[CLOSE UP]太田敦也(三遠ネオフェニックス)物理的にも精神的にも『三遠劇場』の支柱となる日本人ビッグマン

2016/11/29
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

『俺が俺が』ではなく『チームのために』を貫く選手

三遠ネオフェニックスは、ここまで19試合を終えて12勝7敗、中地区の2位につけている。

『堅守からのトランジション』と『アグレッシブなオフェンス』。シンプルな約束事ではあるが、この2つが徹底された時の三遠はリーグ随一の魅力的なバスケットを展開する。ガード陣は小柄だがスピードに優れ、コースがあると見れば迷わずミドルレンジからのシュートを狙い、高確率で決めていく。インサイドではロバート・ドジャーが多彩なシュートパターンで得点を重ね、さらにはジョシュ・チルドレスという『切り札』も加わった。

そんなチームの重鎮が、日本人ビッグマンの太田敦也だ。日本代表選手かつ『チームの顔』である太田だが、その役割は『汗かき役』。もともと『俺が俺が』のタイプではない。守備では身体を張ってペイントエリアを固め、攻撃ではポストプレーで攻撃に深みを出すとともに、スクリーンで味方のマークを引きはがす。

「自分の得点がゼロでも僕は全然気にしません。シューターが3ポイントシュートを打てていないほうがよほどダメで落ち込みますね」。平然とこう語るのが、太田というセンターなのだ。リバウンドでも同様で、自分が取れなくても相手に取らせなければいい、という割り切りができる。どんな状況でも『チームのために』プレーできる選手だ。

その太田は、開幕からここまでのチームのパフォーマンスに十分な手応えを感じている。「自分たちのバスケがちゃんとできている時の僕たちは強いです。良いシューターが多いので、良い流れになればどんどん入ります。ディフェンスも献身的にやれる選手ばかりです」

爆発力を秘める一方で安定感は「正直、まだまだかな」

『三遠劇場』が幕を開けたのはリーグ初戦、NBL王者の川崎ブレイブサンダース相手にホームで2連勝を飾った時だ。そのままチームは5連勝、川崎との敵地での再戦でも、1勝1敗ときっちりまとめた。ただ、川崎との連戦を含む開幕5連勝の後は2連戦での連勝がない。1勝1敗がずっと続き、通算成績は12勝7敗。つまりは川崎以外の相手に取りこぼしているのだ。そして川崎は、三遠との4試合を1勝3敗と負け越しているが、それ以外の15試合すべてに勝ち、首位を快走している。

ライバルである川崎について太田は、「やっぱり向こうはタレントが揃っています」と認めつつも、「でも、言うほど劣ってはいないのかな、とも思います。正直、相性も悪くない。だから相手どうこうよりも自分たちです」と言う。

ライバルより自分たち。いかにして三遠が安定したパフォーマンスを出せるようになるか──を太田は考える。「ムラがあるのは間違いないです。2連戦で勝ち切れないことが、この後にどう影響してくるか。川崎に勝てたことは大きいのですが、その他でちゃんと2連勝できるチームにならないと。そこは正直、まだまだかな」

そうは言っても、12勝7敗は悪くないスタートだ。旧bjのチームが軒並み苦戦する中、三遠だけがプレーオフ圏内をキープしている。旧bj勢で三遠だけが結果を残せている、その理由は何なのか。「ディフェンスですね」と太田は言う。少々答えづらい質問かと思ったが、間髪入れず答えられるところに自信のほどがうかがえる。

「僕らはオフェンスシューターに強みがありますけど、一番良いのは全員がディフェンスですごく我慢できるところです。流れが悪くても全員で我慢して、小さいチャンスをつかんで流れを変えていく。接戦で勝つことが多いのも、最後まで我慢して戦えるからです」

「僕たちにとっては自分たちのバスケをいかに貫くかがカギ」

三遠と言えば、鳴り物入りで加入したチルドレスについて聞かないわけにはいかない。日曜の横浜ビー・コルセアーズ戦では19得点を記録。そのパフォーマンスを太田は「トランジションで『チル』がどんどんレイアップを仕掛けて良い流れができたので、今後もああいう形でやりたい」と振り返る。

206cmのビッグマンである太田は、自分の役割をあらためて語る。「僕が相手のビッグマンに付くことができれば、そこがチームの強みになります。勝たなくても互角にやれれば、別のところでミスマッチを生かせるので」

連携構築はまだこれから。「まだまだですね。練習をちゃんとやって、チームワークやコミュニケーションを改善してからでないと。彼もまだ来たばかりでストレスを感じているかもしれないですけど、慣れてくればもっと変わってくるはずです」

太田もまた、チルドレスが早く環境に馴染めるよう手を貸している。「まだ遠慮があるので、どんどんやらせようと思っています。ミスしても『どんどん攻めろ』と励ますとか、なるべくカバーに入るとか。先に来ているドジャーもそうだし、オルー(アシャオル)なんて先々シーズンはウチにいて勝手が分かっているので、いろいろ伝えてくれています。コミュニケーションについてはウチは心配ないです。僕も話していますよ。大した英語は使えないので、他愛もないことですけど(笑)」

三遠を率いる藤田弘輝ヘッドコーチは「チルドレスが入ったことで、ウチのバスケットが変わることはない」と明言している。『堅守からのトランジション』と『アグレッシブなオフェンス』の質を高めながら、その力を安定して出せるようになるのがチームの命題だ。

太田は言う。「僕たちにとっては、自分たちのバスケをいかに貫くかがカギ。気持ちを入れて、一致団結してやるだけです」

『三遠劇場』の第2幕は始まったばかり。好不調の波、精神的なムラがまだ大きいチームを引き締めるのは、『精神的』にも『物理的』にもチームの支柱である太田に他ならない。