ケガ人が出てもカバーしやすいロスター構成に
新ヘッドコーチのダービン・ハムが必要性を説いたとしても、途絶えることのなかったラッセル・ウェストブルックのトレードの噂話は噂話でしかなく、そのまま開幕を迎えることになりました。契約が残り1年のウェストブルックについては、サラリーダンプしたいチームを中心に具体的な提案もあったはずですが、サラリー額が大きいため早期に決めてしまわなければ、キャップスペースの問題で成立が難しくなることは明らかだったのですが、レイカーズ側が良い条件を求めすぎた気がします。
それはウェストブルックに対する期待の表れでもあります。無条件で放出するほど邪魔なわけでも、ロールプレーヤーと交換するほど主力としての期待値が低いわけでもないと考えられており、明確にチーム力がアップする相手でなければトレードには動かない様子です。その一方で、どのような役割分担でウェストブルックを機能させるのかも見えてきていません。
昨シーズンのレイカーズで最大の問題はウェストブルックではなく、アンソニー・デイビスの欠場にありました。レブロン・ジェームズも含めて3人が揃う事は少なく、復帰と離脱が繰り返されたため、戦術が固まることもなく、戦い方も右往左往してしまいました。デイビスだけでなく、ベテランが多いロスターは常にケガ人を抱えており、結果的にレブロンとウェストブルックは『ポジションを問わない便利なオールラウンダー』として起用されてしまった面もあり、役割そのものが不明瞭なまま終わってしまいました。
迎えた今オフはビッグ3以外で残留した主力はオースティン・リバースくらいとなり、ロールプレーヤーを大きく入れ替えたため、ゼロベースでの作り直しに近い状況になっています。トロイ・ブラウンJr.、ロニー・ウォーカー4世、トスカーノ・アンダーソン、ダミアン・ジョーンズ、トーマス・ブライアント、そしてパトリック・ベバリーを獲得し、若手から中堅、ベテランと年代もポジションもバランス良く揃えてきました。ケガ人が出てもカバーしやすい構成になったため、昨シーズンのように苦しむことはなさそうです。
また機動力を持った選手が多く、攻守にエネルギーを持って動き回ることでチーム全体の活性化も期待できます。昨シーズンはスモールラインナップで動き回っても、選手層が薄いために息切れすることがありましたが、試合終盤までインテンシティを保って戦うことができれば、最後はレブロンとウェストブルックの勝負強さで勝ち切れるはずです。
大きく選手を入れ替え戦術そのものを作り直すため、シーズン序盤は苦戦しそうですが、継続して自分たちの戦い方を徹底していけば、勝率は自然と上がってくるでしょう。しかし、その継続ができず、様々な横槍が入るのもレイカーズの特徴です。実際、開幕前にデニス・シュルーダーを獲得しましたが、シュルーダーの能力に疑いはなくても、ガードが充足している中で急いで動く必要はなく、シーズンが始まってから足りない要素を補っていく手段もあったはずです。
インパクト絶大のビッグ3がいてもケガで試合に出られなければ、ケミストリーは生まれてこず、しかも離脱期間に異なる戦い方を強いられては混乱も生まれてしまいます。レイカーズに必要なのは試合に出続けるコンディショニングと、ケミストリーを高めていく継続性です。ヘッドコーチのハムには様々な困難が待ち受けている新シーズンとなりますが、外部の声に惑わされることなく、自らのプランを着実に形にしていって欲しいところです。