レブロン・ジェームズ

レイカーズとの契約延長が既定路線だが、求められるのは『勝てるチーム』であること

レブロン・ジェームズは現地8月4日にレイカーズと2年9710万ドル(約130億円)の契約延長を結ぶ資格を得る。今年38歳になる彼が結べる契約は長くても2年。仕組み上は4700万ドルでの1年契約を結ぶことも可能だが、当然ながら2年契約、2年目はプレーヤーオプションという、レブロンにとって最も有利な内容になるだろう。

多くのメディアがレブロンの去就を予想しているが、そのほとんどがレイカーズ残留で、キャバリアーズ行きの可能性を否定している。彼の家族もビジネスもロサンゼルスに根を下ろしている、というのがその理由だ。キャブズは若手中心で上位を狙えるチームになっているが、レブロンを獲得するにはヤングコアの一部を解体しなければならない。レブロン自身にも2014年には「クリーブランドに初のタイトルを」という意欲があったが、そのミッションはウォリアーズとのファイナルに競り勝つ完璧な形でクリアしている。何が何でもキャブズに、という意志はなさそうだ。

それでも『Sports Illustrated』は「レブロンは今週、契約延長にサインはしない」との論陣を張る。8月4日はあくまで契約延長を結ぶ資格を得る日であり、この資格は来年の6月30日まで有効であって、レブロンは焦ることなく様子を見るだろう、とのことだ。

レブロンが今後のキャリアについて唯一約束しているのは、「最後は息子と一緒にプレーする」ということだけ。長男のブロニーがNBAドラフトに参加できるのは最速でも2024年で、今回の契約に際して決定打にはならない。では、今の時点でレブロンが最も重視するのは何だろうか? 当たり前すぎて口にしないだけで、試合に勝ち、NBAのタイトルを勝ち取ることだ。

ヒートで連覇、キャブズで、レイカーズでと4回のNBA優勝を勝ち取っているレブロンだが、「もう十分だ」とは全く考えていない。今も自分の実力への自信は全く衰えず、勝つことをモチベーションにハードワークしている。大ベテランの年齢になったが、それでも勝ち負けへのこだわりを失い、過去の栄光にすがって緩慢なプレーをする彼の姿は想像できない。

チームへの向き合い方も同様だ。彼はヒート在籍時から、自分の契約交渉を材料にして『勝てるチーム』であることをフロントに要求してきた。NBA優勝を勝ち取った2020年には何の問題もなくレイカーズとの契約延長に応じたが、その翌シーズンはケガでキャリア最少の45試合にしか出場できず、プレーオフ1回戦でサンズ相手に敗退。この1シーズンだけであれば『不運』で済ませられたかもしれないが、続く昨シーズンにさらに状況が悪化し、プレーイン・トーナメントの10位すらも逃した。

レイカーズ1年目の2018-19シーズンもプレーオフ進出を逃しているが、上昇傾向にあった4年前と今のレイカーズは違う。指名権もサラリーキャップの空きもない八方塞がりだ。今オフのレイカーズが、チームを上向かせるために必要な手を打てているとは言い難い。レブロンがこの状況を甘んじて受け入れ、貴重なキャリア終盤の数年間を捧げるとは思えない。

ラッセル・ウェストブルックの獲得は失敗だったと言わざるを得ないが、彼の市場価値を毀損したのが他ならぬレイカーズだけに、表立った損をしない形でトレードするのは難しい。ウェストブルックばかりが戦犯扱いされるが、レブロンとともにレイカーズを背負うアンソニー・デイビスは直近の2シーズンで76試合にしか出場していない。

レブロンの脇を固めるサポートキャストも同様で、もしレブロンの契約延長のタイミングが1年前であれば、レイカーズはアレックス・カルーソを手放せなかったはずだ。レブロンとの相性が抜群のディフェンスの名手を、レイカーズは3年3000万ドルと言われる要求額を出し渋った。カルーソが主役でなくともチームに不可欠な存在だったことは、昨シーズンのレイカーズの低迷ぶりが証明している。

こういったレイカーズの怠慢を、レブロンは許さない。テーブルの上に置かれた新契約の書類を片手で押さえたまま、フロントと経営陣がどれだけの熱意で優勝を目指すか、そのために正しく働くかに目線を向けるだろう。レブロンを擁するチームは単に高額年俸を支払うだけでなく、そのプレッシャーを覚悟しなければならない。レイカーズの肝が試される、そんな期間が幕を開ける。