「落としたらいけない試合を落とした」
今シーズンのアルバルク東京は第1節、第2節ともに初戦で勝利するも第2戦を落としていたため、この嫌な流れを早い段階で断ち切りたいところだった。しかし、群馬クレインサンダーズとの第3節でも第1戦を86-76で勝利しながら、第2戦を82-84で落としてしまった。
特に群馬との第2戦では指揮官デイニアス・アドマイティスが「第4クォーターの残り2分は最悪だった」と振り返ったように、第2クォーターを22-9と圧倒して以降のほとんどの時間帯で2桁前後のリードを保っていたにもかかわらず、ラスト約2分間を3-13とされて逆転負けを喫した。
第2戦後、田中大貴は43-31で終えた前半について「今日も入りはあまり良くなかったですが、なんとか我慢して前半は良い形で終われました」と振り返り、39-53とされた後半をこう反省した。「前半は相手にやられてはいけないことを徹底できたと思いますが、後半は徐々に簡単にやられるようになってしまいました。ゲームクロージングのところは自分にも責任があると思いますし、落としたらいけない試合を落としたと思います」
田中は第2戦で3ポイントシュート7本中3本成功を含む13得点2アシストを挙げたが、ターンオーバーはチーム最多の5本を記録。特に最後の1本は80-79で迎えた残り42秒にマイケル・パーカーに逆転シュートを与える痛恨のターンオーバーとなってしまった。これまでのキャリア平均でもターンオーバーは1.3本と安定したプレーが魅力の田中らしからぬミスとなった。
ただ、A東京は2017-18シーズンから5シーズンに渡って指揮を執ったルカ・パヴィチェヴィッチが今オフに退団し、今シーズンは指揮官アドマイティスの下で新たなバスケットを始めたばかりであり、『らしからぬプレー』が出ても仕方がないととらえることもできる。それでも田中はそういった背景を否定し、「個人的にそこは責任を持ってやらないといけない部分だった」と正面から自分のミスと向き合った。
「最後のターンオーバーもですし、相手が最後にシュートミスしてオフェンスリバウンドを取られた時も、自分たちは3ポイントシュートを打たせたらダメだったのに、自分が行ってしまって外にキックアウトされるシーンもありました。そういうところはどういう状況であれ、冷静に対応しないといけないです」
勝敗を分けたのはラスト2分間のチームプレーの遂行力だったが、田中は「最後の締め方はもちろん問題があるんですけど、その前でやられたらいけない部分をしっかりと対応できていれば点差は縮まらなかったと思います」と、完全に群馬を突き放すことができなかったそれまでの38分間のプレーを反省した。
指揮官が求めるバスケットを「できている時間帯とそうでない時の差が激しい」
バスケットの世界では2分あれば10点差を覆すことは可能で、それだけ勢いが勝敗を左右するスポーツでもある。ただ、今までのA東京からすると、ラスト2分で追い上げられて逆転負けを喫するのは、やはり『らしくない』負け方だった。
田中は「5年間自分たちがやってきたことを一度壊して新しいシステムをやろうとしているので、今の段階でパーフェクトにやるのは難しいのかもしれない」と現状を明かしつつ、チームの課題を続けた。「ヘッドコーチが考えていることや求めていることを、できている時間帯とそうでない時の差が激しくて、強いチームはそういう部分で崩れないと思います。今まではたとえオフェンスで上手くいかなくても、自分たちはディフェンスで我慢して相手に点数を与えずに、今日みたいな試合を勝ってきました。今日は簡単に点数を取られすぎですし、ディフェンスはもうちょっと最低限のことをやって、ある程度崩れないようにしたいです。オフェンスは時間をかけて良くなっていくと思います。ただ、負けないチームはディフェンスが良いチームなので、やっぱりディフェンスの方が今はできていないのかなと思います」
A東京はここまで3勝3敗と負け越しているわけではなく、レギュラーシーズンは残り54試合もある。それでもキャリアが長い田中は、開幕から間もない現時点で『1試合の重要性』を意識している。「今のレギュラーション的に(まだ始まったばかりという)そういう考えでいると、あとあとその一つが響いてきて、ホームコートアドバンテージを取れなかったり、チャンピオンシップに出られなくなるというのを今までも自分たちは味わってきました。特に今回は同地区なのでなんとしても2つ勝って、群馬を自分たちよりも下に置いておかないといけない状況でした。それができなかったのは残念で、すごくもったいなかったです」
悔しい敗戦となったが過ぎ去ったことを悔やみ続けても仕方がない。田中自身も「ただ、これで終わりじゃない」と語る。「これからは、この経験を無駄にせずに良くしていかないといけません。次は宇都宮で試合があるので、そこに向けて切り替えてやるしかないです」
新体制となったA東京にとっては今が耐え時かもしれない。それでも試合を重ねることでケミストリーを構築し、A東京『らしさ』をきっと見せてくれるはずだ。
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