スティーブ・カー

「彼は信頼を裏切ったが、これまでのことを考慮して決めた」

ウォリアーズは、練習中にジョーダン・プールを殴打したドレイモンド・グリーンへの処分を決定した。トレイルブレイザーズとのプレシーズンゲームを終えた会見で、指揮官スティーブ・カーは、グリーンに罰金を科したことを明かすとともに、出場停止処分はなく、最後のプレシーズンゲームであるナゲッツ戦、そしてレイカーズとの開幕戦でグリーンがプレーする予定だと語った。

「彼は信頼を裏切ったが、これまでのことを考慮して決めた。チームも同じ考えだと思う」とカーは言う。

「我々はこの件について徹底的に話し合った。ジョーダンやドレイモンドを含む多くの人たちとたくさんの議論をした。1対1の話し合いもあったし、選手だけのミーティングもあった。すべてを見極めた上で、これが前に進むための最良の方法だと考えている。この状況ではどんな決断を下すにしても簡単ではないし、完璧とはいかない。私がここで指揮を執るようになって、最大の危機だ」

もっとも、メディアの受け止め方は必ずしも好意的ではない。事件が明るみになった当初、クラブ側は問題を内々で済ませようとしたが、問題の映像がリークされたことでグリーンが謝罪会見を開き、しばらくチームを離れることになった。これまでも度々問題を起こしてきたグリーンをカーやクラブが『甘やかしている』と見るメディアは、今回もウォリアーズが公正な処分をしていないと感じている。

ある記者は、当時チームメートだったケビン・デュラントを罵ったグリーンに、『チームに有害な行為』として1試合の出場停止処分を科した2018年の事件と今回の処分がどう違うのかを質問した。カーは「あの時とは状況が何もかも異なる」と言う。

しかし、メディアは納得していない。相手がスタープレーヤーのデュラントであれば手を出さずとも言葉だけで出場停止を科すのに、相手が若い選手であれば罰金のみ。カーは罰金の金額を明かさなかったが、今シーズン2580万ドル(約36億円)の年俸を得ているグリーンにとって痛手ではないだろう。

そして先日のレイカーズとのプレシーズンゲームにプールが出場したにもかかわらず、クラブ側はメディア対応を受けさせなかった。プールが会見を行えば騒ぎがまた大きくなる。そこから逃げたと受け止められても仕方がない。

それでも、カーはチームの責任者として毅然たる態度で「裏で会話をし、表ではこのような質問に答えながら、すべてをコントロールしていくのが私の仕事だ。我々はこの問題を乗り越えてみせる」と言い切った。

センセーショナルなバスケでNBAを支配し、2015年からの4年間で3回優勝して『王朝』を築いたウォリアーズは、わずかばかりの停滞期を経て昨シーズンにまたNBA優勝を勝ち取り、少々油断があったのかもしれない。だが、この事件は良くも悪くも彼らの目を覚まさせることになりそうだ。

もっとも、これで一件落着というわけではない。被害者であるプールにわだかまりが残るようであれば、この処分はただグリーンを甘やかしただけになる。開幕戦では行われる優勝リングの贈呈式で、全員が心からの笑顔でリングを受け取ること。それがカーに求められる『事態の収拾』となる。