「誰しもそれぞれ困難を乗り越えた先に良い時がある」
23歳のボル・ボルは再評価のシーズンを迎えている。ナゲッツでは3シーズン、ニコラ・ヨキッチの影に隠れ、さらにはケガも重なって219cmの身長、234cmのウイングスパンと柔らかなボールタッチという才能を生かせなかったが、マジックに移籍した今シーズンは好不調の波はあるものの、それでもマジックの主力として11.9得点、6.9リバウンドと活躍している。
ビッグラインナップを武器とするマジックでは、複数のビッグマンが同時にコートに立つことができる。長身だが線の細い彼の代わりにウェンデル・カーターJr.やパオロ・バンケロがディフェンスやリバウンドで身体を張れる。自分の短所をいかに隠すかを考えて縮こまったプレーをしていたナゲッツ時代とは対照的に、今のボル・ボルは長所を発揮して存在感を出している。
そのボル・ボルにとって現地1月15日は初めて古巣のナゲッツと対戦する機会となった。第2クォーターに投入されたボルの最初のプレーは、伸びやかなドライブからのダンクシュート。続くポゼッションではディフェンスリバウンドを拾うと自らボールプッシュし、フランツ・バグナーの3ポイントシュートをアシストした。その1分後にはブロックショットに跳んだ後にすぐさま攻撃に転じ、コール・アンソニーとのピック&ロールからアリウープのレイアップを決めている。
自らの身体能力とスキルを上手く組み合わせて使うことを覚えたボル・ボルのプレーは、ナゲッツを驚かすものだった。シックスマンながら好調なスタートを切った彼は18分のプレーで17得点6リバウンドを記録。チームは最後の最後でヨキッチのクラッチスリーを浴びて116-119で敗れたものの、西カンファレンスのトップを走るナゲッツを相手に敵地での大健闘となった。
試合を終えると3シーズンをともに過ごしたヘッドコーチのマイケル・マローンがボルに歩み寄り、「良いシーズンになっているな!」と声を掛けた。ヨキッチもボル・ボルに歩み寄り、ハグを交わして健闘を称えている。
ボルは「ナゲッツはすでに完成されたチームで、僕がそこに入っていくのは簡単じゃなかった。新しい場所とチャンスを得て、僕はリスタートを切ったんだ。でもナゲッツのみんなと会うと、自分が去ったとは思えない」と、かつてのチームへの愛着を明かす。
「当時の僕はまだ若くて、もっと努力できたと思う。それでも、僕にとっては必要な過程だった。誰しもそれぞれ困難を乗り越えた先に良い時があると思うんだ。世間からはプレータイムを得られない選手と見られていたかもしれないけど、僕はヨキッチを見て多くを学んだ。それは今の僕に大きく生きている。ナゲッツでは結果を出せなかった。それも僕の旅の一部なんだ」
ちなみに、ヨキッチはボルについて「僕の上からまたダンクを決めたらぶっ飛ばす」と、いつものいたずらっぽい表情で語っている。弟分のボルの活躍を喜んでいるのは明らかだ。