リーグ制覇に向け的確な補強も、コート外で暗雲立ち込める
サンズはモンティ・ウィリアムスがヘッドコーチに就任してから劇的に変わりました。それまで爆発力はあっても安定感を欠き、集中力を失うこともあれば、チームプレーよりも個人プレーを優先するなど、まとまりのないチームでした。しかし、各自が役割をこなす事を重視して連動していくプレーが増え、どんな状況でも最後まで高い集中力で戦う集団へと生まれ変わったことで、昨シーズンは64勝18敗でリーグ最高勝率に輝いたのです。これほどの高勝率ながらサンズからMVPが選出されなかったのは、それだけ個人ではなくチームとしての強さが際立っていたからと言えます。
ヘッドコーチの人心掌握術こそがサンズを優勝が狙えるチームへと引き上げた最大の要因でしたが、プレーオフになると突如として崩れ始めました。苦しい戦いになると主力のプレータイムが増え、ベンチメンバーへの信頼が目に見えて薄れていくと、最終的にはディアンドレ・エイトンもベンチに下げられるようになり、両者の間には溝が生まれたと言われています。そして迎えたオフは高額サラリーを払いたくないサンズと、地味な役回りながらチームのために多くの仕事を献身的にこなしてきたエイトンの間で契約がまとまらず、最終的にはペイサーズがオファーした4年1億3300万ドルにサンズがマッチする形で決着しましたが、エイトンとモンティの関係性が解消されたのかは不明です。
さらにトレーニングキャンプ直前になって、ジェイ・クラウダーがチームへの合流を拒否する事態が発生しました。また、オーナーの人種差別行為に対する処置でクリス・ポールが不満を公言するなど、数年前までのサンズでは珍しくない光景ではありますが、理解しがたいほどにプレーとは関係ない部分で次々と問題が発生しています。
コート上の話をすれば、ポールとエイトンのツーメンゲームは止めるのが難しい必殺プレーで、エースのデビン・ブッカーは様々なプレーパターンで得点を奪い、ミカル・ブリッジスとキャメロン・ジョンソンがオフボールの動きで崩していくオフェンスは対策するのが難しく、ベンチからはキャメロン・ペインがスピードを生かした強気なプレーで変化をつけてくれます。
今オフの補強ではディフェンダーのジョシュ・オコーギーやティモテイ・ルワウ・キャバロをウイングに加え、インサイドでパスを散らせるジョック・ランデールを控えセンターに置くなど、新たなオプションも加えており、昨シーズン同様に全員が労力を惜しむことなく、献身的にそれぞれの役割を果たせば、好成績を残すでしょう。しかし、もしもヘッドコーチが求心力を失っているのであれば、描いたようなプレーが実行されず、これまでのような勝負強さは発揮できない可能性もあります。
幸いにもチームの内情が外に漏れることはなく、チームとして統制のとれた行動はできています。クラウダーのトレードをまとめ、チームのためにハードワークしてくれる選手を連れてきて、戦う集団に戻せれば自然と成績もついてくるはずです。混乱のオフを経て再びチームが強固にまとまり、優勝争いへと加わるのか、最高勝率チームの動向はリーグ全体にも波及してくるだけに、どのような状態で開幕を迎えるのか注目されます。