことで広島のファウルトラブルを誘発すると、さらにトランジションも機能して9点リードで前半を終える。

後半の出だし、宇都宮は辻直人に3ポイントシュート、寺嶋良に速攻を許した。相手のエースに仕事をさせたことで嫌な流れになりかけるが、ここで鵤誠司のスティールから速攻を決めて再び守備から主導権を取り戻す。さらに比江島を中心に日本人選手が積極的にアタックすることで、ビッグマンがオフェンスリバウンドからのセカントチャンスを決めるなど、ゴール下の争いで優位に立ち第3クォーター中盤にはリードを16点にまで拡大した。

ここから寺嶋にスティールからの速攻を2ポゼッション連続で決められて反撃を受けると、第4クォーターにはドウェイン・エバンスのドライブに苦戦し、残り3分には4点差にまで詰め寄られた。しかし、宇都宮は遠藤祐亮のスティールから比江島の得点に繋げ、アイザック・フォトゥがセカンドチャンスポイントを挙げるなど、勝負どころで自分たちの強みをしっかり出すことで広島の追い上げを振り切り、前日に敗れたリベンジを果たした。

宇都宮の佐々宜央ヘッドコーチは、リーグ屈指の破壊力を誇る広島を73失点に抑えた勝因の一つとなったディフェンスについて「相手のアシストが12だったことが物語るように孤立させることが大事でした」と、広島に個で攻めさせたことが大きかったと振り返る。

この試合、宇都宮は比江島が19得点4リバウンド3アシスト、フォトウが21得点11リバウンド、ジョシュ・スコットが17得点8リバウンド、鵤が7得点3アシスト4スティールと中心メンバーの活躍が目立ったが、ベンチメンバーの献身的なプレーも大きかった。特に笠井康平は4分35秒のプレータイムで1リバウンドのみとスタッツを見ると存在感は皆無だったが、今月から本格的なポイントガード挑戦中の荒谷裕秀にミスが出た後、見事なつなぎ役を果たした。佐々ヘッドコーチも彼の貢献度の高さを称えた。「荒谷をポイントガードとして出せるのは、あたふたした時に笠井が控えてくれるからです。彼は良い意味で余計なことはしない。もっとオフェンスでチャンスをうかがってほしいところもありますが、非常に短いプレータイムの中で大きな活躍をしてくれました」

比江島慎

「ステップバックシュートを打つパターンも入れていかないと展開が重くなっている」

そして、数字が物語るように本日のヒーローとして活躍したのが比江島だ。大事な出だしでの連続得点に加え、第4クォーターだけで9得点と、まさにエースの本領発揮となる勝負強さが光った。

「昨日の反省点を改善して僕たちのやりたいバスケットを自信を持ってやれたことで、ある程度、40分間を通して主導権を握ることができました。今後もこういう戦いをしていきたいと思います」

このように試合を総括する比江島は、自身のパフォーマンスをこう振り返る。「去年優勝した時は今日のようなパターンが多かったと思います。自分が得点面で助けるプレーができれば、今後も上位チームに勝てると思います。ただ、もっと決め切れたシュートはありますし、しっかりアタックしていきたいです」

本日、比江島は広島のスイッチディフェンスを苦にせず対応したが、中でも注目すべきは相手ビッグマンに対してステップバックからの3ポイントシュートを沈めたこと。これまであまり見ることのなかったムーブで得点を挙げ、指揮官も次のように評価する。「スイッチに対し、あのパターンで3ポイントシュートを決めるのは珍しいです。ただ、今はガードがステップバックで決めていかないといけない時代です。マコ(比江島)の進化が見られて楽しかった試合でした」

比江島本人は、ステップバックスリーを打ち始めた理由をこのように語る。「自分に対する守りで、ウイングに大きい外国籍がいるチームはスイッチを多用してくるところが多くなってきています。僕がドライブからのシュートやキックアウトでパスを出すだけでなく、外からステップバックシュートを打つパターンも入れていかないと展開が重くなっていると感じています」

そして現在の手応えについてこう続ける。「まだ、確率は低いと思いますが、このシュートを入れていかないと相手は守りやすくなります。それに代表にも繋がっていくと思うので意識してやりたいですし、足にすごく負担がかかるシュートなので、4クォーター終盤でも決め切れる脚力をつけたいです。試合で打っていくことが成長に繋がるので、今後もやっていきたいです」

比江島慎

「今日は逆に勝負どころでアタックできて昨日のリベンジができた」

また、今日の比江島は勝負どころでチームメートをうまく使い、自分のマークマンをアイザイア・マーフィーからサイズで優位に立てる辻直人に変えさせる巧さも目立った。そこには広島の得点源である辻のオフェンスを防ぐ意図もあったという。「マーフィー選手は腕も長くてフィジカルも強くアスレチックなので、どちらかというと辻さんの方で攻めていこうとしました。辻さんがオフェンスの核になるので、ディフェンスをしっかりさせてスタミナ面も削っていく狙いもあり、そこはしっかりできたと思います。昨日は辻さんに勝負どころでやられてしまいましたが、今日は逆に勝負どころでアタックできて昨日のリベンジができたと思います」

リーグ上位の広島を相手に同一カード連敗を阻止し、内容的にも優勝した昨シーズンを彷彿とさせる収穫の大きい勝利となった宇都宮だが、いまだにチャンピオンシップ圏外の崖っぷちだ。佐々ヘッドコーチは「可能性がゼロになるまで戦い続けると選手たちに言っています」と力強く語る。

大逆転でのチャンピオンシップ出場を果たすには、比江島の勝負強さで接戦を勝ち切っていくことが欠かせない。そのためにも比江島ステップからのドライブに加え、ステップバックスリーという新たな武器の完成度をいかに高めていけるかが、大きなポイントとなってくるはずだ。

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