篠山竜青

文・写真=鈴木栄一

「ニックがいるからこそ出てしまう悪い状況を減らす」

いよいよ来週に迫ったワールドカップ・アジア予選のWindow5。今回の日本代表は八村塁、渡邊雄太が不在で、Bリーグ最強ビッグマンであるニック・ファジーカスがオフェンスの大黒柱となる。だからこそ、川崎ブレイブサンダースでファジーカスとは2012-13シーズンからずっと一緒にプレーしている篠山竜青のゲームコントロールがより大事なポイントとなってくる。

「ニックの得点力を生かすのは絶対に必要なこと、そこは逃していけないポイントです」と語る篠山であるが、それと同時にファジーカスを軸とするからこそ、チームが陥りがちになってしまう悪い兆候をいかに早く察知して修正できるかを重視している。

「ローポストでニックにボールを預けた時、周りの動きがなくなってパスを待つだけになってしまう時がある。そういう状態は川崎で何度も経験していますが、代表でも苦しい時間帯には同じような状況が起きると思います。そこはしっかりとコントロールし、声掛けをしたり、自分がスペースに飛び込んだりする。ニックがいるからこそ出てしまうかもしれない悪い状況を減らしていくことも自分の仕事だと思うので、そこは意識していかないといけないです」

Bリーグのシーズン中の代表活動は、昨年に続いてのことであるが、かつて篠山は「悪い内容で負けた後で、そのまま代表活動に行くのは精神的に厳しいこともありました」と語っていた。それを考えると1試合70点以上を取るのに苦労する得点力不足もあって4連敗を喫するなど苦しんだ10月と違って川崎が上り調子となっているこの時期に代表活動が始まったことは「10月のあの感じを脱して上向いている時に招集が始まって良かったです」と安堵している部分がある。

また、彼自身にとってもチームの負けが続いている時は、深刻なシューティングスランプが続いていた。しかし、今はその不調からも脱し、一時は外れていた先発にも前節から復帰と、「10月にうまく行かなかった分、今は調子が上がっています」と良い波にのった状態でワールドカップ予選に挑める。

篠山竜青

「チームの雰囲気はいろいろな面で前向き」

今回の予選では初対決となるカタールはヘッドコーチが変わったばかりで、未知数の要素が大きい。だからこそ、篠山が重要視しているのは、攻守ともにいかに基本の部分を徹底できるか。「特にオフェンスに関してはシュートで終わることを続けていく。チームで良いシュートで終わることができれば相手のファーストブレイクを減らす大きな要因となります。相手をハーフコートオフェンスを持って行くことで、自分たちのディフェンスができれば失点を抑えられる自信はあります」

ファジーカス、八村、渡邊と新戦力の台頭があった代表は現在4連勝中と右肩上がりであることは間違いない。ただ、ワールドカップ出場という目標達成には、「チームの雰囲気としては、4連敗した時よりもいろいろな面で前向きにやれています。ただ、勝敗のところでの状況は変わっていないので、そこの緊迫感は常にあると思います」と篠山が語るように、負けたら終わりの崖っぷちであることは同じだ。

そんな正念場にあって、攻撃の明確なファーストオプションであるファジーカスのことを誰よりも知る篠山がしっかりとゲームコントロールできるかどうか。Window5で連勝するための鍵となってくる。『日本一丸』のキーマンとして、日本の司令塔である篠山への期待は大きい。