『TS%』(トゥルー・シューティング・パーセンテージ)でリーグトップに
ネッツの渡邊雄太は11月に入ってからの8試合中6試合で2桁得点を記録し、好調な3ポイントシュートを武器に『TS%』(トゥルー・シューティング・パーセンテージ)でリーグトップに躍り出ました。このスタッツはフリースローまで含めたシュートの効率性を示しており、今や『世界で最も効率的なシューター』になっているのです。
もちろん、個人としてケビン・デュラントやステフィン・カリーに比肩するシュート能力と言えるわけではなく、渡邊の役割である『チームメートが作ってくれたオープンショットを確実に決める』ことで記録している効率性ではあります。それは言い換えると『チームメートがチャンスを多く作ってくれるようになった』ことでもあります。
ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュがチームを去り、11月からジャック・ボーンが指揮を執るようになってから、ネッツの戦い方の劇的な変化が渡邊に好影響を与え、そして結果を残すことで渡邊の役割も増えてきました。
10月のネッツは1試合平均273本のパスから24.7回のアシストを記録していましたが、11月になってからはパスが14本、アシストが3.6回も増えています。明確にパスが回るようになりましたが、デュラントへのパスは増えていないのが特徴で、欠場が続いていたカイリー・アービングも含めて、エースを経由しないボールムーブで得点する形ができました。
実質的なポイントガードはテンポ良くパスを散らしていくロイス・オニールが担い、デュラントを囮にしてシューター陣へとパスを供給し、チームの3ポイントシュート成功率は10月の33.3%から39.4%へと劇的に改善しており、渡邊だけでなくネッツ全体に良いリズムが生まれています。シュートが決まれば、さらにパスをしたくなるのも心理で、ネッツには好循環が生まれています。
ネッツのコーナーは完全に『渡邊のためのポジション』に
渡邊はここまで決めた24本の3ポイントシュートのうち16本をコーナーから決めています。最も確率の良いコーナーから多く打つことでTS%でトップに立ちましたが、10月は2本だったコーナーからの成功数が11月は14本まで増えており、ネッツがチームとして連続でパスを繋ぎ、コーナーの渡邊までボールが届くようになったことが関係しています。
加えてデュラントのポストアップに対して、逆サイドのコーナーからリングに飛び込むカットプレーが強力に機能しています。しっかりと3ポイントシュートを決め切ったことに加えて、デュラントとの相性の良さもあって、ネッツのコーナーは完全に『渡邊のためのポジション』になりました。
ディフェンス面でもネッツの戦い方は変わり、機動力のあるウイングを並べて、全員がスイッチやヘルプを行う形を好むようになり、時にはウイングプレイヤーを5人並べたラインナップも使っています。シーズン中のヘッドコーチ交代ではチーム戦術を改善させるのが難しく、オールラウンドに守れる選手を並べることで解決を目指した形ですが、スピードの専門家がいないため相手エースガードへの対応には困る一面もあります。
このエースキラー役に指名されたのが渡邊で、従来のインサイド担当から役割が変わりました。大学時代はガード担当のディフェンダーとして高い評価を受けていたものの、NBAのガード相手ではスピードやシュート力に対応するのに苦戦しており、ヘルプの早さや運動量を生かしたチームディフェンス役になっていましたが、さらに万能な使われ方をしています。
まだエースキラーとして機能したわけではありませんが、それだけネッツにとって重要な選手に位置づけられたことになり、渡邊の活躍とともにネッツの勝率も上がっています。キャンプ契約から始まった今シーズンですが、今ではネッツの浮沈を握るキーマンへと存在感を増してきました。