文=古後登志夫 写真=育英高等学校

育英はウインターカップ出場22回目を誇る兵庫県の強豪だが、本大会となると全国の壁をなかなか打ち破ることができずにいる。チームを率いる沼波望監督は育英のOBで、現役時代はウインターカップに3年連続出場、ベスト16進出の経歴の持ち主。監督として4度目、2年連続の出場となる今大会では、育て上げた選手たちとともに『歴史を変える』というチャレンジに臨む。

盛岡南の斎藤資監督とは同期で刺激し合う仲

──沼波監督は育英の出身ですね。高校時代の実績を教えてください。

私の代は熊本インターハイでベスト8でした。ウインターカップはベスト16です。先輩方も強かったので、3年連続でウインターカップに出させてもらいました。全国でいろんな選手との対戦を経験できたことで、一生懸命に努力できた高校3年間だったと思います。それもあって、ウインターカップへの思い入れは強いです。私が中3の時には田臥勇太さんが活躍していて、そのイメージがすごく強いです。東京体育館に着いただけでワクワクしたものです。

──ウインターカップの時の一番の思い出は?

私たちの代は土浦日大に負けたんですが、1歳下の岡田優介君に40点くらい取れられました。悔しかったですけど、「ああ、こういうチームが勝つんやな」と思いましたね。私たちの時代に比べると、今はテレビ中継も入ってるし、メディアの露出がすごいので、やっぱり圧倒されます。それと同時に私が選手やったら、もっと楽しめたのになって、少しうらやましいです(笑)。

──育英を卒業して、指導者になって母校に戻られました。

育英を卒業して日体大に進み、大学卒業後すぐに母校に赴任しました。今年で10年目になります。育英は歴史のあるチームで、私は2010年と13年、そして去年と今年は2年連続でウインターカップに出場させてもらいます。

──盛岡南の斎藤資監督とは日体大で同期だとお聞きしました。

私たちは同級生だし、同部屋だった仲なので、お互いに刺激し合っています。インターハイの時も「先に決めたから、頼むぞ」と連絡があって、私も頑張ろうと思いました。普段は連絡なんか取らないんですけど、盛岡南が全国に出ればチェックしますし、勝てば「やった!」と思います。私たちは指導者としては若いと見られますが、その中で戦ってきた間柄なので。

──指導者としてはまだ若く、兵庫県の強豪チームの監督になられて苦労や挫折の経験もあったかと思います。

赴任した年に20何年ぶりかで県のベスト8で負けました。「自分には無理なんじゃないか」とも思いました。ただ、それは自分の指導力がなかったからです。そこからは自分の気持ちをぶつけて、真っすぐ正直にやってきたつもりです。それまで指導者はいい言葉を言わなきゃいけない、みたいな構えた部分があったのですが、気持ちでぶつかっていくようにしました。

OBの築いた礎に、スキルを加えて勝ってきたチーム

──育英の強みを教えてください。

堅守速攻のモーションオフェンスが育英の売りです。オフェンスの中の切り替えの速さであったりとか、その速い展開のバスケットの中のバリエーションですね。スキルについてはプロの外部コーチが定期的に来てくれています。ピック&ロールを細かいところまで、そのためのボールハンドリングやドリブルスキルも全部教えていただいています。

育英には、ディフェンスに対する気持ち、ルーズボールに行く気持ちなど、OBの方々が築き上げてきたベースがあります。そこに良い選手が集まって来て、スキルもついてきて勝ってきたチームです。そういう先輩たちの礎はチームの強みだと思います。

──その中で沼波監督が重視している点はどこでしょうか。

私はメンタルを重要視しています。「勝ちたい」という強い気持ちは、全国大会に出るようなチームでプレーする以上は当然あるべきですが、私が大事にしているのは、感情に左右されずプレーすること。何があってもやるべきことをやる、常にそういう心の状態を保つことです。

──ウインターカップの注目選手を挙げていただけますか。

キャプテンの藤本巧太です。ドリブルスキルや切っていく力が強いので。パスワークとか状況判断もできるので。そこは結構面白いかなと思います。あとは井上敬翔と濱田裕太郎。2人ともシューターですが、オールマイティに点が取れる選手です。この3人のコンビネーションは面白いと思います。

──ウインターカップを前に、プレッシャーはありますか?

実際問題、ウインターカップで私はまだ1回も勝ったことがありません。だからプレッシャーはあります。それでも、インターハイも同じでしたが、上を見るしかないので、チャレンジの気持ちで挑みます。選手にも緊張はありますが、自分たちの最高であるベスト8を上回ろう、努力して歴史を変えるぞ、と言っています。決して簡単ではありませんが、高い目標を目指してやっていきます。

──それでは最後に、ウインターカップの抱負をお願いします。

関西のノリもあるので、まずは楽しむこと。そして我々を支えてくださる多くの方々に少しでも恩返しができるように、チャレンジしている姿を見せて感動してもらいたいです。皆さんに「今年もええ年やったな」と思ってもらえるようチャレンジしていきたいです。