体重を増やして身体のケアも学び、彼自身も飛躍のシーズンへ
ティンバーウルブズはルディ・ゴベア獲得の代償として『チームの将来』であるドラフト指名権を大量に手放した。18シーズンで勝率5割を超えてプレーオフに進出したのは2回のみ。いずれもファーストラウンド敗退と、長きに渡り成功から遠ざかっているウルブズだが、今回の動きは『今、勝ちに行く』という強い意思表示に他ならない。
ディアンジェロ・ラッセルのプレーメークに、ゴベアとカール・アンソニー・タウンズのツインタワーの存在感は大きいが、このチームでエースを張るべきは3年目のアンソニー・エドワーズだ。2020年のNBAドラフト全体1位指名選手の彼はルーキーイヤーに19.3得点、2年目の昨シーズンに21.3得点と素晴らしい活躍を見せてきた。
得点数は微増だが、その動きは2年目に大きく洗練された。ドライブの最初の一歩目が大きく速く、激しい当たりにも臆さずリムまで到達するパワフルな動きは相変わらずだが、ピック&ロールのハンドラーのスキルを身に着け、1対1のディフェンスも上達させた。そして3年目を迎えるにあたり、プレシーズンゲームで新たにユーロステップでのシュートを披露するなど、プレーの幅を広げている。
これまでと違うのはウルブズの戦力が増し、彼が置かれる立場が変わること。今シーズンは『勝たなければならないチーム』でエースの働きができるかどうかが問われるが、彼はその準備を整えて開幕を迎えようとしている。
今オフを通して彼は身体強化に励み、体重を4.5kg増やしてチームに合流した。参考にしているのはジェームズ・ハーデンだそうで、「単に身体を大きくしたいわけじゃない。彼の腕みたいな筋肉のカットが欲しいんだ」と彼は言う。今は食事にもかなり気を遣うようになり、過去には試合が終わるとすぐにロッカールームで食べるほど大好物だったマクドナルドのチキンマックナゲットも「今は食べない。少なくともシーズン中はね」と我慢している。
エドワーズの個人トレーナーを務めるジャスティン・ホランドは『StarTribune』の取材にこうコメントしている。「この夏の彼はすべてを徹底的に見直した。限界に挑み、決して折れなかった。その結果、膝の痛みが消えたと言っているよ。これまでの彼はケアを十分にやっていなかった。18歳や19歳ならストレッチせずプレーすればいいが、NBAのシーズンを戦っていれば消耗していく。今は自分の身体を常に意識するようになった」
エドワーズは開幕に向けた調整に手応えを感じている。「膝の調子はすごく良い。大腿四頭筋やハムストリングを強化したことで、膝への負担が減っているんだ。他にも問題はないし、自分の身体に上手く向き合えていると思う。この夏はチーム全員が多くのトレーニングをこなし、高いレベルで競い合ってきたから楽しみなんだ」
期待が大きくなればプレッシャーも出てきそうだが、彼自身も新シーズンには期待しかしていないそうだ。「僕は単にバスケが大好きなんだ。勝てそうなチームでシーズンに臨むのにプレッシャーを感じる必要はないと思うんだよね。僕たちはみんな高額の報酬をもらっている世界最高の選手で、勝つためにお金をもらっている。勝つことに重圧を感じたりはしないよ」
充実した戦力を整えたが、これまで成功体験に乏しいティンバーウルブズが今シーズンどこまで行けば成功と見なされるのか、その定義は難しい。それでも46勝36敗で西カンファレンス7位という昨シーズンの成績から大きくステップアップしたいところ。そう考えると西カンファレンスの4位以上、プレーオフのファーストラウンドをミネソタに持ってきて、カンファレンスセミファイナルに進出することがノルマだろう。