徹底したディフェンスで名古屋Dの攻め手を封じる
昇格組の秋田ノーザンハピネッツは開幕から3勝10敗、勝ち星のうち2つは同じ昇格組のライジングゼファーフクオカから挙げたもので、7日のアルバルク東京戦では55-100と記録的大敗。B1において自分たちのバスケットボールが通用しないという厳しい現実に直面していた。そんな状況で迎えた今日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で、見違えるようなパフォーマンスを披露。79-63で価値ある勝利を挙げた。
苦しい状況でチームは原点回帰、ペップ・クラロス就任から1年かけて築いてきた『激しいディフェンス』と『全員バスケ』にフォーカスした。立ち上がりからボールハンドラーにプレッシャーをかけ、激しいディナイで簡単なパスを許さない。名古屋Dの攻撃の中心を担うジャスティン・バーレルへのマークは特に徹底しており、ゴールを向く瞬間にダブルチームを仕掛け続けた。これで名古屋Dに攻めを組み立てさせず、特にバーレルは前半でフリースローによる1得点、フィールドゴール試投数がゼロと抑え込んだ。
さらには『全員バスケ』も徹底。ハードワークを40分間継続するにはローテーションが欠かせないが、第1クォーター最後の1分は外国籍選手2人をベンチで休ませるオン・ザ・コート「0」を採用。この1分で満田丈太郎の速攻を中山拓哉がチェイスダウンブロックで阻止し、野本建吾がオフェンスリバウンドをもぎ取り、不利なラインナップにもかかわらずリードを広げた。
ただ、第2クォーター途中に白濱僚祐が足を痛めてベンチに下がると、ディフェンスの激しさが低下し、名古屋Dの3ポイントシュートが当たり始めたこともあって30-29とリードを詰められて前半を終える。ディフェンスは完璧な出来だったが、ターンオーバーは名古屋Dの9より多い11。名古屋Dのターンオーバーは秋田が激しい守備で誘ったものだが、秋田のターンオーバーは不用意なミスによるものが大半で、突き放すチャンスを逸していた。
勝負どころで『全員バスケ』が真価を発揮
後半が始まって2分半、名古屋Dの第3クォーター初めての得点はバーレルのターンアラウンドジャンプシュートだった。難しいシュートではあったが、バーレルが流れから初めて放ったシュートを決めたのを機にスコアが動き出す。安藤周人の3ポイントシュート、バーレルのダンク、安藤の速攻と連続得点を浴びて41-40とスコアが接近した後、カディーム・コールビー、中東泰斗、小野寺祥太と得点を取り合う展開に。
リードは保っていても、打ち合いは秋田のペースではなかった。それまで良いリズムでシュートを打てていなかった名古屋Dが勢い付き、中務敏宏の3ポイントシュートに続き、バーレルから走る安藤にタッチダウンパスが通って47-47と同点になって第3クォーターを終えた。
ここまで3つのクォーターの立ち上がりで秋田は特に集中したディフェンスを見せ、名古屋Dの出鼻をくじいていたが、最終クォーターは最初の得点を笹山貴哉に3ポイントシュートで奪われ、ついにビハインドを背負う。激しいディフェンスに名古屋Dがアジャストしつつあり、笹山とバーレルがそのオフェンス能力を発揮し始めていた。バーレルがダブルチームをかいくぐってキックアウト、これを受けた笹山が3ポイントシュート沈めて57-55と逆転したシーンはその象徴だ。激しいディフェンスだけでは勝ち切れない現実が秋田に圧し掛かりつつあった。
それでも『全員バスケ』でジャスティン・キーナンとコールビー、中山や白濱のプレータイムもコントロールしていた分、この勝負どころで秋田はもう一段ギアを上げて、名古屋Dの勢いに飲み込まれず踏み留まった。そして残り4分半、スティールに成功した小野寺からボールを託されたキーナンがゴール下にアタックし、これを止めに入ったバーレルをファウルアウトに追いやる。ギリギリで踏み止まっていた秋田が、これで一気に優位に立った。
自分たちのスタイルを取り戻す貴重な勝利
ようやく調子の出てきたエースが退場となったことで名古屋Dは意気消沈。攻守に激しさが消えた名古屋Dのディフェンスを、ここぞとばかりに中山が強引なアタックで打ち破る。止まらない中山が簡単ではないミドルジャンパーも沈めて69-58と点差を2桁に広げたところで、ドライブを仕掛けた小野寺の顔面を、ブロックに行ったブラッキンズが手ではたいてしまい、ビデオ判定でディスクォリファイングファウル(悪質なファウル)として退場となってしまう。バーレルに続きブラッキンズも退場となっては名古屋Dに逆転する術はなかった。
最終スコアは79-63。秋田にとっては自分たちのスタイルを再発見し、自信を取り戻すのに大きく役立つ勝利となった。前半途中に足を痛めながら30分以上出場、リーダーとしてチームを引っ張った白濱は「僕らも苦しかったので、素直にホッとしている。連敗が続いている中で、昨日選手たちでディフェンスからエナジーを出して頑張ろうと話し合った。それが今日に繋がったと思う」と、自分たちのスタイルを押し出すことでもぎ取った1勝を喜んだ。
時間は短いがオン「0」を採用したように、秋田はずっと競った展開の試合でも外国籍選手2名のプレータイムをコントロールした。攻め手が少ない中でのフィニッシャーをキーナンが、身体を張ったディフェンスをコールビーが担い、どちらに転ぶか分からない試合で主導権を握り続けた。また中山はキーナンに続く16得点、さらには7アシスト4スティールを記録。5ターンオーバーは余計だが、日本人エースとしての貫禄を備えつつある。
激しいディフェンスを40分間継続すれば上位チームが相手でも競った展開に持ち込むことができる。そこで我慢し続ければ勝機が見えてくる。秋田にとっては見失っていた自分たちのスタイルを取り戻す勝利となったが、明日勝てばさらなる自信が得られるはずだ。
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