タイリース・マクシー

「残った僕らが競争しながらステップアップする」

優勝を狙えるだけの戦力を整えたはずのセブンティシクサーズが、攻守の核を欠いて連敗を喫している。ジョエル・エンビードが体調不良で3試合連続の欠場、ジェームズ・ハーデンが右足の腱を痛めて1カ月の戦線離脱となったシクサーズはニックスに104-106で敗れた。

攻守の核を欠きながら接戦に持ち込んだのは善戦とも言える。ハーデンに代わってオフェンスを引っ張ったのは3年目のタイリース・マクシーで、31得点7アシストを記録。ただし39分とプレータイムが長すぎたためか終盤に失速、勝負の第4クォーターではフィールドゴール7本を打って成功は1本のみの4得点に終わった。

「これまでよりもボールを持つ時間を増やして試合をコントロールしていく。ジェームズ加入前、昨シーズンにやっていた役割に戻るわけで、とにかくアグレッシブにプレーしたい」とマクシーは語っており、その言葉通りのプレーをしたのだが、勝利には一歩及ばなかった。

逆にニックスのプレーメークを担当するジェイレン・ブランソンの第4クォーターのプレーは、負けている展開でも落ち着いていた。第4クォーターは8得点2アシスト。3本放ったシュートのうち2本を決め、相手のディフェンスをよく見てファウルを誘い、フリースローで得点を重ねた。なおかつ調子の良い味方を生かすパスで、第4クォーターのチームのフィールドゴール成功率を55.6%(18本中10本成功 )の高確率へと導いた。一方のシクサーズはオールスイッチの守備を攻めあぐねて第4クォーターのフィールドゴール成功率は27.3%と低調で、試合を通じてニックスの方が多かったターンオーバーも、第4クォーターだけを見ればシクサーズが多く、終盤のゲームコントロールの拙さが接戦を落とす要因となった。

残り9秒でジョージ・ニアンの3ポイントシュートで1点差へと迫り、最後のチャンスで得点が決まっていれば逆転勝利というところまでは持っていったのだが、ディアンソニー・メルトンの3ポイントシュートはエアボールに終わった。

エンビードとハーデンがいれば、シクサーズの選手たちは彼らに勝敗の多くを委ね、サポートに回る。急に全く違うプレーを求められて上手くいかないのは無理もない。だが、ハーデンは1カ月は不在となるため、できる限り早く彼が不在でも戦えるスタイルを見いださなければならない。

プレーメークの面でも得点の面でも、ハーデンの役割はマクシーだけでなくメルトン、シェイク・ミルトン、フルカン・コルクマズといった選手でカバーすることになる。マクシーは「僕はハーデンじゃないし、シェイクもファーク(コルクマズ)もハーデンじゃない。彼の代わりは誰にもできないんだ。自分らしいプレーでチームの勝利に貢献することを考えるべきだ」と言う。

「ウチの選手層はまだ分厚い。もちろんジェームズのような選手がいなくなるのは痛いけど、残った僕らが競争しながらステップアップして、またいつも以上にお互いを信頼してプレーしなきゃいけない」

エンビードは新型コロナウイルスの検査では陰性だが発熱があり、どうやらダニュエル・ハウス・Jr.も同じ症状のようだ。次のサンズ戦まで中2日、その次のホークス戦まで中2日とスケジュールに比較的余裕があるのは不幸中の幸いだ。4勝6敗と負けが先行するシクサーズがどう立て直すかに注目したい。