ジェレミー・グラント

ジャスティス・ウィンズロウがポイントガードの代役として大仕事

トレイルブレイザーズが敵地でサンズを破り、6勝2敗でサンズとともに西カンファレンス首位に立った。デイミアン・リラードに加えてアンファニー・サイモンズも欠場と、好調サンズ相手に勝てる見込みは薄いと見られたが、その予想を見事に覆した。

スタメンに据えられたジャスティス・ウィンズロウとドラフト1巡目7位指名のルーキー、シェイドン・シャープが高さとフィジカルを生かしたディフェンスで活躍。オフェンス力はあってもサイズのないリラードとサイモンズがディフェンスを得意とする選手に置き換わったことで、サンズのオフェンスを面食らわせた。こうしてロースコアの展開に持ち込んだブレイザーズは、9人ローテーションで出場したすべての選手が得点もアシストも記録した。

そんなチームバスケを主導したのはウィンズロウだ。NBAキャリア8年目だが、最初に所属したヒート時代を除けば先発の経験がほとんどない。どのポジションも守れるのが売りだが、ウイングとしてプレーした時期が長く、ヒート時代にポイントガードに挑戦した過去はあるものの、経験がモノを言うポジションで、しかもリラードの代わりを務めるのは荷が重い。それでも彼は開幕前から、スモールフォワードのポジションをジョシュ・ハートと争いつつも、ポイントガードとしてのプレーも準備してきた。しかも現役時代にピストンズやナゲッツでポイントガードとして活躍したチャウンシー・ビラップスが、付きっ切りで指導したという。

ビラップスはいつもと違う先発の5人を、「みんな一緒に楽しめ。ハードに戦おう」とコートに送り出した。ウィンズロウはその意思をコート上で表現し、チームを引っ張った。12得点9リバウンド9アシストとほぼトリプル・ダブルを達成したが、彼はスタッツよりも『チームを引っ張ったこと』に満足している。

試合は第4クォーターに入ってサンズが猛追し、最後の最後までもつれた。残り1分を切ってユフス・ヌルキッチが逆転の3ポイントシュートを決めれば、すぐにデビン・ブッカーが決め返して逆転する。追い詰められたブレイザーズは、残り2秒で最後のポゼッションを得る。ここでウィンズロウがボールを託したのはジェレミー・グラントだった。ディアンドレ・エイトンを越えたパスを受け取ったグラントは、体勢を崩しながらもジャンプシュートをねじ込む。体勢を立て直すステップがトラベリングではないか、クロックは残っていたかをレフェリーが映像で確認する間、静まり返るアリーナでブレイザーズの選手たちはグラントに飛び込んでいく。レビューの結果この得点が認められ、ブレイザーズの108-106での勝利が決まった。

ちなみにグラントは今シーズン3戦目のレイカーズ戦でも劇的な決勝シュートを決めており、この時もパスを出したのはウィンズロウだった。「僕はただ、チームが最高のプレーができるチャンスが一番大きい選択肢を選んでいるつもりだ。ジェレミーはすごいシュートを決めてくれたよ」とウィンズロウは振り返る。

リラードもサイモンズも欠きながら全員で最後まで戦い抜いた結果、劇的な形で勝利が転がり込んだ。ヘッドコーチのビラップスは言う。「私はこのチームを率いるようになって、競争してタフに戦う意欲、そしてチームメートと一緒に戦う『繋がりの文化』を築こうとしてきた。誰がコートに立っているかに関係なく、そんな戦い方ができれば勝つチャンスがあると考えてきた。今日その意思を見せてくれた選手たちを誇りに思う」

ウィンズロウは司令塔としての活躍を「ビラップスのおかげだ」と言う。「まず彼が僕を信じて起用してくれること。それが成功の一番の理由だと思う。性格もガードに向いていると思う。どうすればチームメートが良いプレーをできるのかを常に考えて、正しいプレーをすることを重視しているからね」

ブレイザーズの『繋がりの文化』をよく示していたのが、試合後にコート上でグラントが取材を受ける際、チームメート全員が彼を囲んで盛り上げたことだ。ウィンズロウは「僕たちは真のチームと言っていいと思う」と語る。「すごい盛り上がりだったね。毎試合のように出るメンバーが入れ替わるけど、僕らはお互いの成功を心から喜んでいる。僕らにとって素晴らしい勝利だった」