フレッド・バンブリート

チームのカルチャーを変えられるメンタリティも魅力

ラプターズは昨シーズン途中から戦術を大きく変更し、機動力のあるビッグマンを並べるようになりました。きっかけとなったのはフレッド・バンブリートの欠場です。チームの要であるポイントガードの不在は、連携よりも個人の強みを打ち出す戦術への変更を促したわけですが、今シーズンは開幕前にさらにビッグマンを加えたことで、バンブリートの存在意義が薄まり、最近はトレードの噂話に名前が挙がっています。

アシスト数がリーグ26位、3ポイントシュート成功率がリーグ29位とラプターズは連携不足に苦しんでいる一方で、リーグ5位のオフェンスリバウンドと、リーグ最少のターンオーバー数を誇り、ドライブ中心の個人技と攻守のハードワークで戦っています。バンブリートはミスの少ないポイントガードとしての貢献は高いものの、フィールドゴール成功率の低さが弱点にもなっており、連携に乏しく個人で決めることを前提としたチーム戦術にフィットしているとは言えません。

バンブリートはドライブからのキックアウトパスのようなコートを広く使うプレーメークは苦手とするものの、スクリーナー役のセンターとのコンビプレーで起点を作ることや、ディフェンスとの駆け引きから逆を取ってシュートに行くのが上手く、大胆さよりも堅実なチョイスをしていくのが特徴です。しかし、今のラプターズはディフェンスに読まれてもねじ込む高さや強さが求められています。

逆に言えば、コンビプレーを生み出すスクリーナーや、相手の虚を突くような判断力に優れた相棒が足りないラプターズの現状が、バンブリートのプレースタイルに合っていません。

コンビプレーを中心に堅実なオフェンスを展開したいチームにとって、バンブリートは魅力のあるポイントガードです。ドラフト外からオールスターに這い上がったメンタリティ、粘り強いマンマークからスティールを生み出すディフェンス力、勝負強さを発揮して優勝に貢献した経験値は、プレーオフを目指しながら勝ち切れないチームにとって、非常に魅力的な補強ターゲットになります。

バンブリートはチームの主役にならなくてもリーダーシップを発揮できる選手であり、特にプレーオフを目指しながらも不安定な戦いぶりに陥っているチーム(キングス、ティンバーウルブズ、レイカーズ)や、スーパースター候補の若手を抱えるチーム(マジック、ロケッツ、ウィザーズ)にとって、その妥協を許さないメンタリティはチームのカルチャーを変える意味も含めて獲得する価値があります。

ラプターズにとってバンブリートは重要な中核選手であり、プレーオフを目指して戦う中で、簡単にトレードで手放すわけにはいきません。しかし中期的にみると、チームの主役として考えるには年齢的にも能力的にもやや微妙な立ち位置なだけに、トレードに踏み切る可能性はあります。

勝率が5割を下回っている現状で『プレーオフで勝てるチーム』に成長するとは考えにくく、また今後数年間をパスカル・シアカム、OG・アヌノビー、スコッティ・バーンズの3人を中心したチーム作りを進めるには、パサータイプのポイントガードの方が適している気もします。ラプターズがどのような判断を下すのかは読めないものの、トレードデッドラインに向けてチームの立て直しが進まず、バンブリートをトレード候補として売りに出せば、実力のある控えビッグマンも含めて、多くのチームを巻き込んだトレードに発展しそうです。